予想株価収益率は12倍台へ
2006年以降の平均値と同水準
■8月に入りアジア株式市場は下落基調となりました。米中貿易摩擦の再燃が背景です。また、米国は中国を為替操作国に25年ぶりに認定するなど、為替政策の面からも懸念が強まりました。8月14日には米国で10年国債利回りと2年国債利回りが一時約12年ぶりに逆転するなど景気後退懸念が強まっています。米中を中心に世界経済の先行き不透明感が、アジアの株式市場にもマイナスの影響を与えています。アジア株価指数の12カ月先予想株価収益率は8月15日現在で12.3倍と、2006年以降の平均である12.3倍と同水準となりました(アジア株価指数はMSCI AC アジア〈除く日本〉)。
金融、素材が相対的に調整幅拡大
一般消費財は下げ止まり感
■アジア株式市場をセクター別に見ると、7月以降、「情報技術」の上昇が目立っていました。アジアの半導体の売り上げが大底を形成するとの期待があることが背景ですが、8月は「金融」や「素材」が相対的に調整幅を拡大する中、市場全体が下振れました。ただ、これまで下落基調を強めていた小売りや自動車などが含まれる「一般消費財」が一旦下げ止まり感を示していることは明るい兆しと言えます。
半導体サイクルの底入れに期待
■アジア株式市場はけん引役である「情報技術」の業績と株価、半導体の売り上げが注目されます。アジアの半導体売り上げは、2018年8月をピークに低下しましたが、19年5月に歯止めがかかり、6月も若干ですが増加しました。ただ、米中貿易摩擦の先行きは一段と不透明さを増しているうえ、日本が韓国向け特定品目の輸出手続きを厳格化したことによる韓国の半導体生産への影響も懸念されます。半導体を巡る環境は必ずしも楽観できるものではありませんが、アジアの半導体売り上げのモメンタム(勢い)を見ると、底打ちした可能性が示唆されています。今後、半導体サイクル底入れの確からしさが増せば、アジアの株式市場にプラスに作用すると期待されます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『半導体サイクルの底入れを探る展開』を参照)。
(2019年8月20日)
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