社会の変化のスピードに比べて、なかなか変わらないと揶揄される「教育現場」。一方で、「自分たちが子供のころとはずいぶんと変わった」などと、その変化の大きさに驚かされる時もある。いま、教育の現場では何が起こっているのか。本連載では現役の小学校教師として活躍する中村歩氏が、教育現場のリアルな実情を語る。今回のテーマは「教師の給与体系と昇給」である。

43歳の小学校教員…年収はいくら?

みなさんは、公立小学校の教員の給与ってどれくらいだとお考えですか? 4年制の大学を卒業した1年目教員の初任給は額面で約23万円程度です。

 

教員には残業代がありませんので、その代わりとして、給料月額の4%にあたる「教職調整額」と呼ばれる特別手当が基本給に上乗せされています。そのため、一般的に初任給は他の業種に比べ高めに感じられるかもしれません。

 

※ちなみに月勤務時間が300時間を超すとも言われる副校長にはこの教職調整額が発生しません。

 

では、その後の経年による昇給に関してはどのようなシステムになっているのでしょうか。

 

教員の給与は階級と号によって管理されています。給与明細を見ると、「当月給料表級号」の欄には、「○級△号」と表示がなされています。あまり知られていませんが教員は副校長・校長以外にも役職が分かれており、等級は役職により変わります。役職には教諭、主任教諭、指導教諭・主幹教諭があり、経年によって受験資格を得ます。その権利を得た後、希望者は受験をして昇任していく形となっています。役職が上がればその等級も上がっていくわけです。上記以外には教育委員会で働く行政職として指導主事という職種もあります。

 

ただ等級が上がったとしても、教諭から主任教諭だと月数千円、主任教諭から主幹教諭・指導教諭にステップアップしても月数千円~1万円弱程度アップの世界です。責任と仕事量は格段に上がるにもかかわらず、です。

 

[図表1]東京都公立小学校 教員構成の一例

 

総務省・平成30年度地方公務員給与実態調査によると、公立小学校教員の平均年齢は43歳、平均給与は月額35万円(税引き前、諸手当別)でした。また、文部科学省・平成28年度学校教員統計調査によると、副校長の平均給与は月額42万円、校長は45万円程度(ともに税引き前、諸手当別)です。ただし、副校長や校長になる人は早い人でも40代、大半は50代のため一概に上記教員平均給与額との比較はできません。

 

年収に関しては単純計算するならば、月給の12ヵ月分に約4ヵ月分の賞与がプラスされ、約計16ヵ月分となるわけです。

 

号に関しては毎年4号ずつ上がっていくのが基本です。成績が優秀だと5号、6号上がる教員もおり、「特別昇給」と呼ばれます。逆に成績が悪いと2号・1号・号の昇格なしとなることもあります。4号昇給だと年4000円~7000円/月程度のアップになります。

 

教員は、一般企業の営業のように成績が契約数や売り上げなどの具体的な数値として残されるわけではありません。保護者から担任の評価をとるわけでもありませんし、塾と異なり、児童の学力を飛躍的に伸ばしたとしてもそれが担任の評価に反映されるわけではありません。そんな教員を評価するのは各校の校長です。

 

では校長は何を基準に自校の教員を評価するのでしょうか? 評価項目はもちろんこと細かに定められています。校長は評価に関する厳しい研修を受けるだけでなく、仮評価の後、副校長とも熟考に熟考を重ねた末最終評価を決定します。評価次第では教員間がぎくしゃくする可能性を秘めている内容であるため、校長による教員の評価は円滑な学校経営に関わる最重要項目と言えます。

 

基本の4号昇給が大多数というようなある意味平等な評価になる危険性もはらんでいるわけです。そうなると号による昇給が年功序列に近いものとなってしまいます。

 

教師の世界は、みんな仲良く平等に評価!?
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