会社員のiDeCo、本当は誰が入れるの?加入ルールと改正案

※本記事は、2019年8月22日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

喜ばしい?「全会社員へiDeCo解禁」の可能性

7月29日付の『日本経済新聞』朝刊の一面で「イデコ加入全会社員に」と報道がありました。記事によると、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の規制緩和についての検討があるようです。

 

特に「現状、iDeCoに加入できない会社員」に恩恵のある制度改革となることが紹介されていました。

 

実のところ、新聞報道はまだ曖昧な箇所が多いのですが、検討の俎上(そじょう)に載せていることは間違いなく、今後は厚生労働省の社会保障審議会企業年金・個人年金部会で、具体的な議論がなされると思います。

 

今までは、せっかくiDeCoに加入しようと手続きを始めたものの、途中で加入できないことに気がつき、「なんで私はiDeCoに入れないのだ」と思っていた人からすれば、この話題は朗報でしょう。つまり、事前にiDeCo対象者が誰なのか分かりにくいことが、このiDeCo制度の難点だったと言えるわけです。

 

今回は、iDeCoに入れない会社員はどんな人か、また今後の規制緩和の可能性がリタイアメントプランニングにどう影響するか、紹介します。

iDeCoに入れない会社員は会社のせい?

まず、現状で「iDeCoに加入できない」というのは、原則「企業型DC(確定拠出年金)に加入している」と考えてください。

 

DCの口座は税制優遇があるため、無制限にいくつも持つことはできません(NISA[ニーサ:少額投資非課税制度]も同じ考えに基づくため、一人1口座しか開設できない)。原則として国民一人1口座であることが求められます。そのため、企業型DCに加入している人は原則、iDeCoに加入できないこととなっています。

 

ただし法律上は「企業型確定拠出年金規約で定めた場合は、iDeCoに同時加入可」としているのがくせ者です。一見すると、iDeCoに入れないのは会社が対応してくれないからであるように思えます。

 

しかし、iDeCoに加入できる企業型確定拠出年金制度にするためには、「マッチング拠出を行わないこと」と「会社が負担する積み立て額の上限を引き下げること」の2つを条件としています。ちなみに「マッチング拠出」とは、企業型DCで会社が拠出する掛金に加えて、加入者本人が掛金を上乗せして拠出することができる仕組みのことです。

 

二つの条件を具体的にすると、月5万5,000円の拠出限度額について、会社負担額を3万5,000円に引き下げることで、iDeCo月2万円の枠が生じるのです(確定給付企業年金等併用の場合、月2万7,500円の拠出限度額につき、会社負担を1万5,500円に下げることになる)。

 

これでは、下手をすると会社が負担してくれる額と、退職金額が減ってしまうだけになってしまいます。会社も退職金の計画的な積み立てが難しくなります(一般に、給与や職階に比例して掛金額を増額するため、上限は高いほど退職金水準を高くしやすい)。

 

結果として、iDeCoと企業型DCに同時加入できるのは、規約ベースで1%以下と言われています(正確な統計は公表されていない)。企業型DCの加入者である会社員の数は716.4万人(2019年6月末現在)ですから、「1%以下」を当てはめると概算でも10万人以下、ということになるわけです。

 

それ以外、つまり700万人くらいはiDeCoに入れなかった、ということになり、けっこう多くの人が「iDeCoには入れない人」だったということが分かります。

iDeCoに入れる会社員はこんな人

「iDeCoに入れない人」の逆が、「iDeCoに入れる会社員」となるわけですが、念のため、iDeCo加入の条件を確認しておきましょう。具体的には以下のとおりです。

 

(A)企業年金のない会社員

退職一時金制度(外部積み立てをしていない)、中小企業退職金共済制度や小規模企業共済制度(共済の仕組みで外部積み立てをしている)は企業年金の対象外でiDeCo加入ができます。月2万3,000円、年27.6万円の拠出枠があります。

