原油価格は下落
米イラン衝突の影響は一時的
■北米の代表的な原油価格であるWTIは、1月初旬は米国とイランの衝突を背景に、一時1バレル=65米ドル台まで上昇しましたが、戦争が回避されたため同60米ドルを割り込み下落しました。その後も供給過剰懸念などから同58米ドル近辺で推移しました。
■米国とイランの対立が緊迫化し、昨年末から空爆など軍事力を伴う行動が頻発していました。しかし8日には、イランのザリフ外相が「相応の措置を完了した」とし、トランプ米大統領の声明も戦争を回避することを示唆するなど全面衝突は避けられました。
OPEC非加盟国の供給増を加盟国減産で相殺
■1月15日に公表された石油輸出国機構(OPEC)月報の1月号によると、2019年の実績見込みでは、OPECの減産が奏功し、日量80万バレル程度の需要超過となりました。
■2020年の世界の原油需要は日量1億100万バレルと予想されています。米国などOPEC非加盟国の供給増が見込まれており、需給の均衡にはOPEC加盟国で2,947万バレルの供給が必要と見られます。昨年12月には協調減産の拡大が決定されており、減産が遵守されれば2020年は小幅ながら需要が供給を上回りそうです。
需給は緩和気味ながら地政学リスクに注意
■世界経済は製造業が底打ちしつつあり回復局面に向かうことが見込まれていますが、地域間等でばらつきが見られ、その動きは緩慢です。そのような中、原油価格はOPEC非加盟国の供給増などによる需給緩和と、OPECなどの減産や地政学リスクの高まりによる供給不安の綱引きになると見られます。
■米国とイランの対立激化は一旦、小康状態となりましたが、偶発的な武力衝突の可能性がなくなったわけではありません。足元の原油価格はおおむね落ち着いた動きとなっていますが、米国とイラン対立の余波により原油価格には上振れリスクが高まっているため注意が必要です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年1月、原油価格は米イラン全面衝突回避で下落』を参照)。
(2020年1月22日)
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