ドイツの財政規律は少し緩むか?新型コロナ感染拡大の可能性で

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新型コロナウイルスの景気に対する悪影響が懸念される中、景気刺激策を求める声が強まっています。ただ金融政策は、特に先進国では利下げ余地が低下しているため、財政政策に対する期待が高まっています。そのような中、厳格な財政規律を維持し拡大に消極的なドイツに、変化の兆しが見えてきました。

ドイツ財務相:地方政府支援への借入制限について一時解除を検討と報道

ドイツのショルツ財務相が債務に苦しむ州政府の歳出余地を広げるため、憲法に基づく借入制限の一時的な解除を検討していると、複数のメディアが報道しています。例えば、独紙ツァイトは2020年2月26日に報道しています。

 

報道によると、ドイツの地方政府が抱える債務の一定分を連邦政府に移すもので、地方政府はより多くの予算を必要な投資に充当できる可能性が考えられます。厳格な財政規律で知られるドイツが、限定的ながら財政刺激策を選択する可能性を示唆する内容で、今後の展開が注目されます。

どこに注目すべきか:債務ブレーキ、財政規律、Ifo、ZEW、CDU

新型コロナウイルスの景気に対する悪影響が懸念される中、景気刺激策を求める声が強まっています。ただ金融政策は、特に先進国では利下げ余地が低下しているため、財政政策に対する期待が高まっています。そのような中、厳格な財政規律を維持し拡大に消極的なドイツに、変化の兆しが見えてきました。

 

まず、ドイツの厳格な財政規律を振り返ります。最も象徴的な規律は「債務ブレーキ」と見られます。債務ブレーキはドイツ憲法(基本法)などに定められ、主な内容は①連邦政府及び州政府の財政収支を原則として均衡化すること、②連邦政府については、構造的財政収支対GDP(国内総生産)比率をマイナス0.35%までに抑える、とされています。

 

つまり、①で財政均衡化を原則とし、②で財政均衡の基準を定める構造です。ドイツの財政規律が厳格とされるのは、欧州連合(EU)の財政協定では構造的財政収支対GDP比率はマイナス0.5%と、EUはより緩やかな基準だからです。

 

また、財政均衡基準は州政府に対してはより厳しい基準が適用されています。今回報道された州政府の財政拡大余地の模索は、恐らく、財政に余裕のある連邦政府が州政府を補助することを検討しているものと思われます。

 

ドイツの経済成長率と財政を見ると(図表1参照)、財政の余裕に比べ低成長と偏った構造となっています。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が報道の段階から歓迎の意を示したほど、待ちに待った政策と見られます。

 

四半期、期間:2016年10-12月期~2019年10-12月期、GDPは前期比 出所:ユーロスタット等のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]独GDP成長率と債務残高対GDP比率の推移 四半期、期間:2016年10-12月期~2019年10-12月期、GDPは前期比
出所:ユーロスタット等のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

念のため、ドイツ経済の先行きに先行性のある独Ifo企業景況感期待指数やZEW期待指数で見ても、明確な回復に苦慮している印象です(図表2参照)。

 

月次、期間:2015年2月~2020年2月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]独Ifo企業景況感期待指数とZEW期待指数の推移 月次、期間:2015年2月~2020年2月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、ショルツ財務相が検討していると報道される借入制限の一時的な解除の実現には疑問もあります。憲法で定められた財政規律変更には議会の3分の2の賛成が必要で、ハードルは相当に高いからです。また、メルケル独首相のキリスト教民主同盟(CDU)は4月に党首選挙を控え、党内は分裂とも言える状況で、党内の合意さえ困難と思われます。

 

それでも、最大の実力者であるメルケル首相は以前、景気後退を回避するには、財政政策拡大を支持する考えを述べたこともあります。ドイツでも新型コロナウイルスの感染拡大の可能性が指摘される中、頑なに維持されていたドイツの財政規律が緩和される可能性に注目しています。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドイツの財政規律は少し緩むか?新型コロナ感染拡大の可能性で』を参照)。

 

(2020年2月27日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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