四十肩・五十肩を防ぐ!画像で紹介「気軽にできるストレッチ」

四十肩・五十肩の発症率は70%を超え、もはや国民病と言っても過言ではありません。 気づいたらガッチガチ…という事態にならないためにも、日頃からのケアを心がけましょう。本記事では、麻生総合病院スポーツ整形外科部長の鈴木一秀氏の書籍『「肩」に痛みを感じたら読む本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、画像を交えて解説します。

タイプに合った適切な治療やケアで回復を早める

四十肩・五十肩は、加齢に加えて日常生活の何気ない動作や生活習慣の積み重ねによっても引き起こされています。最初は肩凝りや違和感、こわばりといった前兆の時期から始まり、痛みの時期、拘縮の時期を経て回復に向かいますが、それぞれの時期に適切なケアをすることで早く回復させることができます。

 

しかし、自己判断で間違ったケアをしたり、必要な治療を受けずにいると症状を悪化させるばかりか、治るまでに長い時間を要します。

 

ここでは、ケアや治療法を紹介していきますので、ご自分の当てはまったタイプでは何をすべきなのか正しい知識を得たうえで、適切な治療を受けるようにしましょう。それが、いまあなたが抱えているつらい症状を取り去ることにもつながります。

「突然痛くなった」は本当?四十肩・五十肩には前兆が

昨日までなんともなかったのに、今日になって肩の激しい痛みに襲われる四十肩・五十肩ですが、それまでには前兆というべき症状が現れていることが少なくありません。加齢による肩の組織の変性だけではなく、皆さんが何気なく行っている日常の動作や不良姿勢などの積み重ねが知らないうちに肩に負担をかけ続け、それが限界に達したときに痛みとなって爆発したわけで、ある日突然、肩が損傷したわけではないのです。

 

気づいていなくても、実は爆弾の時限装置が前兆というカウントダウンを始めた段階ですから、爆発しないように肩への負担を取り去ってリセットすることが重要です。まずは医療的な治療ではなく、不良姿勢を改善したり、日常生活の動作を見直すなど、セルフケアがポイントとなります。ここで気になる症状をきちんと改善することが、四十肩・五十肩の予防につながります。

 

◆姿勢が悪いと肩に負担をかける

 

自分の姿勢はわかりませんので、まず誰かに姿勢をチェックしてもらいましょう。立ち姿勢のとき、横から見て耳のライン、肩峰、股関節の骨(大転子)、膝、くるぶしが、上から下まで一直線になるのが良い姿勢です。頭が前に突き出て、耳と肩峰が肩の位置より前にきて背中が逆Cの字のように丸まり、骨盤が後ろに傾き、膝が少し曲がっていれば、これは典型的な「猫背」です。

 

これとは逆に、肩が後ろにいって反り腰になっている姿勢も、見た目は背筋が伸びて胸を張っていて良い姿勢に思われますが、実は骨盤が前に傾き、腰に負担をかける悪い姿勢です。

 

姿勢が悪いと「背筋を伸ばしなさい」というように、背骨や体幹の問題と思われがちです。しかし、下半身が体幹を支え、その上に肩があり頭部を支えているのですから、肩関節は下半身の影響を非常に受けやすい部分といえます。

 

実際に、正しい姿勢を維持するために、背中(脊柱起立筋)、お腹(腹直筋)、腰(腸腰筋)、お尻(大臀筋)、太ももの前(大腿四頭筋)、ふくらはぎ(下腿三頭筋)など、下半身の筋肉もたくさん働いています。これらの筋肉は「姿勢筋」とか、地球の重力に抵抗して体を支えているので「抗重力筋」ともいわれています。

 

中でも、加齢によって筋力が落ちやすいのが、脊柱起立筋、腸腰筋、大腿四頭筋などで、これらは大きな関節の可動域も維持している筋肉です。このように全身は筋肉によってつながり、姿勢を維持していますので、下半身の状態が肩関節にも影響が及んでくるのです。

 

例えば、姿勢の悪い人は、お尻や太もも、ふくらはぎの裏側の筋肉が硬くなっていて、立位体前屈をしたときに手が床まで届きません。また、太ももの裏の筋肉も硬くなっており、膝が軽く曲がった状態で歩いています。これは膝に負担をかけるため、膝痛を起こす原因にもなります。

 

こういう姿勢で歩いていると、膝を動かす筋肉の動きが小さくなり、ひいては足全体の動きも小さくなります。また、足首の運動も少なくなるため、血液を循環させる筋肉のポンプ作用も弱くなり、血行不良になりがちです。

 

肩凝りや腰痛、冷え性などの症状を訴える人の筋肉を見てみると、腹筋や背筋は健康な人と変わらないにもかかわらず、腰の深部にある大腰筋が衰えていることが多いのです。この大腰筋は、背骨と骨盤、下半身をつなぐ筋肉で、姿勢の維持や歩行に重要な働きをしています。大腰筋が弱くなると、骨盤は上半身の体重を支えきれなくなり、後ろへ倒れたり左右にゆがみ始めます。

 

そうなると、上半身は姿勢のバランスを取るために胸を前に倒すようになって肩も前に突き出します。その結果、背骨が弓なりに曲がるとともに骨盤が後ろに倒れてしまいます。こうして下半身のアンバランスを、上半身が調整して帳尻を合わせることで全身のバランスをとっています。

 

そして、骨盤は、上半身と骨盤をつないでいる腹直筋と脊柱起立筋、下半身と骨盤をつないでいる殿部筋群(お尻の筋肉)と内転筋(太ももの内側の筋肉)によって支えられています。つまり、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉が大腰筋であり、骨盤の傾きや背骨のバランスに大きく関わっているわけです。そのため、大腰筋が衰えると姿勢が保てなくなり、腰が丸くなり、背中も猫背になります。

 

ですから、膝や股関節など下半身に痛みがあるときにも猫背になりやすく、肩凝りになり、四十肩・五十肩を経験している人も少なくありません。したがって、肩に違和感やこわばり、肩凝りといった前兆を自覚している人は、体幹だけではなく、下半身の筋肉の衰えが影響している可能性もあります。肩甲骨や体幹を中心に、全身の筋肉のバランスも見ながらストレッチや筋力強化などで整えていくことが必要です。

ストレスからの「防衛本能」による肩こり

猫背や前屈みの姿勢は、胸の筋肉も硬くして呼吸にも悪影響を及ぼします。呼吸は肺で行っていますが、肺は自力で膨らんでいるわけではありません。肋間筋という胸の筋肉が縮んで肋骨を上方に引き上げ、横隔膜が下方に下がることで胸郭(肋骨で覆われている部分)が広がった結果、肋骨内の空間が膨らんで肺に空気が吸い込まれるしくみです。そして、肋間筋が弛んで肋骨が下がり、横隔膜が上がることで胸郭が縮み、肺の中の空気が押し出されて二酸化炭素が排出されます。

 

そのため、猫背になっていると腹部を圧迫した状態になり、胸郭が十分に広がらないことで呼吸が浅くなります。呼吸が浅いと全身に送る酸素量も少なくなり、各器官の機能も低下してしまいます。それを防ぐために体は、胸郭に付着している首と肩の筋肉(斜角筋群、胸鎖乳突筋など呼吸の補助筋)を使って呼気の量を補おうとします。しかし、補助筋に負担がかかることで、慢性的な首や肩の凝りが生じます。

 

人は、悩み事を抱えていたり、強いストレスを受けていると下を向いて姿勢が悪くなりがちです。そんなとき、無意識に〝ため息〟をついています。ため息をつくことで体の酸素不足を改善している、一種の防衛反応ともいわれています。人間は疲れてくると重力に対して体を支えることができなくなり、体の構造上、前へと倒れる傾向にあります。ましてや体の中で最も重い頭を一番上に乗せているのですから、必然的に前傾姿勢になってしまいます。

 

また、人はお腹や頭、あるいは膝が痛くなったときは、そこに手を当てて体を丸めてうずくまります。寒い日に外出したときも、体温の放出を防ぐためにコートの襟を立てて背中を丸くします。

 

このように、人は痛みや外部環境の変化、ストレスなどから身を守るために本能的に体を丸め、猫背の姿勢をとる習性があるようです。したがって、意識して胸郭を広げる運動を取り入れることも大切です。

日常生活は肩に負担をかける動作ばかり

悪い姿勢が肩に負担をかけていることがわかったところで、私たちの日常生活を見回してみると、文字を書いたり、書類を見たり、本を読んだり、パソコンを使うなどデスクワークのほとんどは、うつむいた姿勢です。家事にしても、台所で野菜を切ったり、洗い物をしたり、掃除機をかけたり、水まわりの清掃、アイロンかけなど、やはり前屈みになる動作ばかりです。

 

それに加えてIT社会の現代は、パソコンやスマホが仕事でもプライベートでも必需品になっています。屋内だけではなく、屋外にいてもメールが入りますからチェックをせざるを得ない状況にあります。

 

パソコンやスマホを操作するときは、腕が固定された状態で画面を凝視するために首が前に突き出て背中が丸くなってしまいます。この姿勢を長時間続けていると、重い頭を無理な姿勢で支えるために、首や肩の筋肉が緊張状態となって肩凝りの原因にもなります。

 

特に、スマホは片手で操作できる手軽さから、ソファーに寝ころびながら使用したり、食事中でも電車の中でも信号待ちをしているときでも、画面から目を離さない若い人を多く見かけます。駅のホームで電車を待っている人の立ち姿を見ていると、左右のどちらかの足に重心をかけて体が傾いた状態でスマホを見ているのですから、生理学的にもかなり無理な体勢といえます。

 

こうしたことから最近は、スマホによって首や肩に凝りや違和感、こわばりを訴える若い人が増えており、これを「スマホ肩」と呼んで問題にもなっています。ここに、四十肩・五十肩の低年齢化の要因があるようです。

 

ところが、悪い姿勢でも長く続けていると筋肉がその状態に慣れてクセになり、本人にとってはそれが正常でラクに感じるようになるのです。かえって正しい姿勢のほうが苦痛になります。これは、丸めておいたポスターを広げても丸まったままのように、体もクセがつくと元に戻りにくくなるということです。

 

このように、意識せずにいると一日の大半を、姿勢を崩したり肩に負担を強いる動作で過ごしていることになります。椅子に腰掛けたときは、背筋が伸びた状態で、股関節が90度、膝も90度に曲がっているのが良い姿勢です。しかし、これではパソコンに向かうと肘が浮いた状態で肩が上がり、腕も伸びた状態ですから、腕にも肩にも負担がかかります。

 

そこで、机に肘を乗せた状態でパソコンを打てば、腕の重みを感じず、また肩周辺の筋肉もリラックスし、肩にかかる負担を軽減することができます。日常生活において肩の筋肉はかなり緊張していますので、肩に負担のかからない体勢で作業することが大切です。

 

例えば、重い荷物を持つとか、台所でフライパンを持つ、掃除機をかけるなどの動作の際は、腕を伸ばして手先だけで行うのではなく、脇を締めて体を使うようにすることです。駐車場でチケットを取るときも、手が届かないと必死に腕を伸ばして取りがちですが、肩甲骨と体幹を意識するようにしましょう。また、長時間同じ姿勢でいるときは、適度に休憩をとって背筋を伸ばしたり、肩を回したり、胸を張ったりする運動をすることを心がけることが大切です。

 

正しい座り姿勢と悪い座り姿勢

 

〈肩甲骨を動かすストレッチ〉

 

次のストレッチは、硬くなっている僧帽筋を伸ばして緊張をほぐします。筋肉は30秒くらい持続的に伸ばすとほぐれるとされていますので、ゆっくり行うのがポイントです。その際、「イタ気持ちいい」と感じる程度に伸ばしましょう。

 

*もしも痛みを感じたときには、すぐに中止してください。特に首を後ろに倒したときに痺れを感じた場合は、神経を圧迫した恐れがありますので中止してください。無理をするのは逆効果になります。

 

① 首から肩をほぐす
② 胸郭を開く
③ 肩甲骨を回す
《体幹運動》 ① 脇腹を伸ばす
② 体感を伸ばすA
③ 体幹を伸ばすB

 

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長

肩治療のスペシャリスト。
医学博士。日本整形外科学会認定専門医。日本肩関節学会代議員。日本整形外科スポーツ医学会代議員。昭和大学藤が丘病院兼任講師。
専門分野はスポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術。
1990年昭和大学医学部卒業。
現在は、同病院で勤務医として活躍するだけでなく早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターを務める。

著者紹介

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幻冬舎メディアコンサルティング

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