ブラジル中銀、方針変更の裏事情…為替政策等の対応に疑問も

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ブラジル中銀が方針変更した最大の要因は言うまでもなく新型コロナウイルスによる景気悪化です。ただ、足元の当局の経済運営、例えば為替政策などに疑問が残る対応も見られました。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がブラジルなど南米にも影を落としはじめるなか、今後の政策運営に注目しています。

ブラジル中銀:市場予想通り政策金利を引き下げ、前回の方針を撤回

ブラジル中央銀行は2020年3月18日(日本時間19日)、市場予想通り政策金利を0.50%引き下げ、過去最低の年3.75%にすることを全会一致で決定しました。利下げは6会合連続です(図表1参照)。声明では「新型コロナウイルスが世界経済の大幅な減速を招き、商品価格の下落、資産価格の変動率が高まっていると指摘しています。

 

日次、期間:2018年3月19日~2020年3月19日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジル政策金利とレアル(対ドル)レートの推移 日次、期間:2018年3月19日~2020年3月19日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、ブラジル中銀は前回2月の政策委員会で、金融緩和プロセスを中断(今後は据え置き)する方針を示していましたが、新型コロナウイルスの影響による経済の大幅な減速懸念を受け、あっさり方針を変更しました。

どこに注目すべきか:ブラジル中銀、利下げ、レアル安、感染拡大

ブラジル中銀が方針変更した最大の要因は言うまでもなく新型コロナウイルスによる景気悪化です。ただ、足元の当局の経済運営、例えば為替政策などに疑問が残る対応も見られました。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がブラジルなど南米にも影を落としはじめるなか、今後の政策運営に注目しています。

 

まず、ブラジル経済の中期的な動向をボベスパ株価指数などと共に振り返ります。ブラジルは15年にマイナス成長(通年でマイナス3.5%)と通貨レアル安に伴う高インフレとなったことを受け株式市場は軟調となりました(図表2参照)。しかし、政策金利(ピークで14.25%)の引き上げを受けインフレ率が低下に転じ、また、ブラジル政府が財政など構造改革を本格化させたことで株式市場は回復に転じました。

 

日次、期間:2015年3月18日~2020年3月18日、IPCAは月次、前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルボベスパ指数とIPCA(インフレ率)の推移 日次、期間:2015年3月18日~2020年3月18日、IPCAは月次、前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、次に足元を振り返ると、ブラジル市場は異なる様相となっています。まず年初からレアル安の進行が見られました。当初、ブラジル当局はレアル安に対し、政策金利引き下げに伴う自然な動きと許容していました。しかしブラジルの最大の貿易相手である中国での感染が拡大するとレアル安が加速しました。当局は方針を変更し為替市場の安定を試みますが、時期を逃しました。さらに、2月26日にブラジルで南米初となる新型コロナウイルスの感染が確認された頃から、株式市場は急落、15年の水準に近づきつつあります。

 

このような経緯で行われた今回のブラジル中銀の政策委員会で据え置きの方針が変更されたのは、前回の政策委員会開催が2月前半であったことを思えば当然とも言えるでしょう。ただ、利下げを決定しながら、声明文では今後のインフレ率上昇(通貨安)への懸念も示しており、ブラジル中銀には当面神経質な政策運営が想定されます。

 

最後に、ブラジルにおける新型コロナウイルス感染についてですが、感染者数は3月18日時点で234人と、感染時期が遅い分、感染者数は比較的少ないのですが、新規感染者数は34人と拡大傾向です。ブラジルでは拡大を懸念して地方政府主導で、半数以上の州が公立学校を閉鎖、またサンパウロとリオデジャネイロが非常事態を宣言しています。さらに隣国のペルーやアルゼンチンは国境封鎖に踏みきっています。一方、ボルソナロ大統領はこれらの予防策は過剰と、痛烈に批判しています。足元でも支持者集会でボルソナロ大統領が握手を続ける姿には違和感を覚えます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジル中銀、方針変更の裏事情…為替政策等の対応に疑問も』を参照)。

 

(2020年3月19日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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