「遺言書」に記すことで相続分を保証
「家族には黙っていたのだけれど、実は自分には愛人がいる」あるいは、「愛人との間に子どもがいる」そんな方もいらっしゃるかもしれません。
子どもの立場からすると、相続の段階で、突然、愛人や愛人との間の子どもが出てきたら、大混乱するはずですよね。
自分の家族に愛人が「私にも、あなたのお父さん(お母さん)の財産を相続する権利がある」と迫る姿を、天国から眺める自分を想像してみてください。――絶対に避けたいですよね。
実は、みなさんに愛人がいたとしても、愛人の場合は、みなさんと婚姻関係がないため、法律上は相続人にはなれません。ですから、いくら権利を主張しても相続はできないことになります。
でも、それは法律上の話。ここはきちんと配慮したいところです。もしも愛人に財産を遺したいなら、やはり遺言書に書いておくというのが1つの手になりますが、愛人の名前を遺言に出すというのはあまり…という気持ちもわかります。
そうであるなら、事前に贈与などをして、少なくとも財産については自分が生きている間に清算をしておくことをおすすめします。
「保険金の受取人」など、相続に関係しない形で遺す
また、相続とは関係のない形でお金を残すという意味では、生命保険の受取人にするというのも1つの方法です。愛人でも生命保険の受取人になることはできます。
生命保険金を受け取る権利は法律上、受取人がもつ固有の権利として、相続財産には含まれませんから、法定相続人でない愛人でも、生命保険の受取人にさえしておけば、受け取ることができるわけです。
愛人との間に子どもがいる場合は、認知をしていなければ、立場は愛人と同じです。法律上は、財産を相続する権利はないので、生活に困らないようにといった配慮のうえで財産を遺したいなら、事前の準備が必要です。
一方、認知をしている場合は、親子関係が認められるため、法律上、相続人になることになります。この場合には、夫婦間に生まれた子どもと同様の法定相続分が認められ、財産を相続する権利をもつことになります。
こうしたケースでは、それぞれの子どもに事前によく話をして対策をしておかないと、自分の家族と愛人や、愛人との子どもが相続争いをするという、ドラマに出てきそうな修羅場になりかねません。
みなさんが愛人との関係を清算するかどうかはさておき、少なくとも自分の遺産については、残された家族が自分の愛人関係のためにもめることのないように準備しておきましょう。
自分の秘密を貫き通したいなら、自分がいなくなったあとのことも考えて、清算方法を考えておきましょう。
五十嵐 明彦
税理士法人・社会保険労務士法人 タックス・アイズ 代表