少子高齢化を起因とした、働き手の減少に有効な解決策が見出されないまま、世間には老後不安が広がっている。そのなか、世のサラリーマンたちが老後資金の頼みとしているのが退職金である。その退職金をどう運用していくかが、いまの少子高齢化社会を生き抜くなかで重要となってくるだろう。本記事では、退職金の使い方について考えていく。

老後の不安を安心に変えるのは「正しい資産運用」

退職金の相場は1000万~2000万円程度といわれています。ここでは、1000万円として考えてみましょう。まだ退職していない現役世代の方は、自身が退職したと思って一緒に考えてみてください。

 

退職金の相場は1000万~2000万円程度
退職金の相場は1000万~2000万円程度

 

◆お金の使い方は大きく3つ

 

お金の使い方って、たくさんありますよね。車を買ったり、服を買ったり・・・人それぞれです。ですが、大きく分類すると3つに分けられます。

 

それはすなわち、

 

①使う

②貯める

③運用する

 

この3種類です。

 

◆老後の不安を増大させるお金の使い方

 

上の3種類のうち、多くの人は「②の貯めるが正解であろう」と思っています。ですが、実は「①使う」と「②貯める」は、ほとんど同じことなのです。それは「原資が減っていく」という意味で同じなのです。

 

貯めても、徐々に使っていくので、退職金は減る一方です。先に使えば、もちろんすぐにお金はなくなります。

 

貯金が潤沢になければ、老後の不安は一気に増します。老後は、お給料がないから、危険なのです。現役世代の方にはピンとこないかもしれませんが、老後は収入が激減します(55歳頃から下がり始めます)。

 

確かに公的年金はありますが、これはあくまでも最低限の生活をギリギリ送れる程度です。少々ゆとりある生活をしようとすると、貯金や退職金を削っていかなければいけないのです。

 

「働けばいいじゃない」と思われるかもしれませんが、すべての退職者が元気に働けるとは限りません。やはり、収入も現役時代よりも下がるのが一般的です。

 

◆正しい運用(理想)

 

そこで、退職金を上手に運用する、という選択肢が上がってきます。理想の正しい退職金1000万円の使い方は下記です。

 

●1000万円を投資に回す

  ↓

●毎年5%程度の平均利回りを得る

  ↓

●平均利益の50万円を引き出す

  ↓

●50万円と厚生年金を合わせて使う

 

つまり、退職金をプライベート年金の原資として運用し、運用益をボーナス代わりに使うのです。これが上手にできると、理論上は、原資の退職金1000万円は減らずに、ずっと運用ができます。

 

※もちろん、理論上の話であり、実際には原資の資産価格は投資商品によって価格変動します。

 

退職金が2000万円ある場合は、ボーナスとして毎年100万円が受け取れる計算ですね。

「長生きするほど得をする」のが正しい運用!?

正しく運用ができると、長生きを味方にできます。通常の「貯める&使う」方法では、長生きをするほどに原資が枯渇します。そうです、長生きがリスクになってしまうのです。これでは本末転倒です。

 

ところが、上記の例のように、原資を取り崩さずに運用益だけを使っていると、長生きが楽しくなります。なぜでしょうか? それは得をするからです。

 

ちょっと計算してみましょう。

 

1000万円を5%で運用して毎年50万円受け取る。

 

10年で運用益→500万円

20年で→1000万円

30年で→1500万円

40年で→2000万円

 

しかし、理論上は原資の1000万円は残る(価格変動あり)

 

もちろん、これはあくまでも計算上ですが、長生きをするほど得をするのがわかりますね。おまけに原資が残っているのも安心です。

 

◆ダメな運用方法

 

それでは、こんどはダメな運用方法です。

 

①短期的な値動きの売買を繰り返し、毎年高い運用利回りを目指している

②運用益を上回る額を原資から取り出し、原資が年々先細りしていく

 

①は、長期投資というよりも短期投資です。長い目で見てみると、運用利回りは平均して5%というのが現実的なラインだと思います。毎年20%や50%の運用利回りは望めないのではないでしょうか。

 

②は、毎月分配型投資信託などを買うと、強制的にそれになります。また、貯金が十分にない場合も②になりがちです。さらに、投資の記録表や、家計簿をつけずにいると、知らないうちに原資を割り込んでしまうかもしれません。記録は投資の基本です。

 

◆運用方法は千差万別

 

さて、肝心の運用方法は千差万別です。先祖伝来の土地があれば現物不動産もいいでしょうし、株式に明るければ株式投資もよいでしょう。

 

肝心なのは、最後まであなたが大事なお金を運用できる、理論的で合理的な投資対象を探すことではないでしょうか。

 

◆まとめ

 

●退職金の使い方は大きく3つ「使う」「貯める」「運用する」

●上手に運用ができれば、長生きが楽しくなる

 

 

佐々木 裕平

金融教育研究所 代表

 

本連載は、「金融教育研究所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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