中国新金利制度に利下げ効果の期待

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

中国の貸出金利のメカニズムでは、市場実勢を反映しない貸出レートとなる点が指摘されていました。中国人民銀行が導入し新たな最優遇貸出金利(LPR)により、貸出レートが低下する可能性も考えられます。ただし、本当に貸出レートが低下するかについては未知数の部分も多く、当面は事態を見守る姿勢が必要と思われます。

中国金利システム見直し:銀行貸し出しレートの低下を目論む

中国人民銀行(中央銀行)は17日、銀行貸し出しを巡る新たなレファレンスレートの公表を始めると発表しました。人民銀は新たな最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)を毎月20日に発表し、市中銀行にはLPRを「中心に」参照し、企業と家計への新規融資の金利を設定するよう義務付けますが、既存融資金利は当面変更の必要はないとしています。

 

なお、人民銀が8月20日に公表した新たなLPRは1年レートが4.25%に設定されました。1年物の貸出基準金利(現在4.35%)や従来のLPR(4.31%)より小幅ながら低い水準としました(図表1参照)。

 

 

四半期、期間:2015年4-6月期~2019年4-6月期 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の平均銀行貸出レートと主な金利の関係 四半期、期間:2015年4-6月期~2019年4-6月期
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:最優遇貸出、基準金利、MLF、貸出レート

中国の貸出金利のメカニズムでは、市場実勢を反映しない貸出レートとなる点が指摘されていました。人民銀が導入し新たな最優遇貸出金利(LPR)により、貸出レートが低下する可能性も考えられます。ただし、本当に貸出レートが低下するかについては未知数の部分も多く、当面は事態を見守る姿勢が必要と思われます。

 

 

まず、中国の貸出金利の従来の問題点を振り返ります。一番の問題は形式化です。本来、LPRは、整備が進みつつある市場実勢を反映すべきですが、実際には当局が発表する基準金利とほぼ同じ値となる事態が16年から続いています(図表1参照)。LPRは大手銀行10行の報告で決定していますが、現状は貸出基準金利をにらみ、形式的に同一水準を報告しているためです。

 

新たなLPRの算出ではレートを申告する銀行を18行に増やすと共に、従来の日々の申告から、毎月20日の月1回としています。重要なのはLPRを申告する参照金利として、人民銀が資金を融通する中期貸出ファシリティ(MLF)を参考にすることです。1年のMLFは3.3%と市場実勢に近くなっています。今後の銀行貸し出しレートは、MLFをベースとした新たなLPRを基準に個別の貸出案件に応じて貸出レートを策定する流れが想定されます。

 

従来の問題点を別の角度から振り返ります。中国では米中貿易戦争が懸念された頃から、預金準備率の引き下げにより金融緩和が行われています。ただ、銀行の平均貸出レートと比較すると、貸出レートを引き下げる効果が十分とは言い切れない面が見られます(図表2参照)。貸出レートが決定される貸出市場と、資本市場のレートに隔たりがあることは問題として指摘されていました。

 

日次、期間:2017年6月30日~2019年8月16日、貸出レートは四半期 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国預金準備率と平均銀行貸出レートの推移 日次、期間:2017年6月30日~2019年8月16日、貸出レートは四半期
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

今回の新たなLPR導入は金利の市場化という点で期待したいところですが、注意したい点もあります。例えば、新たなLPRが今後徐々に低下して、MLFに近づくのかという点です。次に、平均貸出レートが本当に低下するかも気がかりです。平均貸出レートは従来のLPRに上乗せ金利で形成されています。銀行が貸出水準を維持するため上乗せ金利を拡大させ、平均貸出レートは結局下がらないことも懸念されます。

 

新たなLPRが機能すれば実質的な利下げとなるだけに期待をしつつも、今後の動向に注意も必要とみています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国新金利制度に利下げ効果の期待』を参照)。

 

(2019年8月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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