事業の拡大を目指して、事業買収を検討している経営者が増えています。しかし経営者が変わったことで、従業員やクライアントが離れていき、事業買収が失敗に終わるケースもあります。今回は、事業買収の基本を中心に解説していきます。※本連載では、事業承継を控える経営者に向けて、M&Aの基本を紹介していきます。

「事業買収」のメリットとデメリット

事業買収とは、言葉の通りに事業を買収することをいいます。自社の事業拡大、新しい事業の立ち上げなど、M&Aの一つの手法として事業買収を活用されています。

 

すでに実績がある事業を買収することによって、事業規模を拡大させたり、事業を多角化させたり、自社の事業とのシナジー効果を得たりなどの目的で事業買収を実施する会社が多くあります。

 

事業買収には大きく3つのメリットがあります。

 

まず事業買収により、事業の成長スピードを加速させることができます。自社だけで事業を伸ばすより、市場のシェアの獲得が一気に拡大させることができるでしょう。

 

また新規事業はノウハウがない限り、色々と失敗を繰り返しながら事業を伸ばしていく必要があり、大きく予算を投下したところで、成功するとは限りません。しかし、すでに実績がある会社の事業を買収できれば、クライアントも取引先も、売上もすべてそろっているので、買収してすぐに利益を得ることができます。

 

さらに自社だけで事業を伸ばしていくには、人材獲得するコスト、開発などのコストがかかりが、成功している事業を買収できれば、そのまま運営していくことができるので、人材、開発などのコスト削減が期待できます。

 

一方で事業買収は必ず成功するとは限らないというデメリットがあります。

 

表面上ではうまくいっているように見えても、実は特殊な契約内容で、買収当初に期待していたシナジー効果を得られず逆にコストをかかってしまう、ということもよくあることです。事業買収する際に、きちんとその会社の事業の仕組み、債務などについて調べることが大切です。

事業買収時の「営業権」に対する考え方

事業買収…成功すれば会社も急成長が期待できる
事業買収…成功すれば会社も急成長が期待できる

 

事業買収には、大きく「事業譲渡」と「株式譲渡」があります。

 

事業譲渡は、事業を限定して買収します。相手企業のいくつかある事業のうち一つだけを買収してもいいし、全部の事業を買収してもいいので、M&Aの手法としては柔軟性のある方法だといえます。また、その事業に伴う、退職金、未払い給与などの簿外債務を承継する必要はなく、売手会社が負担します。買収側としてはメリットといえるでしょう。

 

一方、株式譲渡は会社ごとを買収することで、その会社の簿外債務もすべて承継することになります。実際に購入した後に知らない債務を発覚し、会社の経営に大きく影響が出るケースも多いのできちんと専門家に依頼して債務について調べることが大切です。事業譲渡より買収価格も高くなり、債務も承継するなど、リスクは高いといえるでしょう。

 

なお事業買収する時の買収価格は、時価純資産法を使われることが多く、下記の計算式にて算出することができます。

 

事業買収価格=純資産+営業権

 

営業権とは、将来見込まれる利益のことをいいます。帳簿に載っていないブランド力、収益力、技術力などを指します。

 

営業権は年買法を使って、大体この先3〜5年は同じ収益が得られるとして、この収益を買収価格に上乗せするという考え方です。たとえば、買収する事業の収益が1,000万円あった場合、営業権は「1,000万円×3年=3,000万円」とみなします。

 

営業権は何年にするかで買収価格が変わります。また営業権の費用は、毎年減価償却費として計上しないといけません。つまり、減価償却費より上回る収益を得られないと、会社にとっては損失になります。要は見込んでいた利益は得られなかったことになりますので、その金額によって、会社の経営にも大きく影響与える可能性も少なくありません。

 

そのため営業権の評価は慎重になる必要があります。事前に公認会計士などの専門家に相談するようにしましょう。

「個人」で事業買収するときはどうする?

最近、個人で事業買収してオーナーとして不労所得を得たいという方も増えてきました。個人で事業買収するときはファイナンスの関係上、あまり大きな金額の資金調達は難しいでしょう。また、いきなり大きい規模の事業を買収するにはリスクが大きいのもあり、予算としては500万円が1つの目安といえます。

 

小規模の事業買収案件は、目安500万円以下としたM&Aマッチングサイトを活用して案件探すといいでしょう。初期費用などほとんどかからないので、費用面のメリットが大きいです。また、実際に契約となった時に、アドバイスをもらえることができるので、安心です。

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「M&A INFO」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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