お寺の後継者不足が深刻だ。既に住職不在の「空き寺」は1万〜2万に上るとされる。宗教法人としての税制優遇はあるが、それ以外は自由競争に晒されている厳しいサービス業なのだ。しかし、じつは「ビジネス」という側面から捉えると、お寺の持つポテンシャルはかなり高いことが見えてくる。本記事では、スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とする株式会社つながりバンク代表取締役斎藤由紀夫氏が、後継者不足のお寺を救う可能性について考察する。

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税制優遇以外は「自由競争に晒されているサービス業」

お寺は深刻な後継者問題を抱えながらも、外部承継が進まずに廃業が増加している典型的な業界です。しかし、お寺の隠れた資産価値に目を向けると、買い手にとって魅力的なM&A対象事業であることが分かります。

 

筆者のところにも、数年前からお寺や神社の売却相談が増えてきました。当初は驚きましたが、税制優遇以外は、自由競争に晒されているサービス業なので、当然の流れかもしれません。とはいえ、お寺には素晴らしいポテンシャルがあります。その活用法について具体的な事例をあげてみたいと思います。

宿坊、寺子屋、断食道場…豊富にある「お寺ビジネス」

「宿坊」というサービスをご存じでしょうか。元々は参拝者や修行僧向けの宿泊制度でしたが、現在では一般の方々も利用が可能です。和歌山県の高野山には、100を超える寺院がありますが、約半数は宿泊可能な観光寺です。首都圏でも青梅の御岳山に20を超える宿坊が軒を連ねます。非日常的な体験オプションもあり、外国人観光客に人気が高いのも納得がいきます。

 

宿坊を新たに開設する場合には、「旅館営業」または「簡易宿所営業」の許可が必要です。Airbnbを代表とする民泊は、宿泊数や広さ等で規制を受けますが、宿坊に関しては行政の対応も比較的緩やかなようです。旅館業法は昭和に施行されましたが、宿坊は平安時代から続く制度です。お寺側からすれば、きちんと安全基準を満たしていれば、文句を言われる筋合いはないというのが本音かもしれません。

 

江戸時代に普及した「寺小屋」は、読み書き算術の普及面で大きな役割を担いました。お寺は教育の場としても活用されていたのです。現在でも、習字教室、そろばん塾、保育園、教育系フランチャイズ教室などで利用されているケースも見受けられます。静粛で厳かな雰囲気の中での学習効果は高いに違いありません。

 

「断食道場」というサービスも近年人気が高まっています。参加者は、経営者や第一線で働く若い女性が多く、リピーターが多いのも特徴です。断食道場は食事を出さず、過剰サービスも不要ですので、高利益率ビジネスと考えられます。

 

スティーブ・ジョブスは生前、お忍びで家族と共に、京都の西芳寺(苔寺)をよく訪れていたそうです。寺院でメディテーション、つまり「瞑想」をしながら、事業戦略を練っていたのかもしれません。なぜか、世界で活躍するビジネス界のリーダーは瞑想好きです。その他にも「ヨガ教室」、お見合いの場としての「寺コン」、そして「お祭り」「フリーマーケット」「週末市場」など、地域住民のための憩いの場として活用されることも増えてきています。

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