キャピタルかインカムか狙いを明確にする
任売物件に投資する際に、もうひとつ大切なことがあります。任売物件を購入する前に、その目的をはっきりさせておくことです。目的というのは「インカムゲイン狙い」にするのか、「キャピタルゲイン狙い」にするのか、というところです。
これまでにも、繰り返し指摘してきましたが、任売物件はインカムゲイン、キャピタルゲインの両方を同時に追求することができる物件です。特に、現在の任売物件というのは競売物件よりも実質的に割安になっているケースが多く、さらに市場価格よりも格安で入手できる希少価値のある物件になっています。
そのため、多くの不動産業者は、任売物件を入手すると自動的に転売して「売買益=キャピタルゲイン」を獲得することを目指してきました。転売して利益を出すためには、最初からある程度、市場価格との間に価格差が必要ですが、任売物件はその条件にぴったり符合している、と言っていいのかもしれません。そもそも、不動産業者は、任売物件を売却する際には次のようなステップを踏みます。
①債務者が不動産業者に競売を避けるために任意売却を依頼
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②不動産業者向けに限定的に情報を流す(競売まで時間がない場合)
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③②と平行して、業者間のオンライン情報サイト「レインズ」に情報を流す
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④購入希望者より申込書を受領し、任意売却物件の売買が成立
②のステップで、なぜ不動産業者に限定するのかといえば、プロの業者であれば、前述のようなリスクを承知で引き受けてもらえるからです。プロのほうが意思決定も早く、速やかに売却できることも理由のひとつです。
ただし任意売却の場合は、そのまま賃借人が住み続けたいという希望が多く、「セールス&リースバック」によって住み続けてもらえることも少なくありません。収益不動産としての「利回り」があり、いわゆる「インカムゲイン」を目的とした投資も多く、利回りも一般的な収益不動産よりは高くなる場合もあります。たとえば「表面利回り」の計算式は以下のようになります。
賃貸収益÷物件価格×100
たとえば、表面利回り20%はかなり高い方で、そのような物件なら持ち続けても良いですし、利回りから逆算して売却するのも良いでしょう。購入価格が600万円で、月10万円の家賃が入る物件があるとすると、これを利回り10%で購入する人が現れた場合、売り値は1200万円になります。
狙う利益によって出口対策も異なってくる
いずれにしても、キャピタルゲイン狙いか、インカムゲイン狙いかを、はっきりさせておく必要があります。というのも、不動産投資では「出口戦略」も重要になってくるからです。最初に購入した時点で、キャピタルゲイン狙いの場合は、比較的短期間で転売できるような努力をしなければなりません。言い換えれば、キャピタルゲイン狙いの場合は「転売しやすい物件」に絞って探すなどの工夫が必要になるわけです。
一方で、インカムゲイン狙いで任売物件をターゲットにするとすれば、ある程度の期間は保有することになるため、管理費とか修繕費、リフォーム費用などに関する諸条件のチェックが欠かせません。特に、修繕積立金については、マンションの管理組合でどの程度の蓄えがあるのか、総額をチェックして知っておくと安心です。少ない場合には、別途請求されることもあり、多ければ、その可能性は低くなります。