老後2000万円問題、資産運用を考えるきっかけに
金融庁が2019年6月に示した「老後2000万円問題」は広く浸透している。本調査でも、ほとんどの人(97%)が認知しており、“内容までよく理解している”とする人も60%を占める。実際の資産運用の意識や行動にも影響しており、“内容までよく理解している“顧客は投資額を“増やす”割合が高く、企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)、つみたてNISAといった積立型の資産運用制度の利用意向が高くなっている。
新型コロナウイルスによる市況の変動、老後2000万円問題に端を発した将来不安などを背景に、ライフプランに基づいた資産運用の相談意向が高まっている。特に信託銀行では28%、対面証券では25%で、前年からそれぞれ10ポイント前後増加している。このような顧客の相談ニーズを捉え、的確な情報提供・アドバイスをしていくことと、急速に進むデジタル化に対応していくことが、ウィズ・コロナ時代の顧客満足度向上の重要なポイントと言えるだろう。
日本の資産運用ビジネスは大きなチャレンジとともに、チャンスの中にある。新型コロナウイルス感染拡大を受けた株価の大幅な下落により保有資産価値が大きく減少する顧客もみられる。一方、これまで資産形成が出来ていなかった顧客層にとっては、老後2000万円問題を契機に、ライフプランに基づく長期的な資産形成について考え始めていた中、新型コロナウイルス感染拡大を受けた株価の大幅な下落が資産運用を始める大きなきっかけとなっている。こうしたマーケットが二極化する中で、ウィズ・コロナ時代に顧客満足度と収益強化を両立させるためには、日本より一歩進んだ米国でのベストプラクティスを踏まえ、独自のデジタル・チャネル戦略をいかにうまく構築・実践していけるかがカギとなる
(J.D.パワーグローバル・ビジネス・インテリジェンス部門 常務執行役員 梅澤希一)