高成長を遂げているアジア新興国への投資に特化した、先駆的な運用管理会社「アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッド」。同社においてCEO兼ファンドマネージャーを務めるトーマス・ハガー氏へのインタビュー。第4回目のテーマは「今後の注目国とフロンティア市場投資のポイント」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)の幾田朋彦氏である。

成長の鍵を握る「教育水準」の状況は?

幾田 教育レベルが高いかどうかも、フロンティア市場の成長の鍵となってくるかと思います。他の国の教育水準についても、お話しいただけますか。

 

トーマス フロンティア市場の中では、モンゴルの教育水準が高いです。ベトナムとラオスも、比較的良い水準です。カンボジアとミャンマーは、まだまだ教育システムに問題があります。授業料をきちんと払っているのに、教室に入るのに教師にお金を払わなくてはいけないなど、汚職もみられます。

 

 

パキスタンの教育システムは比較的整っていますが、女性に対する差別が根強く女性の教育水準が低いのが問題となっています。スリランカの教育水準は比較的高く、特に会計学に秀でており、質の高い会計士をアジアに送り出しています。このように、教育の水準やシステムは各国様々です。

アジア各国の「海の入り口」となり得るスリランカ

幾田 フロンティア市場の国々にはまだ馴染みがなく、どのお話も非常に深いです。他にもいくつか国を例にあげてお話しいただけますか?

 

トーマス では、まずミャンマーについてお話します。私は、投資対象としてミャンマーに興味を持っていますが、まだ今後の展開を注視していく必要があります。投資するにもまだ環境が整っておらず、昨年12月にやっと株式市場が誕生したばかりです。まだ株式は上場しておらず、今年の第2四半期から後半にかけて、6銘柄程度上場するのではとみています。ただし、海外の投資家が株式を売買できるかどうかはまだわかりません。

 

ミャンマーに投資するには、シンガポール株式市場に上場しているミャンマー企業か、主にミャンマーでビジネス展開している外国企業に投資することが考えられます。もしくは、ミャンマーに投資するプライベートエクイティファンドがロンドン株式市場に上場しているので、そのファンドへ投資することもできます。

 

もう一カ国お話しするとすれば、スリランカです。スリランカはインフラ設備が整っており、セメント産業など建設関連企業が非常に魅力的な投資対象であると考えています。さらに、スリランカは非常に美しい国で、ホテルなど観光関連の成長も期待できます。

 

また、中東・インドと他のアジア諸国との間に位置している上、非常に深い海に囲まれています。海底が深いため大きな貨物船向けの港も建設でき、こうした地理上の利点から、アジア各国の海の入り口となっています。今後、さらに流通関連産業が成長すると期待しています。

「長期」を見据えた投資を行うことが最も大切

幾田 フロンティア市場の国々について、非常に興味深いお話をありがとうございました。最後に、エマージング市場も含め、フロンティア市場への投資について、アドバイスをいただけますか?

 

トーマス エマージング市場、特にフロンティア市場は、非常にボラティリティが高い市場です。ですから、長期を見据えた投資が大切です。ボラティリティの高い市場では、短期においては大きな損失を生むこともあるでしょう。短期のアップダウンに左右されず、長期に渡って各国の成長から享受できるリターンをとらえるべきです。

 

もうひとつ、重要な点は、良い運用会社、良いファンドを選ぶということです。エマージング市場ならびにフロンティア市場では、インデックス(パッシブ)運用が、アクティブ運用に劣る傾向がみられます。

 

例えば、ニューヨーク株式市場に上場するベトナム株のETFの昨年のリターンは-15%で、その前年のパフォーマンスも思わしくありませんでした。中国株も同じです。H株のETFに投資しても、国営企業やインフラおよびコモディティ関連の企業に多く投資することとなり、石油価格下落の影響を受けパフォーマンスは良くありませんでした。

 

 

一方、ITやヘルスケアといったセクターに投資をしていれば、それなりのリターンが得られたはずです。

 

「トレンドに飛びつくな」というのが、私からのアドバイスです。これらの市場では、次の瞬間どちらに市場が動くのか予想しがたいものです。長期を見据えた投資を行うのが最も重要です。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッドおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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