訪日外国人の急増によって、インバウンド施策は盛り上がりを見せています。そこで本記事では、書籍『外国人リピーターを確実に増やす インバウンドコミュニケーション成功の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、日本の観光業の魅力を解説します。

リピーターの動きが地方経済を活性化させる

何度も日本を訪れる外国人たちは、日本を再び訪れた際にどのような行動をとるのでしょうか。外国人リピーターが望む「コト」は千差万別です。また、リピーターは同じ場所を訪れていたとしても、1度目と完全に同じ行動をとることはほとんどありません。リピーターの再訪行動には6つのパターンがあるということです。ここで紹介してみましょう。

 

①ファン型

旅行者がその旅行先に思い入れがあり、その地域に定期的に何度も訪れるタイプ。この場合、行動範囲や活動内容は毎回同じであることが多い。

 

②習慣型

思い入れはないが、利便性や経済性などにおいて強い訪問促進要因が存在し、習慣的に訪れるパターン。

 

③パズル完成型

前回できなかった活動をしたり、訪れられなかった場所を訪れるために再訪するパターン。ジグソーパズルのように、残りのピースを埋めるために再度訪問する。

 

④再チャレンジ型

前回の訪問で目的が達成されず、それによって生じた不満を解消するために再訪するパターン。

 

⑤変化型

再訪問において行動範囲や活動は同じだが、旅行条件が前回と変化するため、再訪行動が起こるパターン。

 

⑥行為リピート型

旅行先というより、その特定の活動を目的に、結果的に再度訪れるパターン。その特定の活動と地域の関連がなくなれば訪問は終了する。

(「第24回日本観光研究学会全国大会学術論文集」より)

 

ここで注目すべきは、①のファン型、③のパズル完成型、⑤の変化型です。その地域を気に入ってもらったり、「テーマに沿って回りたい」「回り残したところを訪れたい」「他のお店はどんな感じなのだろう」といった好奇心を喚起したりできれば、旅行者は何度もその場所を訪れます。

 

たとえば、戦国大名に興味を持ってくれれば、日本各所の大名ゆかりの地を訪れたいと思う旅行者が生まれるかもしれません。そうなれば、彼らの行動パターンは、ひとつの店、ひとつの場所にはとどまりません。電車やバスなどを乗り継ぎ、長期滞在をしながら、だんだん広がっていくはずです。

 

観光資源がひとつしかなければ、1度訪問すれば終わりです。しかし、観光資源は点在しています。それら点在する観光資源はたとえ一つひとつの点であっても、それらが集まっていけば「線」となり「面」となります。その「面」を外国人旅行者に提供することができれば、彼らは十分にパズルのピースを埋めたいという欲求を抱くのです。

 

また、多くの団体ツアー客は、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪という、日本の代表的なスポットを回る「ゴールデンルート」というプランを回ります。しかし、リピーターや個人旅行者は、このルートを回らずに行きたいところに行きます。そんなリピーターが増えれば、彼らの経済活動はこれまでとは比べものにならないほど活発になり、観光収入も劇的に増加していくはずです。

 

[図表1]日本の代表的な観光スポットを周るゴールデンルート

観光資源が豊富な日本…アピールしない手はない

個人旅行者が満足できるような体験・サービスを提供し、個人旅行者をリピーターにすること。それが、これからのインバウンド市場において重要なことです。それでは、日本が打ち出すべき「コト」とは何でしょうか。

 

それは「自然」「文化」「気候」「食事」の4つの条件です。日本には、実はこの4つがバランスよくしかも豊富に揃っています。たとえば、日本の豊かな自然は貴重な観光資源といえます。特に、雪は意外なほど価値が高いものです。

 

アジアには、バリ、セブ、モルディブなどのビーチリゾートはたくさんあります。ところが、雪やスキーを楽しめる場所は意外と少ないもの。南国の気候しか知らないアジアからの旅行者にとって、雪が降り、積もっている風景を見るだけで、非日常的な体験が楽しめるわけです。

 

治安や衛生面で安全な点も、日本の大きな魅力です。日本人はあまり意識しませんが、犯罪率が低く、レストランやホテルが清潔であることは、外国人旅行者にとってかなりのメリットです。また、電車などの公共交通機関は他国とは比べものにならないほど定刻通りに運行しています。これも、旅行者にとっては魅力的でしょう。

 

もちろん、古い寺院や城郭などの歴史的建造物は旅行者に喜ばれる定番スポットです。しかし、実は日本人にとっては観光スポットでない場所が外国人の人気を博すケースがあります。たとえば、ロボットによるショーが繰り広げられる新宿のロボットレストランや京都の剣舞シアターなどは有名です。

 

そのほかにも、日暮里にある国産プリント生地の販売店はミャンマー人が民族衣装をつくる生地を購入するために集まります。また、佐賀はタイの人気ドラマのロケ地ということで、タイ人に人気があります。

 

また、海外で人気になっているマンガ・アニメ作品に登場した場所を「聖地巡礼」する外国人ファンは決して珍しくありません。食事に関しても、外国人に喜ばれるのは寿司や高級和食だけではありません。観光庁の訪日外国人消費動向調査(平成27年)によると、多くの台湾や中国の人々は、満足した食事としてラーメンを挙げています。

 

私たちが「ラーメンの本場」だと思っている台湾人や中国人旅行者にラーメンの人気が高いというのは意外です。そのほかにも小麦粉料理というジャンルがランクインしており、お好み焼きやもんじゃ焼き、たこ焼きなどの日本特有の食べ物の人気も高いということがわかります。

 

出所:訪日外国人旅行者消費動向調査
[図表2]最も満足した飲食 出所:訪日外国人旅行者消費動向調査

 

このように観光資源としての日本は、私たち日本人が考えるよりも海外に高く評価されています。先述した調査によると、訪日外国人旅行者のうち47.8%が日本への旅行に対して「大変満足」、44.8%が「満足」と答えています。そして、57.9%の人は「必ず再訪日したい」、35.4%が「再訪日したい」と考えています。9割以上の人は訪日旅行に満足し、再び日本を訪れたいと考えているのです。

 

私たちが観光資源だと意識していない場所や体験が、外国人にとって魅力あるものという場合は多々あります。今後はモノの代わりに、埋もれている観光資源(=コト)を売り出すべきなのです。外国人にとって魅力的なコトを掘り起こし、外国人に向けて発信すれば、今後も多くの外国人旅行者を呼び寄せ、インバウンド市場を伸ばしていくことができるのです。

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    加藤 啓介

    幻冬舎メディアコンサルティング

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