米中対立激化、香港デモの影響で不安定な展開に…

2019年10月のアジア・マーケット・マンスリー

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 調査部
米中対立激化、香港デモの影響で不安定な展開に…

三井住友DSアセットマネジメント株式会社が、アジアリサーチセンターのレポートを基に、2019年9月のアジアマーケットと見通しについて解説します。※本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するマーケットレポートを転載したものです。

香港<ピックアップカントリー>

香港デモで経済に深刻な影響 デモ収拾にあたって波乱の展開も

 

【株式市場】香港デモ収束見えず市場心理好転に時間

 

香港デモがマクロ経済の悪化を招き、市場心理を低迷させている。節目とみられていた10月1日国慶節を経て、当局のデモ対応方針がより強硬的なものに転じると波乱の展開も予想される。デモ収束への道筋が見えるまでは、株価バリュエーションの拡大は想定しづらい。香港域内からの売上構成比率が低く、中国本土に収益基盤を有する企業への選別投資が望ましいだろう。

 

【社会情勢】緊急法の発動でデモ隊に厳しく対峙する姿勢

 

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は9月26日、香港市民と対話したが、条例改正案撤回を除く4項目のデモ隊要求には応じない考えを明らかにした。10月1日の国慶節には警官の発砲で高校生が重傷を負ったが、当局は3日、この高校生を暴動罪などで起訴した。キャリー・ラム行政長官は4日、緊急状況規則条例(いわゆる緊急法)を発動し、これを援用する形で覆面禁止法を制定した。緊急法の発動は1967年以来で、公共の利益を守るために行政長官に対してあらゆる権限を付与する。香港政府はデモ隊に厳しい姿勢で対峙する方針を打ち出しており、デモは過激化する見込みである。

 

【マクロ経済動向】景気は更に冷え込みへ

 

デモは週末に過激化する傾向があり、商店の休業、地下鉄の駅閉鎖を迫られるケースが増えている。デモの過激化、中国国民の感情悪化、人民元安香港ドル高等で、中国本土からの観光客が急減、小売り、ホテルなどサービス業中心にマクロ経済に深刻な影響を及ぼしている、8月の小売売上高は前年同月比▲23%の減少となり、統計開始来最大の落ち込みとなった。国慶節連休期間(ゴールデンウィーク)の状況を見る限り、前年比の統計は今後更に悪化する見通しだ。

 

(注)データは2018年1月1日~2019年9月30日。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データは2018年1月1日~2019年9月30日。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)太線枠は政府が譲歩した条項。点線枠は政府が一部譲歩した条項。 (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)太線枠は政府が譲歩した条項。点線枠は政府が一部譲歩した条項。
(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2015年1月~2019年8月。春節休暇の影響を除くために1-2月は平均値。 (出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データは2015年1月~2019年8月。春節休暇の影響を除くために1-2月は平均値。
(出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

ベトナム<ピックアップカントリー>

低インフレ、安定成長見通しで海外資金の流入継続を見込む

 

【株式市場】良好なファンダメンタルズを背景に上昇を見込む


市場は今年春先からボックス圏推移が続いているが、半年前と比較してファンダメンタルズは明らかに改善している。高成長、低インフレを実現し、通貨ドンも安定している。他国に追随した予防的な利下げも企業業績にプラスに働こう。株価バリュエーションに割高感はなく、海外資金主導の相場上昇が期待できる。中期的には新興国市場への格上げ観測もプラスに働く。

 

【為替動向】ドンの安定性が高まる


従来、中国人民元との相関が高かったベトナムドンだが、8月以降の人民元安に追随することなく、安定的に推移している。低インフレ、経常収支黒字などベトナムドンが評価される要因が多く、ベトナムへの資金流入が継続している。人民元の動向には注意が必要だが、経常収支黒字、低いインフレ率、比較的高い経済成長率など、ベトナムの良好なファンダメンタルズがドンの安定性に寄与する動きが続くと予想する。

 

【マクロ経済動向】高成長と低インフレが持続

 

7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比7.3%へ加速し、1-9月期の成長率は6.98%となった。2019年の成長率目標6.8%の達成確度は高まった。米中摩擦の激化を受けて、ベトナムの輸出競争力は中国対比改善しており、ベトナムからの米国向け輸出の勢いが増している

 

9月の消費者物価上昇率は前年同月比1.98%となった。1-9月の平均インフレ率も2.5%と、政府目標の4%を下回っている。低インフレは国内需要の安定成長のための重要な要素となる。

 

(注)データは2018年1月1日~2019年9月30日。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データは2018年1月1日~2019年9月30日。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注1)データは2018年1月1日~2019年9月30日。 (注2)逆目盛。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注1)データは2018年1月1日~2019年9月30日。
(注2)逆目盛。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2017年1月~2019年8月。 (出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データは2017年1月~2019年8月。
(出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

インドネシア<ピックアップカントリー>

通貨ルピア強含みの見通し 財政規律重視も中長期プラス要因

 

【株式市場】利下げ期待と業績悪化の綱引き


景気テコ入れのための追加利下げ期待が強く堅調な相場展開を予想する。ジョコ大統領が表明した財政規律を重視する方針は長期金利、ルピアの安定を通じ金融政策の柔軟性を高めよう。一方、業績見通しが悪化方向にあり、株価バリュエーションの割安感が後退しているため、短期的に株価を押し上げる要因も見出しづらい。経済の成長余地は大きく、中長期的に投資妙味の高い市場との位置づけは変わらない。

 

【為替動向】外国人の国債購入意欲高まりルピアは強含み


中銀は9月19日の金融政策決定会合で市場予想通り政策金利を5.50%から5.25%へ引き下げた。中銀は追加利下げの可能性を排除しておらず、国債利回りの低下傾向が続きそうだ。インドネシア国債の外国人保有比率は約40%と高く、国債利回りが低下(債券価格が上昇)する局面では、ルピアの対米ドルレートは上昇しやすい。

 

【マクロ経済動向】首都移転に注目


ジョコ大統領は8月16日、首都をジャカルタからカリマンタン島に移転する方針を施政方針演説の中で正式に発表した。2045年(独立100周年)の移転完了計画に向けて、2021年から新首都機能の建設を開始し、2024年から政府機能の移転を段階的に進めていく予定である。一方、政府は2020年の政府予算案で財政赤字のGDP比を1.76%に設定した。2018年の2.19%、2019年の1.84%に続き、政府は財政規律を重視する方針を維持し、ソブリン格上げを通じて政府の調達コスト低下を狙う。首都移転は超長期計画であり、足元の財政規律との間に齟齬をきたすことはないだろう。

 

(注)データ期間は2018年1月1日~2019年9月30日。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データ期間は2018年1月1日~2019年9月30日。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注1)データ期間は2018年1月1日~2019年9月30日。 (注2)対米ドルは逆目盛。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注1)データ期間は2018年1月1日~2019年9月30日。
(注2)対米ドルは逆目盛。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2011年~2020年。政府予算案ベース。国家予算法によって財政赤字のGDP比は3%以内。 (出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
(注)データは2011年~2020年。政府予算案ベース。国家予算法によって財政赤字のGDP比は3%以内。
(出所)CEICのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

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