●米大統領選挙が本格的にスタート、アイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙に注目。
●民主党候補者はバイデン氏、サンダース氏、ウォーレン氏、ブティジェッジ氏の4候補にほぼ絞られる。
●リベラル派同士のサンダース氏とウォーレン氏の戦いが長期化した場合バイデン氏に有利な展開も。
米大統領選挙が本格的にスタート、アイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙に注目
2020年の米大統領選挙は、2月3日のアイオワ州党員集会を皮切りに、本格的にスタートします(図表1)。民主党、共和党の大統領候補は、党の全国大会において、有権者の代理人となる「代議員」の投票で決まります。その代議員を選ぶのが、「予備選挙」と「党員集会」です。予備選挙では、通常の選挙と同様、投票所で秘密投票が実施され、党員集会では、有権者が公民館などに集まり、投票や話し合いで得票数が集計されます。
米大統領選挙では、伝統的にアイオワ州が最初に党員集会を開き、続いてニューハンプシャー州が予備選挙を実施します。過去、この2州で勝利できないまま大統領候補の指名を得たケースはほぼありません。そのため、序盤2州の結果は、市場の関心も高く、また、各候補者にとっても、ここで勝利できれば注目度が一気に増すことから、重要な戦いとなります。
民主党候補者はバイデン氏、サンダース氏、ウォーレン氏、ブティジェッジ氏の4候補にほぼ絞られる
共和党では、トランプ米大統領が候補の指名を受けることがほぼ確実な見通しです。これに対し、民主党では多数が立候補する混戦となっていましたが、ここにきて、バイデン前副大統領、サンダース上院議員、ウォーレン上院議員、ブティジェッジ前サウスベンド市長の4名にほぼ絞られてきています。ただ、ブルームバーグ元ニューヨーク市長の動向も引き続き注目されています。
各候補の主な主張は図表2の通りです。サンダース氏、ウォーレン氏はともに、国民皆保険制度の導入や、富裕層への増税などを政策に掲げ、リベラル路線を打ち出しています。一方、バイデン氏は、国民に増税を強いる国民皆保険には反対の立場であり、また、国際的な同盟関係を重視するなど、穏健な中道路線を唱えています。ブティジェッジ氏は、公的保険の拡充や外交政策の見直しなど、中道リベラルの路線です。
リベラル派同士のサンダース氏とウォーレン氏の戦いが長期化した場合バイデン氏に有利な展開も
足元では、サンダース氏が急激な追い上げにより支持率を伸ばしており、アイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙で連勝する可能性が高まっています。サンダース氏は、民主社会主義を標榜するリベラル派(ウォーレン氏は資本主義を標榜するリベラル派)です。そのため、若年層に人気はあるものの、幅広い層に支持が広がりにくく、序盤2州以降の州では、依然としてバイデン氏の支持率が高い状況です。
ブティジェッジ氏は支持率が伸び悩んでおり、序盤で善戦して勢いをつけられなければ、その後は苦戦が予想されます。なお、民主党候補は、予備選挙と党員集会が集中する3月3日の「スーパーチューズデー」で、かなり絞り込まれると思われます。この時点でも候補が固まらず、リベラル派同士のサンダース氏とウォーレン氏の戦いが続いていれば、リベラル派の票が割れて共倒れとなり、中道派のバイデン氏に有利な展開となることも考えられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年「米大統領選挙」開幕…トランプ氏の対抗馬は誰に!?』を参照)。
(2020年2月3日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト