痴漢冤罪の恐怖…咄嗟の「すみません。」で破滅する日本人男性

電車通勤のビジネスマンたちが恐れてやまない「痴漢冤罪」…。痴漢は許されない卑劣な犯罪ですが、何もしていないのに嫌疑をかけられたらたまりません。もし電車内で突然声を上げられ、駅員や警察に突き出されてしまったら、どうしたらいいのでしょうか。本記事は、弁護士が痴漢という犯罪の逮捕の流れとともに、冤罪をかけられた場合の対処法を明快に解説します。

冤罪でも敗訴確実…満員電車は男性の自己防衛策が必須

日本の刑事裁判の有罪率は99.9%と非常に高く、痴漢事件も例外ではありません。たとえ痴漢冤罪で逮捕され、無罪を主張し続けたとしても、一度起訴されてしまうと、状況を覆すことは非常に難しいのです。どんなに自分がやっていないことを叫び続けても誰も信じてくれない。怖い話ですよね。

 

毎日朝晩降りかかってくる通勤の満員電車、特に休みの日の前日は、連日溜まった疲れで早く帰りたいという一心で電車に乗ってしまいがちです。しかし、痴漢冤罪の疑いをかけられないようにするためにも、電車に乗る時には特に注意する必要があります。

 

電車内は、人との距離が近くなり、密着せざるを得ない場面にも遭遇する可能性が非常に高いです。そのため、意図しないところで女性に勘違いされてしまい、痴漢と疑われてしまう可能性もあるのです。前後左右に女性がいる位置で立たない。これが出来るのであれば何よりも最強ですが、事実毎回そのような状況で電車に乗ることはまず不可能でしょう。では、どのように対策すればいいのでしょうか。

 

一番確実な方法は、「両手を周囲から見える位置に置いておく」ことです。

 

頑張るお父さんの応援歌とされているFUNKY MONKEY BABYSの「ヒーロー」という歌の歌詞には、“満員電車のバンザイはギブアップじゃない冤罪対策”とありますが、そのとおり、これはしっかりと冤罪対策となります。

 

もし、万が一痴漢の容疑をかけられた場合でも、同乗していた周りの人が、両手の位置から痴漢を出来る状況になかったことを証言してくれるかもしれません。

 

なお、リュックであれば、電車内ではマナーとして前に背負うかたちになると思いますので、リュックの上に手を置いておくのも良いと思いますが、手提げタイプのバッグであれば、腕にとおして持つか、もしくは網棚へ置くのも良いでしょう。

 

咄嗟の「すみません。」で身を滅ぼす

「満員電車で前を立つ女性が、急に後ろを振り返って睨んできた。」

このようなケースの場合、あなたならどのように対処しますか?

 

“何か荷物が当たっていたのかな。”

“満員電車で後ろから押されていると感じてイラっとしたのかな。”

“もしかして足を踏んでしまったのかもしれない。”

 

思わず「すみません。」と言ってしまいそうじゃないですか?

 

でももし、女性があなたに痴漢の疑いを持っている場合だとどうでしょう。ここで謝ることで、痴漢を認めたと思われてしまい、疑いが確信に変わってしまう可能性があるのです。

 

日本人は、相手の反応を見て、理由がわからなかったとしても咄嗟に謝ってしまう傾向があるため、何気なく「すみません。」と言ってしまいそうになりますが、この言葉が痴漢を認めた証拠だと主張されてしまうかもしれません。

冤罪の旨を大きな声で主張し、その場の会話を録音する

どんなに対策を施していたとしても、相手の勘違いや示談金を目的とした虚偽の申告等で痴漢冤罪の疑いをかけられてしまう可能性は十分にあります。急に「この人、痴漢です。」と叫ばれてしまった時、どのように対処するか、実は、ここでの対応の仕方が非常に重要なポイントとなるのです。

 

まずは、痴漢をしていないことをしっかり主張することです。周りが自分に注目している恥ずかしさに心が折れてしまいそうになると思いますが、この時目立ってでも痴漢をしていないことを主張し、周りの人に助けを求めることで、目撃していた人が証人となってくれるかもしれません。出来るだけ周りの人に聞こえる大きな声で痴漢をしていないことを主張しましょう。

 

次に、録音をすることです。この時に会話した内容があとで問題となった場合、たとえ相手の主張が事実と異なっていたとしても、痴漢をしたとされているこちらの主張を信じてもらえる可能性は非常に低いです。そのため、録音した音声は、冤罪を晴らすためにもとても大事な武器になります。

 

また、録音する際、相手の女性に、いつから触られていたか、どこを触られていたのか等痴漢をされた時の状況を細かく聞いていく中で、あからさまに自分と当てはまらない事実が出てきて誤解が解ける可能性もあるかもしれません。

 

堂々と録音する勇気がない場合は、相手に伝えずにこっそり録音しても法的に問題はありませんが、こそこそと携帯を使用していると、相手から証拠隠滅等何か企んでいるのではと誤解されかねないので注意しましょう。

 

後ろめたいことはしていないわけですし、自分を守るためにも相手に録音する旨をしっかりと伝えた上で、録音するのが一番良い方法でしょう。

 

次に目撃者を探すことです。当事者ではない第三者からの証言も冤罪を晴らすために大きな武器となります。

 

電車内で近くにいた人であれば、電車内の状況や相手とこちらの様子等で痴漢出来る状況になかったことを証言してくれるかもしれませんし、本当に女性が痴漢をされていた場合、痴漢していた真犯人を見ていた人が証言してくれるかもしれません。

 

仮にその時目撃者を見つけられなかったとしても、特に通勤中に痴漢を疑われた場合は、毎日同じ時刻に同じ車両、同じ立ち位置で乗る人も多いと思いますので、後日目撃者が見つかる可能性も十分にあります。

 

目撃者を募るためにも、日頃から自分が何号車の何番目のドアのどこらへんに立っているかを把握して乗ることも重要でしょう。

「逃亡」せず、仕事や用事がある旨を伝えてから去る

痴漢事件で、深刻な問題となっているのが、痴漢を疑われた人が線路を逃走してしまうケースです。

 

東急田園都市線青葉台駅では、2017年5月15日、痴漢を疑われた男性がホームに飛び降りて電車にはねられてしまった死亡事故も発生しています。

 

確かに、痴漢をしていないにもかかわらず、急に疑いをかけられ、頭の中はパニックになってしまうでしょう。どれだけ痴漢をしていないことを主張したとしても誰も信じてくれず、逮捕、拘留の果てに起訴され、挙句の果てに前科がついてしまった場合、会社を解雇されてしまうかもしれない。家族を失うかもしれない。自分が今まで築き上げてきた人生が一瞬で終わってしまう。と考えると、とにかく逃げなければという思考になってしまっても無理はありません。

 

しかし、今後の人生を悲観して、自殺や飛び降り等の事故で死んでしまっては、冤罪を晴らせたとしても後の祭りになってしまいます。

 

また、線路には高圧電流が流れている可能性もあり、非常に危険な上、線路を逃走することによって、逮捕された際に、「威力業務妨害」や「従来危険罪」などの罪にも問われることとなってしまいます。何より、逃走したことによって、疑いの目はさらに強くなるでしょうし、逮捕されると長期間身柄を拘束されてしまう可能性が高まります。

 

この場合、逃亡するのではなく、仕事や用事があることをしっかりと伝えた上で立ち去ることが一番の方法です。もちろん容易には立ち去れないと思いますが、事件の現場をおさえて逮捕をする現行犯逮捕に比べて、通常逮捕は、警察も十分な確証がないと逮捕へ踏み切れません。そのため、慎重に捜査をしてくれる可能性が高まり、冤罪での逮捕を逃れられる可能性が非常に高くなります。

 

なお、「冤罪なのであれば、名刺を渡したり、運転免許証の写真を撮らせたり、自分の身分を明かすことが大事だ。」という弁護士もいます。これは、逃げる可能性が高いものを捕まえることが現行犯逮捕の目的であるからです。

 

しかし、ある弁護士は、「身分を明かすことで、仮に警察が逮捕状を請求した場合、身柄を拘束されてしまう可能性があり、なおかつ何らかのかたちでマスコミに情報が漏れてしまうと、実名報道される可能性もあるため、身分を明かすべきではない。」と言います。

 

立ち去る上で、相手に自分の身分を明かすか否か。この問題は弁護士の中でも賛否両論がわかれます。

 

正直この問題に関しては、一概にどちらが正解とは言えません。その場の状況によって判断するのが一番良いと思いますので、その場で弁護士に相談して判断を仰ぐのも一つの手でしょう。

冤罪発生時の対処が重要だからこそ、弁護士を頼る

痴漢の冤罪事件は、疑いをかけられた時にどのように対応するかで、その後の状況が大きく変わってくる可能性が十分にあります。

 

早い段階で弁護士に相談することで、その場の状況の対処方法について弁護士に判断を仰ぐことが出来ますし、疑いを晴らすために、目撃者を募り、多方面から証拠を集めることが可能となります。また、任意の取調べでは弁護士が同伴することも可能ですので、取調室の中までは入れないものの、扉のすぐ外で待機しておくことが出来ます。

 

さらに、逮捕され拘束されてしまった場合、面会が出来るのは弁護士だけとなってしまいます。長い取り調べを受ける中で、やっていないことを主張しても信じてもらえない日々が続き、いくら強い意思を持っていたとしても、思わず心が折れてしまいそうになるでしょう。

 

そんな中、弁護士が日々接見(面会)に行き、取り調べの状況についてやその他他愛ないことまで話を聞くことで、少しでも気持ちが安らぐかもしれませんし、取り調べを受けるにあたってのアドバイスをすることも出来ます。

 

冤罪事件は、戦うにあたり長い時間を要する上に、根気と冤罪を晴らしたいという強い気持ちが必要不可欠です。長い戦いを乗り切るために、弁護士はセコンドとしてお手伝いできる強い味方となるのです。

 

 

稲葉セントラル法律事務所

稲葉 治久 弁護士

 

稲葉セントラル法律事務所
東京弁護士会 代表弁護士

1976年茨城県生まれ。江戸川学園取手高校卒業。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。青年海外協力隊員としてアフリカ・ジンバブエでボランティア活動。関東学院大学法科大学院卒業。平成24年弁護士登録都内大手法律事務所勤務。平成28年7月より稲葉セントラル法律事務所を開設。メディアへの出演・法律監修多数。

著者紹介

連載ビジネスマンが知っておきたい身近な法律の基礎知識

本記事は、稲葉セントラル法律事務所のウェブサイトから転載したものです。

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