消えた約480億円分の暗号資産、ロシア政府が関与か
ロシアの暗号資産取引所『WEX』から消えた約480億円分の価値に及ぶ暗号資産がロシアの諜報機関FSBに送られた可能性が浮上している。BBCロシアが報じた。
暗号資産取引所BTC-eの共同設立者Alexander Vinnik氏が、過去6年間に約480億円分のビットコインを盗んだとして、詐欺およびマネーロンダリングを行った容疑でカザフスタンの捜査当局に起訴されていた。喪失した資産の一部に該当する200万円分が、カザフスタン人の顧客によるものだったからだ。
BBCの調査によれば、Vinnik氏を当局が捜査する中で、詐欺で失われたとされるWEXの顧客資産がFSBへと渡った可能性があがったという。具体的には、BBCが入手した音声ファイルによれば、事件の背後に前FSB職員Anton Nemkin氏、BTC-eの共同設立者Aleksey Bilyuchenko氏、WEXの売却を指揮したKonstantin Malofeyev氏の存在があったとの疑念が判明。
BTC-eは2011年7月から2017年12月25日まで稼働していた暗号資産の取引プラットフォームで、米ドル・ルーブル・ユーロ建で暗号資産の購入を提供していた。ビットコイン、ライトコインなどを取り扱っていた。なお日本のMt.GOX事件で盗まれた資産の資金洗浄に関与したとして、米政府によりサイト閉鎖に追い込まれた。
2018年に開かれたビジネス会議において、Anton氏がBilyuchenko氏にWEXの資産が入ったコールドウォレットを受け渡した後、Bilyuchenko氏はモスクワにあるFSBに向かい、同機関の職員からWEXの運営状況について話し合ったとされている。
その後、Anton氏はBilyuchenko氏にWEXの顧客資産が一部含まれたコールドウォレットの中身約480億円分をFSBのファンドに送金するよう説得。Bilyuchenko氏は、それに応じたという。その資産の内訳は30,000BTCと700,000LTCであったとされている。
当初は一連のインシデントは詐欺事件だと見られていたが、捜査を進めるなかで、ロシアの政府機関も絡んだ政治的かつ組織的な犯行であったとの見方が強まってきた。そのためか、BTC-eはFinCENへの登録は行わず、資金洗浄対策や不審な取引に関する報告も一切行なっていなかった。
※本記事は、2019年11月16日に「CoinPost」で公開されたものです。