サラリーマン大家が目指すべき「5棟10室基準」とは?

副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できている人は少ないのが現状です。本連載では、サラリーマンの節税相談で定評のある大平宏税理士事務所の中山慎吾税理士が、不動産投資のメリットの一つである節税効果について解説していきます。今回は、「事業的規模」と「業務的規模」について説明します。

不動産はたくさん持っているほうが、税法上有利

税金というのは基本的に担税力がある人や会社が多く納めるように制度設計がされています。個人に対する所得税の累進課税制度がその代表格で所得金額に応じて5%~45%という形で、多く稼ぐ人は高い税率を、稼ぎが多くない人には低い税率が適用されるようになっています。

 

そのような税金の基本的な考え方からからすると、不動産をいっぱい所有している人と少ししか持っていない人とどちらが税法上有利かと考えると、当然不動産を少ししか持っていない人の方が有利なようにできているはずです。

 

所有する不動産の規模で、税率はどう変わる?
所有する不動産の規模で、税率はどう変わる?

 

しかし不動産所得に関しては、不動産を多く所有している人のほうが税法上有利なように制度設計されているのが大きな特徴です。それは「事業的規模と業務的規模」という区分で、不動産をたくさんもっていると「事業的規模」、少ししか持っていないと「業務的規模」ということになり、「事業的規模」のほうが税務上有利な点がたくさんあるのです。

 

そもそも多く所有しているかどうかの判定は、『「社会通念上」で区分せよ』となっていますが、実務的には以下のような形式基準で判定することが多いです。

 

・建物

貸間、賃貸住宅については、貸与できる独立した室数がおおむね10住戸以上。独立家屋については、おおむね5棟以上であること

 

・土地

土地の貸付件数が5で貸室1相当

 

建物については「5棟10室基準」と呼ばれ、アパートやマンションであれば10室以上、一軒家であれば5棟以上持っていれば、「事業的規模」とみなされることになります。

 

土地の場合は、たとえば駐車場の貸付件数が50件以上だと「事業的規模」となります。

 

この「事業的規模」を満たすのと、それを満たせない「業務的規模」の場合とを比べると、以下のような点で税務上有利な点が生まれてきます。

 

[図表1]事業的規模と業務的規模の違い

 

主だったところで大きなところは、「事業的規模」になると青色事業専従者や白色事業専従者という自分の家族に不動産事業を手伝ってもらう代わりに給与を支払うことができるようになるということです。

 

たとえば年間不動産所得が5000万円もあるようなスーパー大家さんの場合、所得4000万円超の部分は所得税だけで45%以上の税金を払わなければなりません。しかし奥様に給料として払う妥当性がある場合は、たとえば奥様への給与を2500万円ということにして、所得の分散を図り、世帯単位で考えれば手取り金額をアップさせることが可能となります。

 

これは青色申告と比較して面倒な帳簿処理を要しない白色申告でも配偶者へは年間で最高86万円の給与を支払うことが出来ます。このように配偶者を青色事業専従者や白色事業専従者にした場合、配偶者控除、配偶者特別控除の対象から除外されるのですが、2018年から高額所得者(給与所得者の場合1220万円以上)は配偶者控除が使えないのでこちらの方を活用するといった節税方法が「事業的規模」の場合は使えます。

 

また、複雑な帳簿処理を要求される青色申告で「青色申告特別控除」を活用する場合も「事業的規模」になっていれば65万円の控除が使えるのに対し、それに達していない「業務的規模」の場合は同じように記帳をしても10万円しか適用になりません。

災害で損失が……事業的規模なら必要経費は全額対象

最近頻発している災害等の被害に所有している賃貸物件があった場合なども、事業的規模と業務的規模では扱いが異なります。

 

災害等の理由により賃貸に出している不動産に損失が出たとき、「事業的規模」なら資産損失の必要経費は全額が対象となり他の所得と損益を通算できる「損益通算」の利用もできますが、「業務的規模」ではいくら資産損失が出てもその限度額は不動産所得の範囲内となります。

 

その損失の原因が災害による場合は、この不動産所得における規定とは別に雑損控除を適用することにより「業務的規模」の場合でも税制上の救済を受けられるのですが、たとえば立替をすることによって生じた資産損失の場合、「業務的規模」の場合は損益通算ができないという事態になります。

 

たとえば、木造アパートを取り壊して鉄筋コンクリート造のマンションの建て替え中で、下記のような状況の場合、

 

・賃貸料収入 120万円

・必要経費 200万円(取壊しによる除却損失の金額100万円及び取壊し費用50万円含む)

 

この木造アパートが10室を超えていた場合、120万円-200万円=▲80万円が他の所得と損益通算できることになります。一方、この木造アパートの部屋数が8部屋だった場合は必要経費に算入できる取壊しによる除却損失100万円のうち20万円しか必要経費とならないのでマイナスは生じず、他の所得と損益通算できる金額はゼロということになります。

 

大家として特別に不動産投資に力を入れていきたいとなった方、まずはこの「事業的規模」を満たすか満たさないかということを目標としても良いのではないかと思います。

 

大平宏税理士事務所 税理士

1978年生まれ、神奈川県横浜市出身。明治大学大学院グローバルビジネス専門科修了、MBA取得。大学卒業後、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)に入社、日本橋支店にて資産運用コンサルティング課に従事。
その後、「お客様の資産形成を長期的にサポートするには、証券運用だけでなく、複合的なファイナンシャルプランニングを実践する業態を作り出す必要がある」という思いから2007年に個人向け資産運用コンサルティング会社を共同で創業。CFP(R)の資格を活かし、お客様の資産運用のアドバイザーとして現場に立ちながら、ベンチャー企業の共同創業者として会社の事業規模を拡大。現在は税理士として個人向けの税務を中心に顧客の資産形成をサポートしている。

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著者紹介

連載賢い副業で資産を増やす「サラリーマン大家」節税のコツ

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