義父の介護で忙しい毎日…突然、夫が倒れたと連絡が!
きょうだい達と、そんなやり取りがあったあと、今まで以上に頻繁に義父の家に通うようになったA子さん。ときには泊まり込むこともあったとか。しかし義父の問題行動は多くなっていき、近所の人や警察に世話になることもあったそうです。疲労困憊となったA子さんは、どうにかならないか、きょうだい達に相談しましたが、衝撃的なことを言われてしまいます。
C子さん「私も義娘として、こちらの家はこちらの家で大変な思い、しているのよ」
D子さん「長男のお嫁さんなんだもの。結婚したときに覚悟していたでしょ」
Bさん「そうだ。東京の家は貸して、あっちに(義父の家)に住んだらどうだ。そしたら通う必要がなくなって、楽になるだろう」
きょうだい全員がどこか他人事……もうこの人たちに頼ることはできない。そんなA子さんに、さらなる悲劇が襲います。単身赴任先でBさんが倒れたのです。一報を聞きつけ、急いで駆けつけましたが間に合わいませんでした。
茫然自失になっていましたが、義父の介護は待ってはくれません。「母さん、こちらは大丈夫だから、お祖父ちゃんのところに行ってあげてよ」と子どもたち。手続きなどは長男たちにまかせ、義父の介護に忙しい日々が、また始まりました。
「夫を亡くしたのに、悲しむ時間もなく、義父と対峙する毎日……私の感覚も、どこか麻痺していて」
義父が亡くなったのは、Bさんが亡くなった2年後のこと。
「義父の介護は、8年ほどに及びました。終わりの1年ほどは、私のことはまったくわからない状態で。ちょっと空しくなっちゃいましたね」
そして葬儀がひと通り終わったとき、C子とD子から衝撃的なひとを言われたといいます。
C子「お父さんの遺産、あの家(=義父の家)くらいなのよ。もう誰も住む人がいない家だから、売ってしまうほうがいいと思うの」
D子「相続人は、本来、私たちと、Bだったんだけど、Bはもう……」
C子「Bの相続権は、Eちゃんたち(=A子さん、Bさんの子どもたち)に受け継がれるんですって。でも大したお金にならないと思うの、あの家。それを5人で分けても、ねえ」
D子「だから、Eちゃんたちには、相続放棄をしてもらいたんだけど、どうかな」
「ふたりの言うことも、わからなくもない」とA子さん。確かに、義父の住んでいた家は古く、売却したところで、1,000万円になるかどうか。しかし、A子さんにとっては、そんなことはどうでもよかったのです。
A子さん「それは、本人たちと話してくれませんか。子どもたちもいい大人なんで」
C子さん「でも、こういうことは母親からいったほうが良いかと思って、ねぇ」
D子さん「そうよ、ねえお願いできない?」
A子さん「そんなことよりも、私、8年以上もお義父さんの介護をしてきたんですよ。何か、私にないんですか?」
C子さん「えっ、A子さん、お金が欲しいの?」
D子さん「そんな人だと、思わなかったわ」
A子さん「(絶句)」
C子さん「そんな欲深い人だと思わなかったわ、A子さん」
A子さん「そんなんじゃありません! 夫を亡くしても、悲しむ暇もなくお義父さんの介護をしてきたんですよ、私」
D子さん「でも長男の嫁でしょ。嫁いだときに、覚悟していたでしょ」
A子さん「そんな……私の人生、台無しですよ! 介護をするために、嫁いだわけじゃありません!」
我慢していたものが崩れ、涙がとまらなかったというA子さん。子どもたちの前では、愚痴ひとつもこぼさなかったいいますが、すべてを察してくれる、優しい子どもたちです。「お祖父ちゃんの相続のことなんだけど、放棄しようと思うんだ。変にこじれるのも嫌だし。その代わり、叔母さんたちとは縁が切れるだろう」と言ってくれたそうです。
「ありがとうの言葉さえ、言えない人たちなんですよ、あの人たち。それがわかったら、お義父さんも悲しむでしょうね」