バイオ医薬品関連企業の株価動向
7月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
米上院金融委員が「薬剤費抑制のための処方薬薬価引き下げ法案」を可決したことから、バイオ医薬品株式は下落しました。同法案には、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)加入者の自己負担の軽減策や高額の医薬品を処方する医師への払戻金(リベート)制度の見直し、インフレ率に連動させた薬価の上限設定等が含まれます。今後、審議を重ねた後、9月には下院で採決される公算が大きいと考えます。製薬会社に甚大な影響が及ぶとは思われませんが、結果を巡る不確実性を嫌気し、投資を控える投資家も散見されます。
株価が上昇した銘柄としては、モルフォシス(ドイツ)、ガラパゴス(ベルギー)、ニューロクライン・バイオサイエンシズ(米国)、マイラン(米国)などが挙げられます。モルフォシスは、複数の末期がん治療薬候補が極めて良好な治験結果を示したことや、承認申請に向けた準備に進展が見られたことが注目されました。ガラパゴスは、同社に有利な条件でギリアド・サイエンシズ(米国)との研究開発提携契約を締結し、潤沢な研究資金を確保したことが好感されました。
株価が下落した銘柄としては、イルミナ(米国)、エアリー・ファーマシューティカルズ(米国)などが挙げられます。イルミナは決算速報の内容が投資家の期待に届かなったことが嫌気され、株価は大幅下落となりました。エアリー・ファーマシューティカルズは、期待されていた緑内障治療薬の売上が苦戦したことが影響しました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
現在、医薬品に関連する医療費の議論で重要な転換が起こっています。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。
これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。株式市場の先行きには不透明感がありますが、そのような間でも、長期志向で、市場の非効率性に注目するアクティブ運用者にとっては、数多くの投資機会が存在するものと考えます。
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バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました(図表5参照)。
バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています(図表6参照)。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります(図表7参照)。
バリュエーション
2011年以降、バイオ医薬品関連企業の株価が大きく上昇したことから、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)は高い水準にありましたが、足元では株価の調整を受け低下しています(図表8参照)。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
記載のデータは、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年7月のバイオ医薬品市場』を参照)。
(2019年8月19日)
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