日本株上昇の立役者は誰か

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●海外投資家は4月中旬以降売り越し基調だったが日本株の堅調推移で5月第3週は買い越しに。

●日本株の下落リスクを警戒した海外投資家が予想外の株高を受け日本株を買い戻した可能性。

●相場を支えたのは日銀のETF買い、海外投資家の買い戻しを誘発させ、日本株の底離れに貢献。

海外投資家は4月中旬以降売り越し基調だったが日本株の堅調推移で5月第3週は買い越しに

東京証券取引所は、毎週第4営業日(通常は木曜日、祝日などの場合はその分後ろ倒し)の午後3時、投資部門別に日本株の現物売買状況(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計)を公表しています。投資部門の中で、特に市場の注目度が高いのは、最大の売買シェアを持ち(2019年は約6割)、日本株の方向性に大きな影響を与える海外投資家の動きです。

 

海外投資家は直近で、4月第3週(4月13日〜17日)以降、5月第2週(5月11日〜15日)まで、5週連続で現物を売り越し、売り越し額は累計で約1兆円に達しています。一方、日本株の先物についても、同期間では海外投資家による売り越しが目立ちました(図表1)。しかしながら、日経平均はこの間、底堅い推移が続き、海外投資家は5月第3週(5月18日〜22日)、現物、先物とも買い越しに転じました。

日本株の下落リスクを警戒した海外投資家が予想外の株高を受け日本株を買い戻した可能性

一般に、海外投資家のうち、現物を取引する主体には、中長期的な視点で運用を行う年金などが含まれ、先物を取引する主体には、短期的な視点で売買を行う投機筋などが含まれます。4月第3週以降の海外投資家の売り越し基調は、日本株のさらなる下落リスクを警戒し、年金などは日本株現物の保有割合を減らし、投機筋などは日本株先物のショート・ポジションを積み上げたことによるものと推測されます。

 

ただ、この間、想定外に日本株が堅調に推移したため、特に投機筋などが、ショート・ポジションの解消に動き、5月第3週には、現物、先物とも、いったん買い越しに転じたものと思われます。では、日本株の堅調推移の背景、すなわち、誰が日本株を買っていたかについて検証してみます。具体的には、投資部門別のうち、個人、事業法人、信託銀行の売買状況を確認し、別途、日銀のETF買い入れも勘案します。その結果が図表2です。

相場を支えたのは日銀のETF買い、海外投資家の買い戻しを誘発させ、日本株の底離れに貢献

4月第3週から5月第2週まで、海外投資家は前述の通り、現物を累計で約1兆円売り越しており、先物と合算すると、累計売り越し額は約1.6兆円となります。これに対し、同期間における、個人、事業法人、信託銀行の累計買い越し額と、日銀のETF買い入れ累計額を合算すると約1.8兆円となります。このうち、日銀のETF買い入れ累計額は、約1.2兆円でした。

 

日銀は、3月にETFの買い入れ枠を増額し、結果的に海外投資家の買い戻しを誘発させたことから、今回の日本株の底離れに、大きく貢献したと考えられます。海外投資家の買い戻しは、恐らく先物を中心に今週も続いたと思われますが、ポジション調整一巡後は、買い一服となる可能性が高く、また、そもそも日銀には相場を押し上げる意図はありません。そのため、今後は個人の「逆張り」の動き、すなわち相場上昇時の売りにも注意が必要です。

 

(注)データは2020年4月第1週(3月30日~4月3日)から5月第3週(5月18日~22日)。先物は日経225先物とTOPIX先物の売買状況。現物は2市場(東証・名証)1・2部等の売買状況。  (出所)大阪取引所、Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]海外投資家の日本株売買状況 (注)データは2020年4月第1週(3月30日~4月3日)から5月第3週(5月18日~22日)。先物は日経225先物とTOPIX先物の売買状況。現物は2市場(東証・名証)1・2部等の売買状況。
(出所)大阪取引所、Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)個人、事業法人、信託銀行のデータは2020年4月第1週(3月30日~4月3日)から5月第3週(5月18日~22日)。2市場(東証・名証)1・2部等の現物売買状況。日銀は各週のETF買い入れ額累計。  (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]個人などの日本株売買状況と日銀ETF買い入れ (注)個人、事業法人、信託銀行のデータは2020年4月第1週(3月30日~4月3日)から5月第3週(5月18日~22日)。2市場(東証・名証)1・2部等の現物売買状況。日銀は各週のETF買い入れ額累計。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株上昇の立役者は誰か』を参照)。

 

(2020年5月29日)

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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