グローバル化が急速に進む中、海外で子どもの幼少期や初等、中等教育等の早い段階から英語環境におくことで、英語のみならず、国際感覚を身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「家族長期留学」についての最新事情を紹介する。今回は、「マレーシア」の親子留学についてである。

マレーシア留学はインターナショナルスクールが基本

マレーシアが留学先として人気を集めるようになったは近年で、その背景には経済的な発展に伴う外国人居住者の増加により、インターナショナルスクールが増えたことが理由の1つとしてあります。学校の選択肢や住環境を考えると、首都のクアラルンプールが人気ですが、弊社のお客さまの中には、シンガポールとの国境沿いのジョホール・バールや、のんびりした場所でゆっくりマイペースに子育てをしたいという目的でペナン島を選ばれた方もいらっしゃいます。

 

マレーシアと併せて、シンガポール、タイ、フィリピンなどのアジア圏に留学する際、基本として押さえておきたいことは、アジア諸国はもともと英語教育を目的とした留学先ではなかったということです。

 

よく英語圏への留学情報と混同された状態でお問い合わせを頂戴するのですが、まず大前提として、マレーシアの母国語は英語ではなく、公用語として英語が普及している環境であるということを頭に入れておきましょう。

 

英語を母国語とする欧米圏への留学の際には、公立校が選択肢に上がりますが、マレーシアへの留学は、基本的に私立インターナショナルスクールになります。学校内は英語でも、学校の外に出れば英語以外のマレー語や中国語が飛びかいます。このような多国籍・多言語の環境は、グローバル感覚を養う上ではおおススメです。

 

マレーシアのインターナショナルスクールは、学校によって学費の差や施設の充実度が大きく異なっていることがあります。

 

例えば、年間の学費でいえば、40万円程度から300万円クラスまで、学校によってさまざまです。マレーシアでインターナショナルスクールが増え始めた時期から比較すると、学費が値上がりした学校が多くあります。この学費の違いがどこに大きく出ているかというと施設と人件費です。

 

例えば、英国系のインターナショナルスクールでは英国の教育カリキュラムを採用しています。英国系インターナショナルスクールの先生たちは、「英国の教職課程を修了して免許を持っている」と思っていただくとわかりやすいのですが、その先生が英国人だと学費がさらに跳ね上がる傾向にあります。

 

それが、マレーシア人の先生、またはバングラデシュ人、インド人の先生が「英国に留学して免許を取得しました」となると、英国人の先生が多い学校よりも随分と学費がお得になっているようです。英語圏への留学比較すると、マレーシア留学は学校選びによって、その内容にが大きく差がつくケースが多いかもしれません。

 

マレーシアの場合、各インターナショナルスクールが採用している国のカリキュラムによって、学期やセメスターが異なります。入学を受け入れする時期も異なりますので、各学校のカリキュラムとスケジュールを事前に調べる必要があります。マレーシアのインターナショナルスクールの人気校は空きがなかったり、入学時点で英語力を求められることがありますので、視察を含めた十分な検討と手続きの期間をとることをおススメします。

 

クアラルンプール
クアラルンプール

 

広いコンドミニアムの月々の家賃が10万円程度

マレーシアに親子で留学する際には、ビザは大きく2つ考えられます。まず1つ目は、お子さまが学生ビザを申請し、親は保護者ビザで帯同するケースです。学校が入学の手続きと併せて学生ビザと保護者ビザの手続きをしてくれる点において、比較的シンプルです。保護者ビザの申請ではローカルスポンサー(マレーシア人の身元引受人)を見つけたり、現地の保険に加入を求められることがあります。

 

ただし、学校はもともとビザ申請を専門にしていないため、(複雑な家族構成のケースなどでは)保護者ビザ申請にあまり積極的ではないことが多く、2つ目の選択肢である長期滞在ビザを申請するケースが多くなります。そのビザは、家族全員を申請に含めることができるMM2Hと呼ばれるものです。

 

このビザは申請者(両親のどちらか)が資産と収入の証明を行い、現地の金融機関に一定額を預金することで10年更新型の居住ビザが発行され、申請には配偶者や扶養家族を含めることができます。

 

また、マレーシアに居住しなくても比較的簡単にビザを維持することができるのがメリットです。滞在予定のないご家族を申請に含めても、ビザによって「定期的にマレーシアに行かなければならない」ということがありません。

 

学校によっては、保護者のビザをMM2H取得に指定していることがあります。ただ、このMM2Hで親子留学をする際に気をつけたいのが、留学手続きとビザ手続きのタイミングです。

 

「MM2Hビザを数カ月前に申請しました。学校から入学許可も降りて来月から学校ですが、まだMM2Hビザの承認が下りていません。どうしたらいいですか?」

 

というお問い合わせを何度か頂戴したことがあります。この場合、学校に早急に学生ビザ申請に切り替えをお願いするか、渡航を遅らせるしかありません。MM2Hビザは申請を提出して、仮承認までに「半年〜10カ月程度」かかります。仮承認が下りた後、6カ月以内にマレーシアに渡航していただき、1週間ほど滞在し、健康診断や口座開設を済ませ、最後に現地金融機関に必要な預金の送金を行う必要があります(渡航の予定がある方は、このタイミングで不動産購入・賃貸の内覧に行かれる方も多いです)。

 

ビザの発給はここまでが終わってからです。学校手続きだけを留学業者にお願いして、ビザはまた別の業者にお願いしてしまうケースで、このビザ発給までの時間や渡航前にやっておくべき手続きに漏れが発生するなどのトラブルが目立っています。

 

2019年9月時点で、一時承認プロセスが止まっていた関係でMM2Hビザは申請から仮承認までに約10カ月程度要しています。現在MM2Hビザ申請をお手伝いしているご家族が、2020年後半から2021年に渡航・入学予定です。

 

学校によっては学費が欧米諸国と変わらないものの、欧米諸国に比較すると圧倒的にコストメリットがでるのが住居費・生活費です。駐在者や日本人も多く、快適に生活できる人気エリア(モントキアラなど)でも、母子2名でコンドミニアムの月々の家賃が10万円程度におさまってしまいます(日本の都内で40〜50万の物件に12〜14万で住めるようなイメージです)。

 

憧れの留学から「ライフスタイル」を選択する時代へ…

マレーシアへの母子留学の多くのケースでは、スクールバスが出ているエリアのショッピングモール近くなど、商業施設にアクセスの良い住居を選ばれます。昼間はショッピングモールでお買い物を楽しまれたり、プールやジムなどが充実したコンドミニアム内でゆっくりと過ごされたりするお母さまが多く、比較的時間に余裕をもった過ごし方をされる傾向にあります。

 

日本へも行き来がしやすく、クオリティーに対して安価な不動産を購入できるマレーシアは、MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)の名前の通り、海外の身近な第2の拠点を考えるご家族に人気を集めています。

 

以前は欧米系の外国人駐在員のお子さまが多く通っていたマレーシアのインターナショナルスクールでも、アジア諸国の富裕層のお子さまが留学に訪れるようになっています。昨今、インターネットの発達によって、情報の流れもヒエラルキー型の構造からフラットになっています。

 

それによって、国の成長モデルや成長スピードが大きく変わり、多種多様な選択ができる時代になりました。ご両親のワークスタイルや収入モデル、お子さまへの教育のスタイルなど、ライフスタイルそのものがご家族ごとに陰影がはっきりとしていきている、というのが私がお客さまをお手伝いする中で感じるトレンドの変化です。

 

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