グローバルに連動する株価暴落のリスク
アベノミクスと日銀の金融緩和政策がスタートして以来、株価は上昇傾向が続き、2015年4月には15年ぶりに日経平均株価が2万円を超え、大きな話題になりました。しかし株高が果たしてこの先も続くのか、株式市場が好調な状態を保ち続けるのかはわかりません。
実際、同年の7月には、ギリシャの債務危機や中国の株安などが原因となって、日経平均株価が一日で600円以上も下落し、投資家の間では株式市場の先行きを懸念する声があがりました。
また、中国の成長率は頭打ちとなっており、国内の政治・社会に様々な矛盾・問題を抱えていることから、いつ経済が崩壊しても不思議ではないとの指摘もあります。ヨーロッパの債務危機が今後さらに深刻化し、その上、中国経済が混乱すれば、日本の株式市場が壊滅的な打撃を被ることもないとはいえません。
万が一、そのような危機的な事態に陥れば、投資家、ことに巨額の資金を運用している銀行や生命保険、年金基金などの機関投資家は計り知れないダメージを受けることになるでしょう。市場環境の変動がもたらす暴落のリスクは、今やグローバルに連動しており、資金運用には常に大きな不安とストレスがつきまとうことになります。
金融市場の影響による価格変動が少ない私募リート
では、そのような不安やストレスを少しでも軽減させ、安定したリターンを得ながら、安心してリスク分散できる、従来のポートフォリオに加えるべき新たな金融商品はないのでしょうか。筆者は国内外の金融機関で株式や債券などの資金証券関連の業務にかかわり、現在は「私募REIT」(以下、私募リート)の組成と運用を手がける会社の代表を務めています。
これまでの経験から断言できるのは、私募リートこそ安定したリターンを得ながらリスク分散できる金融商品だということです。リスク分散の商品として「J–REIT」(以下、Jリート)をその候補にあげる人もいるかもしれませんが、Jリートは上場リートであるがゆえに株式同様、マーケットの影響を受けないわけではありません。
一方の私募リートはJリートとは異なり、非公開に投資家から集めた資金で住宅、オフィス、倉庫などの物件を取得・運用し、賃料収入などを分配する不動産投資信託です。非上場なので、金融市場の影響によって敏感に価格が上下動することはありません。
したがって、万が一、リーマン・ショックのような不測の事態が起こったとしても、株式のように市場に連動して暴落することはないのです。しかも、配当利回りは平均で4~5%程度になります。安心して長く持ち続けたい、安定したリターンを得たいという機関投資家にとって、私募リートはまさに理想的といえる金融商品なのです。
私募リートは日本ではまだまだなじみが薄いかもしれませんが、そのマーケットは急速に拡大しています。本数も着々と増えており、商品の選択肢もどんどん広がっています。さらに言えば、私募リートは投資家だけでなく、これを活用したい企業側にも大きな成長の機会をもたらす、新しい資金調達術なのです。