経済的理由で進学をあきらめないよう、学生を援助するために貸与または給付される奨学金。保護者や学生自身にとって、非常に強い味方となる奨学金だが、受験から入学までの間には手元にないことも。本記事では、「奨学金制度」利用時の注意点について見ていく。

入学まで「平均100万~200万円」程度の費用が必要に

※本記事は2018年度の内容を反映しています。奨学金制度は年度ごとに「大きく」変わることがあります。日本学生支援機構のHPで最新の情報を確認することが重要です。

 

奨学金制度で注意をしたい点は、最初の振り込みが4月以降になる点です。つまり、受験や入学費用のお金として奨学金が間に合わない、という点です。

 

◆進学と奨学金にはタイムラグがある

 

一般的な入学時期は4月です。平均的な数字を見てみると、入学前の受験時に平均で20万円程度がかかります(出願費用や受験のための交通費・宿泊費など含む)。合格後から入学までの期間には、平均で100万~200万円程度のお金がかかります。「100万~200万円とは、ずいぶん差があるな」と思われるでしょう。これは、私立か国公立か、自宅から通うか、アパートなどから通うか、で大きく異なってきます。

 

自宅外から通う場合は、引っ越し代や敷金礼金などで、高額の費用が発生します。他にも、授業料・入学金や教科書代や教材の購入費用なども含まれます。


そして、奨学金が振りこまれるのは5月以降が一般的です。ですから、ザックリと知っておきたいのは「入学して奨学金が振り込まれるまでに、120万~220万円程度が必要だ」ということです。

 

奨学金が振りこまれるまで「120万~220万円程度」が必要
入学まで「平均100万~200万円」程度の費用が必要に

学資保険以外の有力選択肢「国の教育ローン」

◆奨学金では間に合わない120万~220万円はどうやって準備する?

 

多くの場合は、学資保険や預貯金で準備をします。しかし、それでは間に合わない、という現実もあるでしょう。この場合に、大きな選択肢として挙げられるのが「国の教育ローン」です。


<国の教育ローンの概要>


奨学金は、学生本人が負う借金です。一方の国の教育ローンは、親や保護者が負う借金です。概要を見てみましょう。


●学生一人当たり350万円まで(海外留学資金の場合は450万円まで)
●入学金に当てることができる
●収入制限あり
●利息がつく
●審査10日 振りこみ10日とタイムラグが合計20日以上かかる


<国の教育ローンの注意点>


国の教育ローンで気を付けたいのは、審査などで振り込みまでに最短でも20日はかかってしまう、という点です。つまり、合格が分かってから動いていては、間に合わない可能性があります。


また、所得が高い人ほど「審査に落ちる」可能性が高まります。そのため、受かるかどうかはわからないけれど、合格発表の前の3ヵ月前くらいには申し込むことが重要です。合格発表時には手元にお金がしっかりとある状態にしておきましょう。


<国の教育ローンの申し込み方法>


国の教育ローンは、いろいろなところから申し込めます。


①日本政策金融公庫のHPからインターネットで申し込む
②全国の日本政策金融公庫の支点
③銀行
④信用金庫
⑤信用組合
⑥労働金庫
⑦農協
⑧漁協


などで申し込むことができます。


◆奨学金が余り始める可能性のある「夏」にご注意!


こうして、無事に入学、進学ができたとしても、まだ油断できません。意外なことに、夏以降に大学などを退学してしまう生徒が多いからです。なぜでしょうか。


それは、後期の授業料が支払えない、というケースが出てくるからです。原因の一つとして考えられるのが、奨学金を夏に使ってしまう、という点です。授業料などを支払ったあとは、お金が発生するのが一時的に緩やかになる時期があります。そこで、つい気が緩んでお金を使ってしまうのかもしれません。


または、保護者側も油断して資金を準備できていないことも考えられます。そのため、後期の授業料についても、しっかりと準備しておくことが重要です。本記事がどなたかの一助になれば幸いです。

 

 

佐々木 裕平

金融教育研究所 代表

 

本連載は、「金融教育研究所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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