●日経平均は1月20日高値と3月19日安値の下げ幅から38.2%戻した19,429円55銭に到達。
●戻り基調の背景には新型コロナ感染拡大ペースに鈍化の兆しと市場の流動性懸念の後退がある。
●まだ楽観はできないが、感染収束なら日経平均は20,000円台へ、ただその後の上昇は緩やかに。
日経平均は1月20日高値と3月19日安値の下げ幅から38.2%戻した19,429円55銭に到達
日経平均株価は、1月20日に24,083円51銭(終値ベース、以下同じ)の高値をつけていましたが、その後は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて急落し、3月19日には16,552円83銭の安値をつけました。しかしながら、4月15日には19,550円09銭まで値を戻し、1ヵ月足らずで3,000円ほど水準を切り上げました。4月9日から15日までは、取引時間中も19,000円台を維持しており、比較的落ち着いた様子がうかがえます。
そこで、テクニカル分析の1つであるフィボナッチ・リトレースメントを用いて、日経平均株価の動きを確認してみます。1月20日高値から3月19日安値までの下げ幅について、38.2%戻した水準を計算すると、19,429円55銭となります。ここはすでに到達済みですので、次の目安となるのは50%戻しの水準である20,318円17銭です(図表1)。ここまでの回復となれば、下値不安はかなり払しょくされると思われます。
戻り基調の背景には新型コロナ感染拡大ペースに鈍化の兆しと市場の流動性懸念の後退がある
一方、海外の株価指数についても、ダウ工業株30種平均やドイツ株式指数(DAX)などは、3月下旬以降、いったん上昇に転じています。この背景には、①新型コロナウイルスの感染拡大ペースに鈍化の兆しがみられるようになったこと、②米ドル不足など、市場の流動性懸念が後退したこと、があると推測されます。①について、中国を除く世界全体の感染者数は、4月15日時点で約70,000人まで低下しています(図表2)。
また、②については、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月以降、海外の中央銀行に対し、通貨スワップやレポ取引を通じて、積極的に米ドルの供給を行いました。これにより、海外の中央銀行は、オペによる自国金融機関への安定的な米ドル供給が可能となりました。FRBはまた、コマーシャル・ペーパー(CP)や社債などを買い入れる制度を設立し、各市場への流動性供給にも努めました。
まだ楽観はできないが、感染収束なら日経平均は20,000円台へ、ただその後の上昇は緩やかに
世界の株式市場は、2月下旬から3月下旬にかけて大幅に下落し、パニック相場の様相を呈しました。これは、米ドル不足による保有資産の投げ売り、すなわち「現金化」の動きが影響した面も大きいと思われます。市場の流動性懸念が後退した今では、日本をはじめとする各国の株式市場は、少なくともパニック的な状況からは、落ち着きを取り戻していると判断できます。
新型コロナウイルスの新規感染者数については、見通しにくい部分が多く、あまり楽観はできません。もちろん、このまま感染が収束に向かえば、日経平均株価が3月19日につけた安値を下回るリスクは後退していきます。ただ、感染の収束後、すぐに経済活動や企業活動が元の水準に戻ることは難しいと考えます。そのため、日経平均株価は、前述の20,318円17銭水準回復後も、上昇ペースは緩やかとなる可能性が高いとみています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株の下値不安は後退したのか』を参照)。
(2020年4月16日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト