運営の自粛ではなく、公的に制限されるようになった
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、4月7日に東京都など7都府県を対象にして「緊急事態宣言」が発令されました。その後、期間は5月6日までで変わらないものの、「緊急事態宣言」の対象地域が全国へと拡大しました。
身の回りのさまざまな契約上のことも、「緊急事態宣言」後に変化しています。今回は、「スポーツクラブ」や「ジム」が休業した場合、会費や月謝がどうなるのか、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏がお答えします。
4月7日、正式名称「新型インフルエンザ等対策措置法」に基づく緊急事態宣言が政府により出され、同法24条9号に基づいて、都道府県の各本部が私人や団体に、休業の「協力」要請をできるようになりました。
これにより、東京都では、バー、ライブハウスを含む遊興施設、1,000平米を超える大学・学習塾、スポーツクラブ、パチンコ店などの運動・遊戯施設、映画館・劇場等1,000平米を超えるホテル・博物館等の集会・展示場、1,000平米を超える生活必需品以外の小売店等の商業施設は、東京都から休業に協力するよう要請されたのです。
つまり、飲食店、スポーツジム、塾などの施設は、運営の「自粛」ではなく、都道府県知事の「協力要請」により、運営を公的に制限されるようになりました。
スポーツクラブが休業の場合、会費はどうなるのか
それでは、利用料金はどうなるでしょうか。スポーツクラブの場合、会費はどうなるのかをみてみます。
以下の2つの点が判断の基準になります。
(1)クラブを利用する権利が提供されていたかどうか。
(2)自分から自粛したのか、あるいは強制的に行けなくなったのか。
◆緊急事態宣言前にスポーツクラブに行くのを自粛していた場合
これは、クラブを利用する権利自体は提供されていて、自分が行かなかったというだけですから、対価(=会費)の支払い義務は残ります。
◆スポーツクラブが緊急事態宣言前に自粛していた場合
これは、クラブ側が利用権の提供をやめていますので、対価(=会費)を支払う義務はなくなります。
◆スポーツクラブが緊急事態宣言を受けて休業した場合
スポーツクラブが利用権を提供すること自体が不可能になってしまったので、その対価である会費を支払う義務もまた消滅します。
スポーツクラブ側が自粛や休業要請などで休業し、利用できなくなったとしても、会費のうち施設維持費的な部分は、キャンセルをして会員をやめない限り残る規約になっている場合もあります。この場合は、退会しない限り、この費用は免れないことになるため注意が必要です。
また、上記で説明したことは民法の原則によるものですが、クラブ側が自粛や休業をした場合にもかかわらず、クラブが「いかなる理由があっても会費はキャンセルするまで返還しません」という規約を置いていた場合、消費者契約法により無効になるため、やはり上記の原則に立ち戻るものと考えられます。
ゴールデン・ウィークの連休明けまで休業する施設は多いようですが、再開するかは、新型コロナウイルスの感染拡大がどうなっているかによります。
休業が長期化する可能性もあり、この機会に、さまざまな契約を見直す必要があると思います。早めに所属しているスポーツクラブやジムへ確認することをお勧めします。
水谷 江利
世田谷用賀法律事務所 弁護士