タイ<ピックアップマーケット>
バーツ高が続き、業績回復は遅れる見通し
【株式市場】業績不安、割高な株価バリュエーション
バーツの高止まり、企業業績見通しの悪化が続いている。追加的な財政出動や金融緩和はプラスだが、金利水準は既に低く、景気刺激効果はそう大きくない。経常黒字が盤石なため、輸出企業業績にマイナス影響を及ぼすタイバーツ高は修正されにくい。株価バリュエーションも割高で、他市場と比較して投資魅力度は劣る。タイを訪れる海外旅行者数が回復基調に入った点はプラスで、関連企業への投資妙味が高そうだ。
【為替動向】バーツ高圧力が続く
11月のタイバーツ対米ドルレートは30.1~30.4の狭いレンジで高止まった。バーツ高の背景には、経常収支黒字とインフレ率の低位安定に対する高い評価がある。中国からタイへの生産ライン移管など中長期的な動きも踏まえると、バーツ高圧力が続きそうだ。また、輸出企業にマイナスとなるバーツ高の抑制を意図して中銀が利下げに踏み切ったことから、市場参加者の中には中銀に一段の利下げを促すためにバーツを買い進む動きも出ているようだ。
【マクロ経済動向】景気下振れリスクが高まる
タイへの観光客数は10月に前年同月比+12.5%と、10月の同+10.1%から加速した。2018年7月にプーケット島でボート事故が発生したことによるベース効果に加え、香港デモの影響で中国人観光客が訪問先をタイに変更した影響とみられる。一方、自動車産業を中心に製造業のサイクルは下向きにあり、全体としては景気下振れリスクが高まっている。政府は8月に続き11月にも景気支援策を発表しているが、景気テコ入れにはデレバレッジ政策の緩和が必要となろう。
主要アジア各国・地域株価指数推移
主要アジア各国・地域10年国債利回り推移
主要アジア各国・地域為替レート(対米ドル)
※参照
各国の株価指数の名称は下記の通り。
●中国:上海総合指数、●香港:ハンセン指数、●韓国:韓国総合株価指数、●台湾:台湾加権指数、●インドネシア:ジャカルタ総合指数、●マレーシア:クアラルンプール総合指数、●タイ:SET指数、●ベトナム:ベトナムVN指数、●シンガポール:シンガポールST指数、●フィリピン:フィリピン総合指数、●インド:SENSEX指数、●オーストラリア:ASX200指数
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『香港抗議デモ、依然収束見えず…再び対決姿勢のリスクも』を参照)。
(2019年12月5日)