前回に引き続き、「収益の上がらない不動産の収益を上げる方法」を紹介します。今回は、経営状態の悪い賃貸用物件を抱えてしまった場合、どのように対応すればいいのかを見ていきます。

空室多数の地主にも容赦ない税負担が・・・

今回紹介する事例も、前回までと同じ「収益の上がらない不動産の収益を上げる方法」です。住宅として賃貸していたものの空室が目立つ物件を、高齢者向けの施設に賃貸することで安定した収益が上がるようにした例です。

 

[図表1]

 

この事例の主人公は三重県内で賃貸経営をしているEさんです。Eさんの一族はもともと自宅周辺に広大な土地を持っており、農業を生業としていました。しかし3年ほど前に大手アパートメーカーにすすめられ、土地の一部を利用して木造アパートを1棟建設しました。

 

当時は近隣にあった大手企業の工場に勤務する人たちを対象に建設したものの、その企業が撤退してしまったため一気に空室が激増しました。筆者の会社に相談に来られた時には大半の部屋が空いているという状態にまでなってしまっていました。

 

当然、それでは利益は上がりません。収支を計算してみると経常利益はマイナスでした。このままの形で続けていくと赤字転落は必至というぎりぎりの状態だったのです。

 

経営状態がよくないだけでなく、このままの状態で相続が発生したらどうなるか、ということもEさんの懸念事項でした。Eさんの相続人は2人の実子。税金の支払いも気になりますし、赤字物件を相続させるのも問題でした。

「少ない予算」ではじめられる方法で様子を見る

そこで、私たちが提案したソリューションは、

 

①空室を解消するために、募集形態見直し

②上質な収益不動産情報の提供

③地域の特性に合わせたリノベーション支援

 

というものです。空室さえ解消できれば、収益を生むことは可能ですから、空室解消のために段階を踏んで手を打っていくという提案です。

 

収益物件の空室改善では、最初から多額の投資を要する方法をとるのではなく、できるだけ少額からはじめられる方法で様子を見つつ、次の手を試していくという方法が無駄に費用を使わずに済み効率的です。

 

このケースでも①②はさほど費用を必要としないものです。

 

[図表2]

本連載は、2015年1月23日刊行の書籍『大増税時代に資産を守る富裕層の不動産活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書を利用したことによるいかなる損害などについても、著者および幻冬舎グループはその責を負いません。

大増税時代に資産を守る 富裕層の不動産活用術

大増税時代に資産を守る 富裕層の不動産活用術

磯部 悟

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の富裕層のほとんどは土地を所有している地主です。先祖から受け継いだ土地を保有し、それを活用することで資産を守ってきました。ところが土地の値下がりや固定資産税の上昇、そして相続税により多くの富裕層が危機に立た…

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