税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
慎重な経済活動の再開
2020年4月の米国の失業率は15%に迫り、第2次大戦後最悪の水準に上昇しました。新型コロナウイルス流行(パンデミック)の影響の軽減を図って講じられた都市封鎖(ロックダウン)やその他の政策手段がもたらした経済的コストは、政策立案者が、社会的責任と経済的責任の均衡を慎重に測ろうと努めるなか、驚異的な水準に膨れ上がっています。
5月初旬、欧州の多くの国は、国ごとに異なる段階で都市封鎖を解除し、経済活動の再開に踏み出しました。「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」を保つための規制が遵守され、ウイルスの感染拡大が限定的なものに留まって医療制度を崩壊させることがないよう祈りつつの再開です。
実際のところ、今回の危機は医療制度危機と言ってよいように思われますが、世界経済を、危機発生前の状況にどの程度戻すことができるかが特に注目されています。「拙速すぎる」経済再開を懸念する声が強まっていますが、一方で、都市再封鎖の脅威が経済危機を必然的に長引かせると同時に、株式市場の持続的な回復に必須だと考えられる景気敏感株の回復を更に後ずれさせる可能性があります。
パンデミックは制御されたか?
5月11日現在、世界の感染者数は414万人(死者数は28万4,000人)を上回りますが、大半の国では状況が顕著に改善しているように見受けられ、一日当たりの死者数は3,200人強、累積死者数の一日当たり増加率は+1.9%にまで減少してきています。
欧州では、オーストリア、ベルギー、チェコ、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン、スイスの各国が、店舗、企業、学校の再開に向けた様々な対策を講じました。(社会的距離の遵守については、引き続き実施されている地域と、勧告に緩和された地域がありますが、)規制の大半は6月末までに解除されることが予想されます。一方、米国では、全米50州のうち40%の州政府が都市封鎖を継続していますが、大半が5月末あるいは6月末までに緩和を行うことを発表しています。
ウイルス感染「第二波」に対する懸念の度合いが経済回復の形状を決める
株式市場は、「経済再開」を見込んだごく少数の銘柄がけん引する強い上昇相場を展開しています。最悪期は脱したとの見方や、都市封鎖がいったん解除されれば世界の主要中銀が行ってきた巨額の金融緩和が触媒となって経済の急回復がもたらされるとの見方が投資家心理を大きく改善しているからです。
とはいえ、経済の先行きが極めて不透明な状況は変わりません。観光、航空、小売、外食等の最も大きな影響を被った業界における失業や倒産件数等の観点からすると、今後は、「事後的」に見た経済への打撃の規模等の複数の要因次第だからです。労働市場の先行き、消費者心理の回復、治療薬あるいはワクチン開発の可能性等も景気回復の形状に影響を及ぼします。また、国と国の間の将来の関係を巡る不透明性も懸念されます。たとえば、米中間の貿易摩擦は再浮上しているだけでなく、悪化しているようにさえ思われます。
また、国際通商の先行きが懸念される一方で、(医療機器の製造等)様々な戦略上の理由から自国の独立性を維持する必要性があることについては議論の余地が残っており、今後、広範な分野で長期にわたり影響を及ぼす公算が高いと考えます。
短期的には、新型コロナウイルスの感染率が再度上昇するリスクならびにその規模が株式市場を大きく左右すると考えます。ウイルス感染拡大の第二波は第一波よりも大きなものになると予測する専門家がいる一方で、ウイルスの感染力は弱まって相対的に小さな複数の波が継続して発生するだろうとの見方も散見されます。感染の第二波がより厳しいものとなるリスクは、これまでに講じられてきた経済、社会両面での様々な対策の効果を台なしにし、株式市場のボラティリティを再び上昇させかねません。
ウイルス対策、経済再開の双方で欧州を先導してきたドイツは、5月6日、店舗や学校、保育園、レストラン、バー等の段階的な再開を発表しましたが、1人の感染者から何人に感染するかを示す基本再生産数(R0)は再び1を上回り、社会的距離の遵守にも緩みが見られることを示唆するデータが発表されています。また、韓国と中国では、ウイルスが再び発生した兆候が確認され始め、ロシアは依然として厳しい状況を脱していないように思われます。各種の検査と(感染経路)追跡のための施策がリスクの管理と低減を可能とし、都市再封鎖リスクが回避されることが望まれます。こうした状況での経済再開の成否は、各国が新規感染者の検査と経路追跡を行う容量(キャパシティ)をどれだけ有するか、また、国民の側に、社会的距離と公衆衛生上の規制を遵守する心構えがどの程度あるかにかかっています。
都市封鎖がどのように解除されるかについて、欧米はアジアの動向を注視してきましたが、アジアとの比較を行う際には、感染経路の追跡手段や手段の厳密な意味での特性、文化の違い等を見落としてはならないと考えます。第二波の到来に際しては、感染者の入院体制を整え、感染拡大を都市あるいは地域内に封じ込めることが出来たとしても、経済回復のスピードに一定の影響が及ぶと考えます。世界の一部の地域では「一進一退の」緩慢な再開を余儀なくされ、経済のキャパシティをウイルス発生前の状態に戻すには時間を要するからです。
「経済活動の再開」を見込んだ株式市場の上昇は行き過ぎなのか?
他国に先駆けて都市封鎖を解除した中国では、(欧米経済の停滞を受け、外需に遅れが生じているものの)経済活動が徐々に回復しつつある兆しが認められます。こうした状況が先行きを期待させることは事実ですが、中国の回復さえ順調に進んでいるわけではありません。一方、米国では、経済回復への道のりが遠いことを示唆する経済指標や決算の発表が相次いでいるにもかかわらず、株式市場は、経済の急激な落ち込みのスピードと同様の急速な回復を織り込み続けています。連邦政府による巨額の財政拡大と中央銀行による金融緩和が経済を支えることは確かですが、株式市場は、マクロ経済指標や企業の利益予想を無視し、V字型回復を期待して、買われ過ぎの状態にあるとの見方は変わりません。足元の明らかなリスクは、失速気味の経済回復に「厳しい現実を突きつけられている」ことです。
こうした状況下、足元の相場は、上昇の速度も幅も度を過ごすものだったと考えます。市場は経済の再開を受け入れるキャパシティと金融緩和の効果を(恐らく過度に)織り込んだものと思われます。上昇相場への参加者が限られることも脆弱性を示唆するものであり、この先数週間のうちに「現実を直視」せざるを得ない状況に陥ることとなれば、市場が二番底を試す可能性も否めません。ピクテでは、テクノロジー株の上昇一服に因り市場が短期的に調整するリスクを警戒しています。
もっとも、下げ幅は限定的なものに留まり、3月の底を試す公算は極めて低いと考えます。中・長期的には、底値を切り上げる形で、市場の回復局面が続くと考えます。また、当面のところ、(景気の変動に左右されにくい)ディフェンシブ銘柄や優良銘柄の相対的に良好なパフォーマンスが続くと考えます。景気敏感銘柄が上昇相場に参加するには、経済指標の改善や利回りの上昇が必要だからです。下振れリスクとして考えられるのは、欧州各国の都市封鎖の解除が失敗に終わり、その結果、感染者が大幅に増加するリスクですが、これは「現実の直視」を迫られる状況が投資家のリスク回避姿勢を強める望ましくないシナリオです。
※データは将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『回復局面の始まり:多難な先行き』を参照)。
(2020年5月22日)
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