社会の変化のスピードに比べて、なかなか変わらないと揶揄される「教育現場」。一方で、「自分たちが子供のころとはずいぶんと変わった」などと、その変化の大きさに驚かされる時もある。いま、教育の現場では何が起こっているのか。本連載では現役の小学校教師として活躍する中村歩氏が、教育現場のリアルな実情を語る。今回のテーマは「教師の給与体系と昇給」である。

横並びや年功序列のおそれを含む昇給評価システム

「教員は給与が安定している」などと、世間から羨望を受けることがありますが、多くが大きな志をもって教師になっています。「子供たちがより良く育ってくれること」は、教師にとって「やる気・喜び」の源であり、その結果が「給与」につながっていると考えているため、正直給与や昇給にこだわる人はあまりいません。

 

学校には、校長の定める「学校経営方針」や「めざす児童像」が設定されているため、教員個人としての明確な学級経営ビジョン(目標)は間違いなくどの業種よりももちやすいと言えるでしょう。

 

その反面、先ほども述べたように能力や努力に関しては評価に反映されづらい職種であるため、昇給に向け、目標や展望をもつことがなかなかに困難です。昇任したときの給与額アップも数千円と少額なため、責任と仕事量が格段に上がってまであえて昇任試験を受けてステップアップしようという目標をもつ人も少ないのです。これは明確なキャリアアッププランが立てづらいということにもつながります。

 

教員である以上、誰もが子供が成長してくれればやる気が出ます。ただ、子供と四六時中付き合っていれば、そんな幸せな時間ばかりではありません。子供が思った通りに動いてくれない、保護者からの過度なクレームが続く、子供だけでなく、今話題の教員同士の関係に悩む、そんな時はやはり教員だって人間です。気分が滅入って、やる気を失いかけることだってあるのです。

 

そんな時、もし能力給や努力給による昇給システムがしっかりしていれば、投げ出さずに現況に堪えてやろう、がんばって乗り切ってやろうという元気も出るのではないでしょうか。やる気を取り戻す、やる気を持続する要因の一つになり得ると思うわけです。

 

教員の長時間労働が問題視されている中、「役職アップや努力・仕事量に対する魅力的な昇給システムを構築すること」「横並びや年功序列のおそれを含む昇給評価システムを是正すること」この2つをクリアしたならば、教員の質はより向上し、よりよい職場環境作りにもつながると考えます。それらの実現によって、教員が気持ちよく仕事をできるようになることはひいては、その教員と共に過ごす子供たちにもよい影響を与えるのではないでしょうか。現場の教員として改革を望みます。

 

もう一点、教員のやる気、質の向上に関連して問題提起をしたいことがあります。それは校長の「再任用制度」についてです。

 

現在多くの校長が定年退職後、再任用校長として現場で働き続けます。校長としての経験は大変貴重なもので、それを引き続き発揮してもらうことは現場としては心強いことです。

 

再任用校長にはもちろん現役の時と同じように満額の給与が支給されるわけではありません。教員は公務員の立場である以上、校長に再任用で学校に残ってもらうことは現場にとっても国の財源的にも理にかなった一石二鳥なシステムであることは疑いようがありません。

 

しかし、そのために校長職の椅子があかず、副校長のまま退職を迎えてしまう方が大勢います。なかには校長試験に受かったにも関わらず、校長になれずに定年退職を迎えてしまうのです。

 

そのような現況を見てしまうと、昇任試験を受ける気力も起きません。主幹教諭や副校長試験の倍率が限りなく1倍に近いのは、このような理由も関係しているのではないでしょうか。

 

校長の経験を他で活かす方法を模索する。こちらも教員のやる気や質の向上のために改善が必要な事案だと考えます。

 

自治体によっては、再任用を望む校長先生を、現場で校長として続投させるだけでなく、教員の授業力向上を目的とした「研究・研修」のアドバイザーとして、また、児童・保護者・教員からの教育に関する相談機関の専門員として任用するなどの取り組みを行っている所もあります。

 

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