華やかな複合施設の裏には巨大な廃墟が広がっていた
セラ義(@emoyino)のツイート
「代官山ヒルサイドテラス裏」
ヒルサイドテラス裏の工事途中で打捨てられた1700坪の廃墟。ブルネイ投資庁所有。著名すぎて詐欺商材としてはいまいち。フィリピン大使館のほうがなつかしいかな。英語の委任状をみんな持ってたね
#クソ物件オブザイヤー
【どんなストーリー?】
おしゃれな大人の街、代官山。その一等地に建つ、おしゃれでモダンな住宅・オフィス・店舗の複合施設「ヒルサイドテラス」。
おしゃれな街を歩くおしゃれなみなさんは、そのすぐ裏手にある、建設途中で鉄骨むき出しのまま数10年の間放置されてきた巨大な廃墟の存在を、そして、その所有者をご存知なのでしょうか?
【全宅ツイメンバーの解説】大都会に佇むこの廃墟の規模は圧巻!権利関係がややこしい有名な詐欺物件
南平台のフィリピン大使館か代官山のブルネイ。わしが不動産会社へ入りたてのころの二大詐欺物件や。なつかしいがな。メールがなかったから、今みたいに物件情報はメールにPDFファイルで添付されて送られてくるんではなくて、FAXかブローカーがコピーしたもんを直接持参して来てた。
コピーやFAXしまくってかすれた英文の委任状見せてブローカーが言うねん。大丈夫です。フィリピン側ともきっちり話ついてます! いうて。英語ひと言も喋れんおまえがどの口で言うねんいう話や。わしも英語読めへんけどwwって言いたかったけど、わしもまだ新入社員や。よう言わへんかったわ。
まぁ、これは機会があればいっぺん現地見に行ってほしい案件や。ヒルサイドテラスのある旧山手通りからぐるっと裏まで敷地回ってその大きさを実感してから、仮囲いの隙間覗いてみ。大都会にこれだけの廃墟は圧巻や。
この手の外国絡みで権利関係がややこしいのは長引くな。ソ連名義のまま登記されてどうにもならんマンションもあった気がするわ。しかしもったいないわな。ヒルサイドテラスのオーナー、朝倉家に買い取ってもらい槇文彦先生の設計でもうひとつヒルサイドテラス建ててほしいくらいのもんやで。
【真相を追跡!】世界一の富豪とされた国王の一族がなぜ代官山に負の遺産を
代官山といえば、数々の洋服店や雑貨店、カフェ、レストランなどが立ち並ぶも、渋谷や新宿のような猥雑感はなくて街並みが閑静というイメージ。オシャレでセレブな雰囲気が漂う都内有数の人気スポットだ。
教会や大使館が点在していて、異国情緒にあふれているところも魅力的。ところが、かなり風変わりな情緒が異国の人によってもたらされている、正確に言うと「もたらされっぱなし」になっていることが世間では意外と知られていない。
その風変わりな情緒の産みの親は、ジェフリ・ボルキア氏。ブルネイ・ダルサラーム国(以下、ブルネイ)の国王であるハサナル・ボルキア氏の末弟だ。ハサナル・ボルキア氏は首相・国防相・蔵相も兼任して絶大な権力を有し、ブルネイの絶対君主とされる人物。ギネス・ワールド・レコーズに世界一の富豪と記録されたこともある。自身の50歳の誕生日に合わせて個人資産で東南アジア最大級の遊園地を建設し、国民に無料でマイケル・ジャクソンのライブを自費開催したというエピソードも残っている。
【代官山ヒルサイドテラス裏の変遷年表】
1994年12月28日 ジェフリ・ボルキア氏が購入
2000年11月17日 税金滞納で差し押さえ
2001年01月04日 差し押さえ解除(おそらくブルネイ投資庁がボルキア氏の代わりに税金を支払った)
2008年06月10日 ブルネイ投資庁が処分禁止の仮処分をかける(ボルキア氏もしくは第三者が本件不動産に何らかのアクションを起こそうとしたのではないか。それを防ぐため。これで他の人は登記を動かせなくなる)
2009年01月06日 ブルネイ投資庁へ所有権移転
15億8000万円相当の廃墟のため、今なお納税し続ける
◆夢破れ、工事は止まり、触らぬ神に祟りなし
本稿の執筆に際して入手した土地登記簿によると、ジェフリ・ボルキア氏は1994年12
月に目黒区青葉台一丁目88番1の所有権を取得している。場所は代官山ヒルサイドテラスの裏。面積は1044.36m²、約316坪。バブル崩壊後とはいえ、この土地を乙区なし(=借り入れなし)で購入とは驚く。
プール付きの自邸を建設する予定だったとされるジェフリ・ボルキア氏だが、工事は途中で止まり、現在は鉄骨むき出しの廃墟がさびしく佇むばかり。鬱蒼と生い茂る緑を見ていると、「夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡」という松尾芭蕉の句が思い起こされる。ブルネイの兵には何があったのか。
米国のヴァニティフェア誌によると、ベントレー、ロールスロイス、フェラーリといった超高級車コレクション2300台に自家用飛行機8機など、ジェフリ・ボルキア氏の所有物は豪勢を極めていたという。1986年から1997年にかけてブルネイの蔵相とともに投資庁のトップも務め、VIPとしてのポジションも生半可ではなかった。
だが、彼の転落は自身が経営していた建設会社の倒産が発端となる。赤字補填に国家予算を流用していたことが明るみになってしまったのだ。これにより、国王からは「金を国庫に返せ」と訴訟を起こされてしまう。王室のイメージを損ねたジェフリ・ボルキア氏が失脚したのは言うまでもない。母国を離れて英国のロンドンで暮らすことになった。
これらのいきさつを経て、豪邸建設計画は頓挫。それどころか、彼は固定資産税や都市計画税の支払いも怠ったため、2000年には差し押さえを喰らってしまう。代わりに税金を支払ったと推察されるのが、2009年に本件不動産の所有権を取得しているブルネイ投資庁。かつて、ジェフリ・ボルキア氏がトップに君臨していた組織だ。
調査のために現地を訪ねた際、本件土地を整備している場面に偶然にも出くわした。現場で業者に聞いたところ、「今夏の大雨で流れる可能性のある土砂が、隣接する民家の壁に何らかの影響をもたらさないように整備してくれと。依頼主はブルネイ投資庁です。本丸の廃鉄骨の解体作業の依頼は、まだ入ってこないのですが…」とのことだった。推定で約
16億円の土地。安くない固定資産税を払いつつ、現在もブルネイ投資庁が所有しているのは確かだ。
この土地をめぐっては、売却に関する詐欺話などの噂が絶えない。そのためか、周囲の老舗店や古老の近隣住民に話を聞こうとすると、「触らぬ神に祟りなし」の対応を実践されてしまう。「そういった裏事情とは一切関係ありません」といった風情で、オシャレでセレブな街には今日も人があふれている。
※ 本記事は、書籍『クソ物件オブザイヤー』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋、再編集したものです。
全宅ツイ