「日本円」の価値が下がっている?
田中貴金属の税抜参考小売価格で見ると、円建て金価格の最高値は1980年1月(6,495円)に記録した。しかし、このときは1ドル=240円の世界であり、金価格がドル建て価格を基準としていることを考えると、現状(1ドル=107円前後)の円建て金価格が非常に高い水準にあることがわかる。
ドル建てで見ると、金の最高値は2011年9月に記録した1トロイオンスあたり1,896.05ドルである。このときの為替は1ドル=77円後半という未曾有の円高状態であったため、同時期の円建てでは1グラムあたり4,721円と、現状よりもグラムあたり1,000円も安く買えたわけだ。ちなみに田中貴金属が出している直近の8月ドル建て価格の最高値は1トロイオンスあたり1,540.20ドルであった。
金と同様に「円」もリスク時に人気のある資産であるため、金価格の上昇と円高は同時に起こりやすいと、考えられている。それでは、過去、ドル建てでの金価格が現在と同程度であったときのドル円価格を見てみよう。
2011年4月に1トロイオンス当たり1,535.50ドルと、現状に近い値であったが、このときのドル円は1ドル=84円前半を推移している。金価格を基準として考えると、「円」の価値がこのときよりも下がっていることがわかる。
本日、雇用統計発表とトランプ大統領のツイートに注目
現状、NYダウは26,728.15ドルと高値圏にあり、ドルも対ユーロ、対日本円で比較すると高い値にある。株もドルも金も高い状態は、何をあらわしているのか?
金が円建てで最高値を更新しているのは、上記の通り、円の価値が下がっていることが要因と想定されるが、ドル建てでも1トロイオンスあたり1,500ドルを超えており、高値圏を推移している。
米国の経済指標は、減速懸念はあるものの悪くなく、それでもトランプ大統領の圧力も影響してか、追加の利下げが見込まれているため、株価は高くなっている。景気は他の先進国と比較すると良いほうであり、また、利下げ観測から米債券購入の需要が増加したと見られ、ドルも買われている。一方で世界経済は、米中貿易摩擦やブレグジットなど、不況を引き起こす爆弾を抱えており、想定される「有事」へのリスクヘッジから、金価格も上昇していると考えられる。これらの絶妙なバランスで、現在、株もドルも金も上がっているわけだ。
昨年2018年には、インフレリスクの抑制のため、4度の「利上げ」が実施された。現在、クリスマス商戦への影響が考慮され、対中制裁関税第4段は、消費者に影響があるとされる製品群への実施が12月まで延期されているが、その先には、物価の上昇も見込まれるため、影響には注意が必要だろう。
本日は米国の雇用統計発表がある。市況に影響を与える重要な指標として注目だが、トランプ大統領は、こういったタイミングを見計らって爆弾発言をツイートすることが多い。雇用統計と共に、トランプ大統領のツイートにも注目しておこう。