 

(B)企業型DC以外の企業年金のある会社員

「企業型DC以外の企業年金のある」とは、制度的には厚生年金基金と確定給付企業年金が対象で、月1万2,000円、年14.4万円の拠出枠があります。

 

この拠出枠の差は、確定給付型の企業年金も税制優遇の恩恵を得ているために生じると、説明されています。

 

実は上記以外で、下記のような人はiDeCoに加入することができます。

 

(C)企業型DCのある会社員だが、加入を選択していない人

会社によっては企業型DCに加入する、しないを選択できることがあります。加入しなかった場合、給与や賞与に上乗せして掛金額相当が支払われます(ただし、税や社会保険料が引かれる)。

 

こうした人は企業型DCの対象外であることから、iDeCoに加入することが認められています。

 

(D)厚生年金を適用されるくらい働いているが、非正規扱いで正社員ではない人

一般には「正社員=厚生年金適用」「非正規=厚生年金適用しない」という区分でしたが、非正規であっても、徐々に厚生年金に加入しなければならない流れになっています。

 

こうした人は、専業主夫・主婦(国民年金の第3号被保険者)ではなくなり、正社員扱いでもないことがあります。こういう人もiDeCoに加入することができます。

 

(E)企業型DCのある会社員だが、会社の規約でiDeCo加入を認めている人

これは前述の「企業型DC加入者の1%」のことですが、iDeCoに加入することができます。

 

実は(C)(D)の人はiDeCoに加入できるのですが、自分は対象外かもと思い込み、気づかないこともあります。「もしかしたら」と思ったら、iDeCo加入を受け付ける金融機関のコールセンターに問い合わせてみるといいでしょう。

次の法改正はいつ頃実現するか思ったより先の話かも

改めて、新聞に報道された法改正の説明に戻りますが、現状ではまだ不明なところが大きいのが現状です。次回あたりの企業年金・個人年金部会で資料説明があるかもしれませんが、限度額のルールをどう設定するかがまず未知数です。

 

また二つのDC口座開設をチェックし、限度額をチェックする仕組みを運営管理機関サイドがどう構築するかも不明です。

 

現場に近い人ほど「法改正はいいことだけど、実際にやるとしたら大変だなあ」という感想を持っているようです。

 

また、税制改正大綱に記載され(早くて2019年末)、DC改正法が提出され(最短で2020年初)、法律が成立し(最短で2020年の春?)、その後に施行される(おそらく数年は間が空く)としたらまだずいぶん先の話でしょう。

 

「私も来年からiDeCoに入れる」と思うのは気が早いので、じっくり待っていただければと思います。

「老後に2,000万円」対策としては期待。だが限度額引き上げも必要か

さて、この件、個人のマネープランにとってはどう影響するでしょうか。

 

企業型DCの加入者であってもiDeCoに加入できるということは、「会社の退職金制度以外の積立枠」を手にするということです。

 

「老後に2000万円」問題の本質は「退職金にプラスアルファ分を貯めておかないと老後は大変だよ」というメッセージですが、企業型DCの加入者は、マッチング拠出制度がない限り、確定拠出年金の枠内に、自分のお金を入金することができませんでした。

 

規制緩和が実現すれば、現役世代は誰でもiDeCoに追加入金できることになります。これにより国民の老後資産形成は一層はかどることになるでしょう。

 

心配なのは、企業型DCとの限度額管理が残ることですが、ここはもう一段階の限度額引き上げが実現すれば、ずいぶんすっきりすると思います。「米国並み」とは言いませんが、年間100万円程度の枠組みがあって、企業型と個人型を共有するのなら、限度額の心配はほとんど皆無になるでしょう。

 

今回の報道、まだまだ解決しなければならないことが多いので、実現までの困難は未知数ですが、いい方向の改正に結びつけてほしいと思います。

 

 

山崎 俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー

 

※本記事は、2019年8月22日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

 

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