「手堅いビジネスだろ?」生半可な業者の破綻が相次ぐ
◆止まらない介護事業者の経営破綻
超高齢社会の日本で介護事業は手堅いビジネス。十中八九、利益を得られるはずだ――。そうした楽観的な展望を抱き、現在、介護ビジネスに新規参入することを検討している人は少なくありません。
しかし、介護事業は決して、誰もが確実に利益を上げられるビジネスではありません。それを証明するかのように、介護保険制度がスタートした2000年以降、毎年のように倒産する事業者がいます。
さらに、ここ数年、経営破綻する介護事業者の数は増加傾向にあります。大手信用調査会社の東京商工リサーチによれば、「老人福祉・介護事業」の倒産件数は2016年から4年連続で100件台に達しており、2019年は過去最多だった2017年の111件に並んでいます[図表1]。
負債総額は161億6800万円と急増しており、前年ゼロだった負債10億円以上の大型倒産も3件発生しています。一方、負債1億円未満は91件であり、全体の8割を占めています。一体なぜ、近年、このように破綻する介護事業者が数を増やしているのでしょうか。
◆介護施設が増え続けるなかで業者間の競争は激化している
まず第一に挙げられるのは、過当競争、すなわち介護業者間の〝競争の激化〞です。[図表2]に挙げたのは、「高齢者向け住まい・施設の件数」の推移をまとめたグラフです。そこに示されているように認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム、介護老人福祉施設(特養)、サービス付き高齢者向け住宅などの介護施設は、これまで右肩上がりで増え続けてきました。
ことに参入しやすい有料老人ホームは手がける事業者が急増しており、平成25年から30年の間に5000件近くも増えているのです。
このように介護施設の数が増大するなかで、「介護施設はすでに充足している」という声もあります。例えば、介護業界紙の「シルバー新報」(環境新聞社)は、2018年8月に「民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を含む広い意味での『介護施設』は充足していると思いますか。まだ不足していると思いますか」という設問のもとでアンケート調査を実施しています。施設関係者や、ケアマネジャーを対象としたこの調査では、以下のような回答結果が得られています。
① 充足している・・・47%
② まだ不足・・・4%
③ 安い費用で入れる施設が不足・・・41%
④ サービスの質の心配がない施設が不足・・・25%
⑤ 早めの住み替えのできる住まいが不足・・・3%
⑥ その他6%
(複数回答)
このように「充足している」と回答した人の数は4割に達しており、最多を占めているのです。一方、「まだ不足」と答えている人の割合は4%に過ぎません。