財産の承継にあたっては、やはり被相続人の意思を生かしたい・・・。そんな方にとって「生前贈与」は大きな意味を持つ解決策となります。今回は、「生前贈与」の活用による節税効果と成功例を見ていきましょう。

被相続人が存命のうちに家族に財産を贈る「生前贈与」

高齢になり、相続のことを意識する機会が多い方にとって、生前贈与は大きな意味のある解決策です。節税のためだけでなく、被相続人の意思を生かした財産の承継を行うことができます。

 

筆者がご相談を受けたなかにも、そんな生前贈与の大成功例といえそうなケースがありますので紹介しましょう。

 

70代のGさんには持病があり、かかりつけの医師から「80歳くらいまでの寿命では」と宣告されていました。Gさんは資産家で、大きな青空駐車場などをお持ちだったため、相続のことが心配でなりません。

 

「納税資金にできる預貯金などは少ないが、なんとかスムーズに相続できるよう準備しておきたい」というご希望を受け、私たちがまずすすめたのは生前贈与でした。

 

生前贈与とは、その名の通り、被相続人が存命のうちに、妻や子ども、孫などに財産を贈ることです。贈与された分の財産は被相続人のものではなくなるので、原則的には相続財産とみなされなくなります。つまり贈与すれば相続財産が減り、相続税も減るのです。

「生前贈与」によって5252万円の節税に成功した事例

Gさんのケースでは、妻、長男夫婦、孫1人の計4人に対して贈与を行いました。懸案だった青空駐車場の所有権を毎年1人あたり300万円ずつ贈与し、贈与税として1人につき年間19万円を納税したのです。

 

幸い、Gさんは病気治療の努力もあり、享年90歳という長寿を全うされました。87歳まで13年間にもわたって贈与を行うことができたので、節税効果は次のようになりました。

 

【贈与された総額】

1年間の贈与額 300万円×4人=1200万円

贈与の総額 1200万円×13年間=1億5600万円

 

【支払った贈与税】

1人1年間19万円×4人=76万円

贈与税の総額 76万円×13年間=988万円

 

【負担減となった相続税】

被相続人の相続税の上積適用税率は40%です。

1億5600万円×40%=6240万円

 

贈与税分を差し引いて、下記のようになります。

6240万円−988万円=5252万円

 

13年間にわたって毎年76万円の贈与税を支払うことによって、相続税を5252万円も節税できたのです。大きな減額に成功したため、相続の際には、なんとか残された資金で相続税の納税を完了できました。

 

生前贈与は「究極の相続税対策」と呼ばれることがあります。あまり費用をかけずに相続税を軽減できる上、贈与してもらった人たちからは感謝されることにもなるためです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

貝原 富美子・澤田 美智

幻冬舎メディアコンサルティング

相続において、トラブルになりやすい二大財産である「不動産」と「自社株」。 税理士として長年、不動産・自社株の相続を専門的に解決してきた著者だからこそいえる、実際にあった事例を交えわかりやすく解決策を提示します…

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