近年、富裕層を中心に、子どもを幼少のうちに海外留学させたり、国内のインターナショナルスクールに通わせたりと、国際感覚を身に着けるための教育がひとつのトレンドになっている。本連載では、グローバルマーケットの第一線で活躍し、現在は留学サポート事業などを手がける株式会社ランプライターコンサルティングで代表取締役社長を務める篠原竜一氏が、グローバル人材を目指す富裕層の教育事情について、実体験も交えながら解説する。今回は、富裕層の間で人気が高いアメリカのボーディングスクールの教育について紹介する。

ボーディングスクールへの進学は、保護者もひと苦労

アメリカのボーディングスクールはどんなところだろう? その受験プロセスはどういうものだろう? という疑問を持つ保護者は多いでしょう。

 

我が家の場合、西町インターナショナルスクールは9年生(日本の中学3年生)までの学校なので、卒業後は日本にあるインターナショナルスクールに進学するか、アメリカのボーディングスクールに進学するか、どちらかだと思っていました。ある日長男が「僕、アメリカのボーディングスクールに行きたい」と自分から言ってきました。これが筆者のアメリカのボーディングスクールとの出合いでした。

 

そこからがとても大変でした。ボーディングスクールの合否は、学校の成績、SSATという共通テスト、TOEFL、学校の先生に書いてもらう推薦状、生徒本人が書くエッセイ、保護者が書くエッセイ、そして生徒の面接、保護者の面接を行い、総合的に判断されます。

 

我が家はニューヨークに住んでいたこともあり、アメリカのボーディングスクールに進学するのであれば、東海岸のニューイングランド、と地域は簡単に決まりました。しかし、そこから先を絞り込むのが大変でした。当然ですが、ホームページを見る限り、どの学校も素敵です。全米には300校ものボーディングスクールがあります。

 

まずは「見に行くか」ということになり、ニューハンプシャー、マサチューセッツ、コネチカット、ニューヨーク州のボーディングスクールを2週間かけて訪問しました。当時はまだ今ほどネット社会ではなかったので、子供が自分で学校に電話をし、学校案内と面接の予約を取りました。

 

どの学校も在校生による学校案内(30分)、アドミッションオフィサーと子供の面接(30分)、そして保護者の面接(30分)という内容でした。

 

最悪だったのは、超名門校での面談です。部屋に入るや否や面接官が「Any questions?」とたずねてきたので、簡単に子供のことを話すと、「君の子供が優秀なのはわかった。アプリケーションを見るのを楽しみにしている。プロセスなどで質問は?」と続けました。

 

面接官に特に失礼なことを言われたわけではありません。それでも筆者は、「日本から何時間かけてここまで来たと思っているのだ。何でそんなに偉そうなのだ、何様のつもりだ」と勝手に思い込んでしまいました。こんな人の気持ちを理解できないアドミッションオフィサーが面接をするような学校に自分の子供を預ける訳にはいかない、と決めて10分で部屋を出ました。さすがに子供も慌てていましたが、「帰るぞ。こんな学校受ける必要はない」と言ったら、長男も意外に素直に「うん。帰ろう」と返してきました。

 

おそらく親子共に同じような印象だったのかもしれません。本当にがっかりしました。他の人にとって最高の学校が、ボーディングスクールランキング上位の憧れの学校が、自分の子供にとって最高の学校とは限らないということを実感しました。誰にとっても良い学校などありません。ベストフィットな学校を見つけることが大切なのです。

 

当時何の知識もなかった筆者には、学校の雰囲気が好きか? どんな学生がいるのか? 面接官はどんな人か? こういう面接官のいる学校に自分の子供を預けたいか? としか考えることができなかったのも事実で、これはこれで大問題だったと今では思っています。とても皆さんにおすすめできる方法ではありません。もっと学校のリサーチをして、きちんと学校に関する質問をしていれば、面接の展開は違っていたと思います。親子共に対応できなかったので仕方ありませんが、とても残念な記憶です。

 

 2週間かけて長男と様々なボーディングスクールを巡った

2週間かけて長男と様々なボーディングスクールを巡った

長男はボーディングスクールに通い、大きく成長した

何はともあれ、実際に通うことになったマサチューセッツの西部にある学校は、まったく異なる印象でした。何といっても気に入ったのが授業のスケジュールです。80分授業で、半期ごとに3科目、1年間で計6科目。他の学校では1年かけて5科目勉強するというスケジュールがほとんどで、「1年間、5科目も集中して勉強できるか」不安でした。しかしこの学校なら1科目の宿題に1時間かかったとしても、3科目で1日3時間です。これなら集中でき、大学の授業の取り方にとても似ていて、素晴らしいスケジュールだと思いました。

 

また、学校に到着するなり、生徒も職員もみな笑顔で迎えてくれ、学校案内してくれた男子生徒は目をキラキラさせて話をしてくれたのです。親子共に思ったことは「この学校はすごく良い」

 

生徒数は600人程度と大きすぎず、小さすぎず。とてもリベラルで留学生も安心して学べる学校でした。入学した年の秋学期は勉強が相当大変そうでしたが、春学期からはアドミッションオフィスの仕事の手伝いで、学校案内を頼まれたことで自信をつけたようです。11、12年生では9年生の寮の寮長になるほど成長しました。

 

スポーツは日本の部活とは異なり、シーズンごとに異なるスポーツに取り組みます。長男は、クロスカントリー、バスケット、ラクロス、アルティメットを楽しんでいました。そして、何といってもこれから一生付き合う、たくさんの友人ができたのが何よりの財産だと思います。

 

ボーディングスクールはプレップスクールと呼ばれる大学準備のための進学校なので、カレッジカウンセラーがいて、大学受験の進路指導をしてくれます。各生徒に1人のカウンセラーがつきます。保護者もカレッジカウンセラーと面談する機会があり、その時にこんな話をしてくれました。

 

「この間寮で色々な話をしている時にお父さん、お母さんの話になった。彼は、『僕の両親はすごいんです。僕はこんな贅沢な教育を与えてもらっていることに感謝しています』と言っていた。そこで『そうか。君も将来子供ができたら、ボーディングスクールに通わせるか?』と質問すると、『自分にはこんな贅沢を子供にさせられるか自信はない』と答えていたよ」

 

面談の最後にカレッジカウンセラーは、「自分の両親のことを、自分の将来のことを、こんな風に素直に話せる生徒は多くはない。彼は素敵な青年に成長した。きっと彼は何としてでも自分の子供をボーディングスクールで勉強させてあげようとがんばると思う」と言ってくれました。

 

寮で生徒とこんな素敵な会話をしてくれるカレッジカウンセラーがいます。素晴らしい環境だと思いませんか?

 

筆者は1人でも多くの日本の子供たちがアメリカのボーディングスクールに進学することで、その将来の進路のみならず、人生の選択肢をどんどん広げてほしいと思っています。

 

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