前回は、任意売却物件の適正な売却価格の算出法について説明しました。今回は、任意売却物件の転売タイミングを見極めるポイントについて見ていきます。

できれば賃借人が入っている状態のときに売却する

前回に引き続き、任意売却物件で成功するための出口戦略について見ていきます。

 

【失敗しない売却術2―売却時のベストタイミングとは?】
売却のタイミングについては、どう考えればいいのでしょうか。不動産投資の最終局面ともいえるのが売却で、そのタイミングを誤ってしまうと、これまでの努力が水の泡になってしまいます。

 

売却のタイミングについては、税制面や減価償却のタイミングなどを見計らうことが重要ですが、それら以外の部分でもチェックしておく必要があります。たとえば、入居者が現在いるのか、いないのか、銀行がきちんとローンを貸してくれる物件になっているかどうか、といった部分をチェックしておく必要があります。その上で売却のタイミングとしてベストに近い状態なのかどうかを見極める必要があります。

 

そして、投資用不動産にとっては、売却時に賃借人が入居しているのか、といったことも重要な要素になります。いわゆる「オーナーチェンジ物件」と呼ばれるものですが、賃借人がいるままで売却すると、購入者は所有権が移転した段階から、月々の賃貸料が入ってくるので「売却しやすい」物件と見られるのです。したがって、できれば賃借人が入っている状態の時に売却するのがベストなタイミングといえるかもしれません。

空室状態のままでも高く売れるケースとは・・・

リフォームを行って賃借人を入れる前に売却してしまう方法と、リフォーム後に賃借人を入れてから売却する方法があります。個人投資家はリフォームしたばかりの家を少しでも高く売ったほうが得するだろうと考えがちです。

 

しかし実際には、ある程度利回りの高い状態で賃借人が入ってくれるのであれば、いったん賃借人を入れて何年間か賃貸料=インカムゲインを獲得して、その後でオーナーチェンジ物件として転売しても、さほど売却によって獲得できる金額に差はありません。むしろインカムゲインをある程度獲得した後のほうがいい場合もある、と思ったほうがいいかもしれません。

 

ちなみに、賃借人を募集するときには単一の不動産屋さんに任せるスタイルの「専任仲介」ではなく、近隣の賃貸仲介業者にできるだけ多く声をかけて募集してもらう「一般仲介」のスタイルのほうがスムーズにいく可能性が高いと言えます。よってできるだけ多くの不動産会社に探してもらったほうがいいわけです。

 

一方、物件のタイプによっては空室状態のままのほうが高く売れるケースがあります。ファミリータイプのマンション、あるいは一戸建ての場合は、中古住宅の「実需」があるために、空室で室内がリフォームされていたほうが、高く売却できると考えていいでしょう。投資用不動産ではなく、一般の中古住宅の需要にこたえる売却方法です。

 

特に、任売物件の場合、退去後の室内が荒れているケースが多いと指摘しましたが、賃借人が退去した後のリフォームは必要不可欠かもしれませんから、逆に売却のチャンスともいえます。むろん、リフォームにはコストと時間がかかりますから、それなりの準備をあらかじめしておく必要があります。リフォームの程度をどのぐらいにするかについては、考え方のわかれる部分ですが、台所や風呂場といった水回りはコストがかさみます。

 

次回も、任意売却物件で成功するための出口戦略について見ていきます。

本連載は、2014年10月10日刊行の書籍『任意売却物件ではじめるローリスク不動産投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

任意売却物件ではじめる ローリスク不動産投資

任意売却物件ではじめる ローリスク不動産投資

安田 裕次

幻冬舎メディアコンサルティング

サラリーマンが副収入を得る方法として注目を集める不動産投資。しかし不動産は決して安いわけではありません。 初期費用がかかるほどリスクは高くなるため、不動産投資の基本はできるだけ安価で条件の良い物件を探し出すこと…

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