介護施設も「老老介護が当たり前」過酷すぎる現状
前述のアンケート調査では介護事業が人手不足に陥っている理由として「採用が困難である」ことが、そしてさらにその理由として「他産業に比べて、労働条件等が良くない」ことが挙げられていました。この労働条件が良くないとは、つまり、介護職が世間から3K仕事(きつい・汚い・危険な仕事)とみなされていることを意味しています。
また、そのように大変な仕事でありながら「給料が安い」というイメージがあることも、介護の仕事になかなか人が集まらない状況を生み出しています。なお、給料に関しては、[図表4]のグラフに示されているように、介護労働者の所定内賃金は近年、増加傾向にあります。また、国もその改善策を模索しているところであり、最近も、介護福祉士の資格を持つリーダー級の職員を対象に月額平均8万円相当の処遇改善を実施する策などを打ち出しました。
◆職員の6割が勤続3年未満で退職してしまう
人材難の問題に関しては、採用が困難であることに加えて、職員の離職率が高いことも関わっています。前述の「平成30年度介護労働実態調査」では離職率に関するアンケートも行われています。それによれば、訪問介護員、介護職員の1年間の離職率は15.4%に達していました。
また、入所から1年未満の職員の離職率は38.0%、1年以上3年未満の離職率は26.2%となっています。つまり、職員の実に約6割が勤続3年未満で退職しているわけです[図表5]。
このように介護の世界では、勤め始めても短期間でやめてしまう人が非常に多くいます。とりわけ、若い人にそうした傾向が強くみられます。介護の仕事では、職場における人間関係の構築が他の業種以上に求められますが、今の若者にはそうした努力を嫌う人が少なくないのです。
◆介護施設でも老老介護が当たり前
このように十分な人手を確保できない状況のなかで、多くの介護施設では高齢者が〝貴重な戦力〞として活躍しています。
「平成30年度介護労働実態調査」によれば、65歳以上の介護労働者の割合は全体の1割を超えており、さらに60歳以上では全体の2割を超えています。また、年齢割合でみると、40歳以上45歳未満、45歳以上50歳未満に次いで、65歳以上が3番目に多くなっています[図表6]。
実際、私の会社で運営している介護施設でも高齢の職員たちが元気に働いており、なかには70代の人もいます。60代などはまだまだ現役といった感じであり、夜勤の仕事も普通にこなしています。
今、家庭内で要介護者と介護者の双方が高齢者である現状がマスコミ等で社会問題として取りざたされていますが、介護施設でもそうした〝老老介護〞がもはや当たり前となっているのです。