投資をすると決めたら、何をすればいいのか?
これまでの連載では、預貯金だとお金が目減りしてしまう可能性があること、そして「長期投資」「分散投資」「積立投資」の3つの投資をすべて行うことで、投資の値動きとうまくつき合えることをお話ししました。
では、どんな投資をすればいいのでしょうか? 今回は、投資を始める際にやるべきことを、順を追って説明します。
ステップ1:自分の「リスク許容度」を知ろう
投資先を選ぶときにまず大切なのは、自分が抱えられるリスクを見極めることです。なんだか怖い響きがありますが、投資の世界の「リスク」とは、「危険性」ではなく、「リターン(損益)のブレ幅」のことを指します。
リスクとリターンは、表裏一体の関係です。リスクが大きいほど、大きく儲かる可能性も、損する可能性も出てくることになります。つまり、「自分が損にどのくらい耐えられるか?」を示した度合いを、リスク許容度と呼ぶのです。
この値は、当然、収入・資産・年齢・運用期間・投資経験などによって変わります。
たとえば、年収300万円の人が100万円投資するといったら、相当な負担でしょう。しかし、年収3000万円の人だったら、さほど負担に感じないかもしれませんね。このとき、年収300万円の人のリスク許容度は低く、年収3000万円の人のリスク許容度は高いといえます。
同様に、「年齢が高いほど」「運用期間が短いほど」「投資経験が少ないほど」リスク許容度は低いとされます。とはいえ、リスクの高い商品に魅力があるのも事実。せっかく、投資で増やしたいと思い立ったのであれば、攻めの姿勢で臨むのもいいでしょう。
ステップ2:目標と期間から、投資金額を計算しよう
次に考えるのが、投資の目標金額と投資期間です。
お金を「なんのために」「いつまでに」「いくら」貯めたいのでしょうか。住居費・教育費・老後費用でもいいですし、「あれが欲しい」「旅行に行きたい」などでも結構です。必要な金額を目標にしましょう。
目標金額と投資期間が決まったら、どのくらいの投資金額・運用利回りで達成できるのかがわかります。ここで、簡単に計算するための速算表を紹介します[図表]。
今回のテーマは「10年で1000万円貯める方法は?」ですから、これを例に、速算表を見ていきましょう。「10年で1000万円」を貯金だけで達成するには、毎月約8万4000円ずつ貯めればいいのですが、相当ハードルが高いですよね。なので、投資で増やすことにします。
仮に10年で運用利回りが4%になった場合、必要になる月々の投資金額は、目標金額をこの表の「10年」と「4%」が合わさったところにある数値(147.25)で割った金額(税金は考慮せず)になります。つまり、
1000万円÷147.25=約6万8000円
です。月約6万8000円ずつ10年間投資して、運用利回りが4%ならば、目標金額の1000万円に到達する、というわけです。 これが厳しいなら、運用利回りを8%にしてみましょう。表を見ると、10年・8%の値は「182.95」ですから、
1000万円÷182.95=約5万4700円
です。貯金だけで貯めるよりも、3万円近く少なくて済むことになります。
もっとも、リスクとリターンには表裏一体の関係ですから、運用利回り8%となると、大きく儲かる可能性も、損する可能性もあります。毎月5万円を投資にまわすことが厳しい方も多いでしょう。その場合は、期間を延ばしたり、目標金額を変更したりして、調整していきます。
ステップ3:目標金額のためのポートフォリオを作ろう
株式投資、投資信託、債券、不動産、外貨…。投資先はたくさんあります。そして、投資先ごとに、リスクは異なります。
「できるだけ儲けたいから」と、高利回りな投資ばかりしていると、リスクが大きくなりすぎてしまいます。もちろん、思惑どおり値上がりすればいいのですが、ほぼ運頼みになってしまうのが現実です。結果、ギャンブルと変わらなくなってしまうのです。
そこで考えておきたいのが、「ポートフォリオ」です。
ポートフォリオとは、「保有資産の組み合わせ」のこと。投資をする際は、自分に合ったポートフォリオをつくることが大切です。なぜなら、組み合わせ次第で、ローリスクにもハイリスクにもなり、期待できるリターンも異なるからです。
ここで、先述したリスク許容度や目標金額が大切になります。自分のリスク許容度を踏まえた上で、目標金額を達成できるポートフォリオを作っていきましょう。
投資先によって、値動きはガラっと変わります。異なる値動きをする資産を組み合わせれば、分散投資の効果がさらに高まるかもしれないのです。
守りながら増やす...「コアサテライト戦略」の凄み
投資をはじめるからといって、資産すべてを費やしてはいけません。自分の資産全体のポートフォリオを考えておく必要があります。その際におすすめしているのが「コアサテライト戦略」です。
コアサテライト戦略は、運用資産全体を「コア(=中核)」と「サテライト(=衛星)」にわけ、それぞれの運用商品を変える戦略です。
コアは、価格変動の少ない安定的な商品で構成します。たとえば、現金、普通預金、定期預金、個人向け国債など。これらが資産の7割〜9割になるようにします。
一方のサテライトは、利益を狙う商品で構成します。国内外の株式、FX(外国為替証拠金取引)などが主役になるでしょう。コアで堅実運用しているので、サテライトではリスクを取ってお金を増やしたり、投資を楽しんだりしても大丈夫です。
サテライト資産の目安は1割〜3割がよいでしょう。こうすることで、コア部分で安定運用をしながら、サテライト部分で大きく増やすことが期待できます。
本記事では、投資でお金を増やすために必要なことを具体的に紹介してきました。 「10年で1000万円はなかなか厳しい」と思った方でも大丈夫。自分のリスクを知り、目標金額と投資期間を考え、達成するためのポートフォリオを組んでいけば、お金は堅実に増えていくでしょう。
株式会社Money&You
代表 頼藤 太希
本連載は、株式会社マリオン「i-Bond Blog」の記事を転載・再編集したものです。