香港<ピックアップマーケット>
抗議デモで経済に深刻な影響。デモ収束、社会正常化には要時間
【株式市場】抗議デモ収束見えず不安定な展開
区議会議員選挙における民主派の圧勝を経て、相場も落ち着きを取り戻しつつあるが、民主化を要求する香港市民(デモ隊)と香港・中国政府のスタンスの隔たりは依然解消されない。再度抗議デモが激化するリスクを考えれば、当面、株価バリュエーションの拡大は想定しづらい。経済打撃の大きい香港域内の売上構成が低く、中国本土に収益基盤を有する企業への選別投資が望ましいだろう。
【社会情勢】区議会選挙で民主派が圧勝
香港では11月24日、予定通り区議会選挙が行われ、選挙対象全452議席のうち民主派が388議席(85%)を獲得し、前回2015年の126議席(29%)から大幅に議席を増加させた。区議会選挙は小選挙区制であり、香港の選挙の中では民意が反映されやすいとされており、今回の選挙結果は、香港市民が政府に対して否定的な見解を突き付ける形となった。
政府はデモ隊に譲歩せず
一方、キャリー・ラム行政長官は26日、区議会選挙の結果を受けて、有権者の政府への不満を認めながらもデモ隊の残り4つの要求に対して譲歩する考えがないことを示した。同長官は11月6日に北京で韓正副首相と会談し、4中全会での決定事項に基づき中国共産党が香港統治を強化する方針について直接指示されたとみられる。今後、民主化路線を主張する香港市民が政府の対応に不満を感じ、再び対決姿勢に転じる可能性は否定できない。一連のデモ活動に参加したことで起訴されたメンバーが有罪判決を受ける事態になると、暴力的な活動も含めてデモの動きが活発になりやすい。社会不安が継続するリスクは依然として高そうだ。
ベトナム<ピックアップマーケット>
安定成長見通しで海外資金の流入継続を見込む
【株式市場】良好なファンダメンタルズを背景に上昇を見込む
ファンダメンタルズが良好な割にバリュエーションに割高感はなく、下値を切り上げていく展開を予想する。米中貿易摩擦の中、輸出が着実に伸び高成長を実現している。他国に追随した予防的な利下げも企業業績にプラスに働こう。インフレも抑制され、通貨ドンは安定している。中期的には新興国市場への格上げ観測もあり、2018年に記録した高値を目指す展開が期待される。
【為替動向】ドンの安定性が高まる
従来、中国人民元との相関が高かったベトナムドンだが、8月以降の人民元安に追随することなく、安定的に推移している。低インフレ、経常収支黒字などベトナムドンが評価される要因が多く、ベトナムへの資金流入が継続している。人民元の動向には注意が必要だが、経常収支黒字、低いインフレ率、比較的高い経済成長率など、ベトナムの良好なファンダメンタルズがドンの安定性に寄与する動きが続くと予想する。
【マクロ経済動向】豚肉価格上昇で短期的にはインフレ率が加速
11月の消費者物価は前年同月比+3.5%と、引き続き政府目標の4%を下回ったものの、2019年では初めて3%台へ加速した。現地メディア報道によると、ASF(アフリカ豚コレラ)の蔓延で豚肉価格が高騰したためである。1月下旬のテト(春節)を迎えるにあたり、短期的には期待インフレ率上昇に対する警戒が必要だ。仮に期待インフレ率が上昇すれば、一時的に景気に抑制的な圧力がかかる可能性がある。
インドネシア<ピックアップマーケット>
財政健全化、ルピア堅調、金融資産は上昇へ
【株式市場】追加利下げ期待で堅調な展開
一次産品価格の低迷や、業績悪化見通しから11月の相場は下落した。一方でルピアは安定しており、景気テコ入れのための追加利下げが可能な環境にある。財政拡大による短期的な景気刺激策に対する期待は後退しているが、財政健全化は長期金利、ルピアの安定を通じ金融政策の柔軟性を高めるため、中長期的に株式市場にプラスに働くとみられる。株価バリュエーションは適正水準にあり、堅調な相場展開を予想する。
【為替・国債利回り動向】財政規律の強化でルピアは安定化
中銀は11月21日の金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を5.00%で据え置いたが、預金準備率の引き下げ(6.00⇒5.50%、2020年1月2日付)を決定した。さらにペリー・ワリジヨ中銀総裁は追加緩和の余地を示唆した。政府は2020年度予算において、公共投資、補助金の削減を通じて、財政赤字のGDP比を縮小させる方針を決定しており、景気対策は財政政策から金融政策にシフトしている。利下げ観測が続く状況下、7%近辺の国債利回りは魅力的に映りやすい。外国人投資家がキャピタルゲイン狙いで国債に投資すれば、ルピア高と国債利回り低下の好循環が期待できる。インドネシア国債の外国人投資家の保有比率は約40%と、アジア域内では最も高く、実際、国債利回りとルピアには明確な相関関係がある。一方、中銀はルピア安が進展する場合には金融緩和に慎重になる傾向があり、米ドルが予想外に上昇する局面では、金融緩和余地が縮小するリスクには留意したい。