景気後退への懸念から、投資家心理が冷え込み、世界中の市場で変動が高まっています。株式市場は急落し、国債市場では利回りが急低下(価格は上昇)しています。もっとも景気後退懸念が何を指しているのかについて、ばらつきも見られますが、現在はプラス成長を確保している米国経済にも影響が及ぶことが懸念されます。
ドイツ4-6月期GDP:輸出不振などを受けたマイナス成長率で、景気後退懸念高まる
ドイツ連邦統計局が2019年8月14日に発表した4-6月期のGDP(国内総生産)速報値は、前期比マイナス0.1%と市場予想(マイナス0.1%)に一致しました(図表1参照)。前期はプラス0.4%でした。
同日、中国国家統計局が発表した7月の工業生産、小売売上高、1-7月の都市部固定資産投資はいずれも市場予想を下回りました。米中間の貿易摩擦激化に伴う輸出環境の悪化が、中国並びに外需依存が高いドイツなどの景気に深刻な影響を与えていることが示唆されています。
どこに注目すべきか:ドイツマイナス成長、逆イールド、景気後退
景気後退への懸念から、投資家心理が冷え込み、世界中の市場で変動が高まっています。株式市場は急落し、国債市場では利回りが急低下(価格は上昇)しています。もっとも景気後退懸念が何を指しているのかについて、ばらつきも見られますが、現在はプラス成長を確保している米国経済にも影響が及ぶことが懸念されます。
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急激に景気後退懸念が高まった背景を整理します。
欧州ではドイツの4-6月期の成長率が前期比でマイナスとなりました。11月中旬公表予定の7-9月期成長率が仮にマイナスであれば、形式的には景気後退となるだけに、今後の動きが気になります。もっとも、12年期末から13年期初に見られた2四半期マイナス成長がドイツで今回も起こるのか、市場も判断をしかねている様子です。
将来の景気後退の予見性があると考えられているイールドカーブの長短逆転(長期金利が短期金利の利回りを下回る:逆イールド)に最も注目が集まっています。従来から、米国の金融政策と市場の認識ギャップを示唆する、米3ヵ月利回りと10年米国債利回りに逆イールドが見られました。これに加え、14日の市場ではより景気との関連が深いと見られる2年と10年国債利回りが逆イールドとなる局面があり、(米国)景気後退に対する懸念が急速に高まりました。限られたサンプル数ながら、逆イールド発生後1年半程度で景気後退となる傾向もあるだけに注視が必要です。もっとも、2年と30年は逆イールドでないなど、さらなる確認も必要です。
世界の経済サイクルを知る目安として定評がある、ドイツのIfo経済研究所集計の世界経済サイクルが12日に公表され、19年第3四半期に世界経済が景気後退局面に差し掛かっていることが示されました。世界中のエコノミストのサーベイ調査の結果であり、参照情報としての利用にとどめるべきと思われますが、現在の局面は、10~18年頃の経路と異なる軌跡で景気悪化が進行している点は気がかりです。
景気後退懸念が高まる中、政策対応の重要性が増していると見ています。ただ、事情は様々ながら、各国の対応が積極さに欠ける印象で、これがもっとも気になる点です。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『冷え込む投資家心理…急激に高まる「景気後退懸念」の背景』を参照)。
(2019年8月15日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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