堅調に推移するリート市場
■今年のリート市場は好調です。年初来の上昇率(10月18日時点、円ベース)は、グローバルが+26%、日本が+30%、アジア・オセアニア(除く日本)が+20%となっています。背景には、米中貿易摩擦の影響を受けた世界的な景気拡大ペースの鈍化、低インフレ、各国の金融緩和と長期金利の低下があげられます。
■欧州を中心に主要国の国債利回りの多くがマイナスとなっている中、リートは業績が比較的堅調を維持している上、配当利回りは3~4%台となっており、リートの相対的な投資魅力度が高まっています。
低金利環境は引き続き追い風
■今後の世界経済は米中協議と各国の経済政策の影響を強く受けます。米中の早期完全合意が見通し難く、各国の金融緩和が続くと見られる中にあっては、リートへの追い風は今後も続くと考えられます。
■リート市場の中でも欧州は出遅れています。英国の欧州連合離脱や欧州経済の減速などの懸念が要因です。これらの懸念材料は当面続くとの見方が大勢です。
日本、アジア・オセアニアリートは、魅力度が高い
■世界のリート市場の中で、日本やアジア・オセアニアのリート市場は相対的に投資魅力度が高いと考えられます。業績が堅調であること、配当利回りと国債利回りとの格差が大きいこと、の2点が特徴です。日本やアジア・オセアニアの利回り格差は概ね3%台で、米国リートの2.2%と比べると、格差は大きくなっています
■業績面では、日本は堅調なオフィス需要やリートの事業改善が続き、業績は堅調と見込みます。シンガポールは、観光客や企業進出の拡大等を背景に堅調さが続くと期待されます。香港は、反政府デモが不安材料で、小売売上が落ち込むなど経済活動に影響が現われています。但し、日用品が売り上げの中心を占めるスーパー部門は前年比増加を維持しており底堅さを見せています。オーストラリアは、物流やオフィス市況が好調です。関連リートの業績見通しは底堅く、これらが先導役となってリートの業績は堅調と見られます。
日本と主要なアジア・オセアニアリート市場のポイント
日本と、主要なアジア・オセアニアリート市場のポイントをまとめると以下の通りとなります。
■日本
・堅調なオフィス需要の他、保有物件の高値売却や優良物件の適切な購入など、リートの業績改善につながる動きが続き、堅調な業況が続く見込みです。
・配当利回りは3.4%、10年債利回りは▲0.2%で、利回り格差は3.6%です。主要なリート市場の中で利回り格差が大きくなっています(9月末現在)。
・東京オリンピック後を懸念する向きもありますが、オリンピックに向けたインフラ投資により、事業や生活環境が改善される他、リニア、品川-田町間の新駅、渋谷開発など、オリンピック後も都市機能の整備が続くため、不動産やリート市場の大きな落ち込みの可能性は高くないと見られます。
■オーストラリア
・物流やオフィス市況が好調です。関連セクターのリート業績見通しは底堅く、これらが先導してリートの業績は堅調に推移すると見られます。
・冷え込んでいた住宅市況も住宅購入規制の緩和が行われているほか、利下げを受けた住宅ローン金利の低下も追い風となり、緩やかな改善が見込まれます。
・配当利回りは4.6%、10年債利回りは1.0%で、利回り格差は3.6%です。主要なリート市場の中で利回り格差が大きくなっています(9月末現在)。
■シンガポール
・シンガポールはアジア全般の交通・物流の主要ハブで、政治的にも安定しているため、観光客や企業進出の拡大が続いています。また、低い所得税率がアジアの富裕層をひきつけています。オフィスや流通施設の成長が続くと共に、不動産の好需給が継続すると見られます。
・シンガポールと地理的・経済的に近いアセアンやインドなど南アジア地域経済は、世界的な景気減速の影響を受けていますが、他地域と比べて高い経済成長を遂げると見込まれます。これはシンガポールのリートにとっても追い風です。
・配当利回りは4.8%、10年債利回りは1.7%で、利回り格差は3.1%と良好な水準です(9月末現在)。
■香港
・反政府デモが続いています。小売売上が落ち込むなど経済活動に影響が現われています。但し、日用品が売り上げの中心を占めるスーパー部門は前年比増加を維持しており底堅さを見せています。
・2014年にも反政府デモが起こりました。当時も経済への影響が懸念され、リート市場は一時調整しましたが、デモの収束につれてリート価格は回復に転じ、その後の経済成長を受けて大幅に上昇しました。
・配当利回りは3.6%、10年債利回りは1.2%で、利回り格差は2.4%です。アジア・オセアニアのリート市場の中では相対的に利回り格差が低水準となっています(9月末現在)。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『リート市場…日本やアジア・オセアニアの投資魅力度が高いワケ』を参照)。
(2019年10月21日)
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