初対面の人とも打ち解ける「バーバル&ノンバーバル」
温かい人を目指す上で人とのコミュニケーションは欠かせません。というよりも、本連載のテーマである目標達成すべてにおいて、人との関係を断ち切ることはできないのです。
人が集まってくる人になり、応援されて目標を引き寄せる人になるためには、自身の魅力度を常に上げるトレーニングを実践するのも有効です。ここではコミュニケーションの場において、話し方をアレンジして、自分の魅力度を上げる簡単な方法を紹介します。
日々の会話の中、相手に自分の思いや考えをダイレクトかつ手際よく伝える方法として、「バーバル」と「ノンバーバル」を駆使する方法があります。バーバルとは言語、私たちが発する言葉そのものです。対するノンバーバルは非言語、主に身ぶり手ぶりが該当します。
日本語の通じない外国人観光客に道を尋ねられたら、平易な英語と身ぶり手ぶりを交えて道案内するはずです。これがバーバルとノンバーバルを駆使したコミュニケーション術です。
短時間で相手に思考を伝えることができるため、初対面の人とも打ち解けやすくなります。また、バーバルとノンバーバルを駆使することで手際よく伝えることができるため、時短術の1つともいえます。
人と話しているとき、言葉にばかり注意がいって、身ぶり手ぶりを忘れていることはないでしょうか。会話しているときにふと客観的に自身をとらえてみてください。ノンバーバルを生かしていなかったら、いかに身のあることを話していても、相手の脳や心へは届いていないかもしれません。
著名な政治家のスピーチは、バーバルとともにノンバーバルを随所にちりばめ、聴衆への印象度を高めています。彼らの手法を真似しましょう。会話中も動きはなるべく意識し、身ぶり手ぶりを適度に加えて、相手により深く印象付けるのです。
視線にも注意しましょう。相手の目を見て話す。子どもの頃からよく注意されることの1つですが、意外ときちんとできている人は少ないです。私はよく大勢の前で講義する機会をいただくのですが、この時はとくに視線に気を付けます。誰か1人ばかりを見たり、虚空に視線を漂わせたりするのではなく、聴いてくださっている方一人一人へ、順番に視線を合わせることを意識しています。「あなたに伝えています」という気持ちを目で訴えることで、より相手の気持ちを盛り立て脳を刺激させることができます。
表情にも気を遣いましょう。楽しいときは笑顔になり、悲しいときは悲しい表情を作る。終始無表情だったり、ムスッとした顔をしたりするのは絶対に避けましょう。そういう顔をされたら、誰だって不安や不快な気分になり、また会いたいとは思いません。
表情作りは苦手な人もいると思いますが、温かい人を目指す上では積極的に取り入れていきましょう。これができないと、感情に起伏のない「フラットな人」になってしまい、周りにはなかなか人が寄ってきてくれません。なるべく意識して会話する癖をつけていきましょう。
肝心なのは「伝えるべき内容」である
バーバルとノンバーバルを用いたコミュニケーションはバランスが肝心です。積極的に取り入れてほしいですが、どちらかに偏り過ぎてもいけません。身ぶり手ぶりはフレーバー的要素であって、肝心なのは伝えるべき内容であることを忘れずにいましょう。
バーバルコミュニケーションで気を付けておきたいのが、基本的ですがおなかから声を出すことです。プレゼンテーション(プレゼン)の場や大勢が集まる会議では必ず意識しましょう。相手にはっきりとダイレクトに伝えていく上では基本かつ重要なものとなります。また、喉だけで話すと声がかれやすく、長く話すほど聞き取りにくくなってしまいます。この点でもおなかから声を出すことは大切です。
抑揚つけも実践できるとなお良し。大事なところはゆっくりと言ってみたり、イントネーションをよりはっきりさせたりといった方法です。
また聞いている側にいるときも、リアクションの抑揚は大切にしたいです。驚くべきところで驚き、笑うべきところで笑顔を見せましょう。これだけでも相手の印象はだいぶ変わります。
これらはあまり大げさになり過ぎないほうがいいですが、どれが正解というものはありません。「思いを込めて話していますよ」「きちんとあなたの話を聞いていますよ」という温かい思いを伝えることが大事なのです。
「こういうふうに見られたい」という気持ちを捨てる
初対面の人や大勢の前で話すとき、緊張を感じてしまい、うまくできる自信がないという相談を受けることがあります。現在の私を知っている人からは驚かれるのですが、私自身も元来人見知りで、緊張しやすい人間でした。
でもそんな自分が嫌で、ある時「緊張しない人間に変わろう」と目標を立て、どうやったら緊張せず人と接することができるかを研究したのです。そして今では緊張をほとんど感じることなく、場所や環境に関わらず、上手に人とコミュニケーションを取ることができるようになりました。
後は場数を踏めば踏むほど、スキルが上達していくのを感じました。今では場の雰囲気に飲まれず、心のまま好きなようにしゃべることができています。緊張は物質として存在するものではなく、自分が生み出してしまっている感情です。ですから、心のコントロールさえ上手にできれば、緊張なんて感じずにいられるはずです。ではどのように心を調整すればいいでしょうか。
まず、なぜ緊張するのかというと、「相手にどういうふうに見られたいか」を強く考えてしまうからです。かっこよく見られたいとか、頭が良さそうに見られたいとか、自分をより良く見せようとこだわるから、緊張という感情は心の奥底から湧き上がります。
ということは、「こういうふうに見られたい」という気持ちさえ抱かなければ、緊張しないということです。
失敗しても、うまくしゃべれなくても、自分が伝えたいことを伝えればいい。思いのままを相手にぶつけるんだ。この結論に達した途端、私は人前で話すことにまったく緊張を感じることがなくなりました。
真面目な人ほど陥りやすい空回りの状態に…
私の体験談だけでは信ぴょう性に欠けるので、もう一例紹介します。
ある中間管理職の方から「プレゼンがうまくできない」という相談を受けたことがあります。
「なぜうまくできないのか」と尋ねると、「資料を用意し準備万全で臨んでも、本番で緊張し頭が真っ白になってしまう」というのです。
私もかつて同じような人間でしたから、私がどのようにして緊張しがちな自分を克服したのか説明し、「資料にこだわり過ぎず、頭ではなく心で、自分の思うように伝えればいい」とアドバイスしました。
この方は完璧主義者で、会社内での立場もあり、つい何でもできる自分を演出しようと躍起になっていました。これが緊張の原因となっていたのです。真面目な人ほど陥りやすい空回りの状態です。
情熱さえあれば相手に魅力は十分に伝わります。ベストではなく、まずはベターから始めてみる。どういうふうに思われてもいいから、胸を張ってプレゼンしよう。そのくらいの気持ちで臨むことが大切です。
以降、この方はプレゼンで緊張をほとんど感じることなく、うまく伝えられるようになりました。プレゼン内容の魅力が相手へ過不足なく伝わるようになり、業績も良化したそうです。
「緊張なんてないんだ」
この思考は、あなたの魅力度をアップさせる上できっと良い材料となるはずです。緊張を感じるたびに、思い出してください。