●前年度はコロナの影響で、減収減益の厳しい決算に、31セクター中で増益確保は5セクターのみ。
●今年度も減収減益に、反動増の通信、鉄のほか産業用電機機器、医薬など8セクターは増益か。
●来年度は増収増益へ、自動車や陸上旅客運輸などの反動増を中心として、28セクターが増益に。
前年度はコロナの影響で、減収減益の厳しい決算に、31セクター中で増益確保は5セクターのみ
弊社は6月5日、調査対象とする455社の業績見通しを更新しました。なお、対象社数については、今般見直しを行い、3月時点の227社から大幅に増加しています。はじめに、2019年度の実績を確認すると、売上高は517兆円、経常利益は32.9兆円、純利益は19.3兆円でした(図表)。これにより、前年度比の伸び率は、順に-2.5%、-22.4%、-34.7%で、減収減益の着地となりました。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、多くの企業が売り上げの急減に見舞われ、また、資源価格の下落により、減損損失を計上する企業も増えるなど、2019年度の企業決算は極めて厳しい結果になりました。弊社は調査対象の455社を31セクターに分類していますが、このうち、通信、鉄、商社、自動車など26セクターが前年度比で減益となり、増益は、電力・ガス、医薬、住宅・不動産などの5セクターのみでした。
今年度も減収減益に、反動増の通信、鉄のほか産業用電機機器、医薬など8セクターは増益か
ここから、2020年度および2021年度の業績見通しを確認していきます。なお、前提となる為替レートは、ドル円が1ドル=108円、ユーロ円は1ユーロ=117円です。まず、2020年度について、売上高は472.5兆円、経常利益は29.4兆円、純利益は18.8兆円を予想しています。前年度比の伸び率は、順に-8.6%、-10.9%、-2.5%と、引き続き減収減益を見込んでいます。
2020年度も、新型コロナウイルスの影響が残り、企業業績は総じて厳しいものになると考えています。セクター別では、31セクター中、自動車、陸上旅客運輸、運輸(倉庫・物流)、小売など、23セクターが前年度比で減益となる見通しです。一方、増益が予想されるのは、前年度の反動増が見込まれる通信や鉄のほか、産業用電機機器、医薬などの8セクターです。
来年度は増収増益へ、自動車や陸上旅客運輸などの反動増を中心として、28セクターが増益に
そして、2021年度については、売上高が498.3兆円、経常利益は37.7兆円、純利益は25.1兆円を予想しています。前年度比の伸び率は、順に+5.5%、+28.2%、+33.5%と、増収増益に転じるとみています。31セクターの中では、2020年度に厳しい減益が見込まれる、自動車、陸上旅客運輸、運輸(倉庫・物流)、小売などの反動増を中心に、28セクターが前年度比で増益となる見通しです。
一方、減益が予想されるのは、価格競争の影響が懸念される電力・ガス、原油安の長期化を想定した資源・燃料などの3セクターです。なお、足元では、依然として国内景気や企業業績の先行きに不透明感の強い状況が続いています。こうしたなかでも、日本株が総じて底堅く推移しているのは、企業業績の将来的な改善(弊社は前述の通り2021年度に増収増益を予想)を早々に織り込んでいる部分もあると考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『今年度と来年度の企業業績見通し』を参照)。
(2020年6月10日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト