高成長を遂げているアジア新興国への投資に特化した、先駆的な運用管理会社「アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッド」。同社においてCEO兼ファンドマネージャーを務めるトーマス・ハガー氏に、投資対象としてのアジア・フロンティア市場の魅力と、今後のマーケット展望などを伺った。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)の幾田朋彦氏である。

「フロンティア市場」とはそもそも何か?

幾田 フロンティア市場は、日本の投資家にとってまだ馴染みがない市場ですが、エマージング市場とどう違うのでしょうか? フロンティア市場の位置づけについて教えていただけますか?

 

トーマス 3つのポイントが挙げられます。まず最初に、MSCIやS&Pといった株式指数にフロンティア市場として組み入れられているかどうかです。次に、海外投資家にどれだけ市場が開放されているかという点です。フロンティア市場の多くは海外投資家に対して、株式投資や現地通貨の売買に制限を設けています。最後に、保管銀行やブローカーが機能し、海外投資家でも円滑に投資が行えるように整備されているかどうかです。

 

 

フロンティア市場は、まだ成長過程にあり、流動性も低く、海外投資家を受け入れるインフラが整っていない市場です。40年前のタイやマレーシア、20年前の中国に投資することをイメージしてみてください。市場が成熟するまで今後様々な段階を経る必要があり、その間に成長企業への投資を通じて収益期待がもてます。エマージング市場と比較して、さらに早く大きな成長が期待できるでしょう。

株価収益率はエマージング市場と比べても割安

幾田 御社は、アジアのフロンティア市場に特化されていますが、アフリカや南米のフロンティア市場との違いは何ですか?

 

トーマス 私達は、アジアのフロンティア市場が非常に魅力的な市場だと考えています。現在、世界でフロンティア市場に投資している運用会社は40余りありますが、アジアに特化しているのは私達だけです。

 

アジアの魅力のひとつは、巨大な人口です。パキスタンは1.8億人、バングラデシュは1.6億人、ベトナムは9000万人の人口を抱えています。新たにファンドの投資対象としているイランの人口も8000万人です。さらに、今後5年から10年の人口増加率は、アフリカや南米を上回るとされています。

 

もうひとつ注目すべきは、アジアのフロンティア市場の国々は、中国とインドという2つの大国の間に位置し、両国から様々な恩恵を得られるという点です。アフリカにおいても、ナイジェリアと南アフリカが成長のドライバーとなりえますが、中国とインドには明らかにおよびません。

 

幾田 そうですね。中国とインドが与える経済効果は、大きな魅力ですね。しかも、中国とインドの市場は、必ずしも同じ動きをしていないですね。例えば、原油価格が下落する中、中国の成長減速が進む一方で、インドでは原油安で生産コストが低下し収益向上が見込まれる産業もあったりと、両国の経済効果はうまく分散されているように見えます。

 

今年は、両国の市場の動きも激しい年になりそうですが、隣接するアジアのフロンティア市場への影響はどうなのでしょうか? エマージング市場を上回るパフォーマンスが期待できるでしょうか?

 

トーマス 私達は、長期を見据えた投資をしています。ですから、今年のパフォーマンスについて、コメントするのは難しいです。短い期間においては、フロンティア市場のパフォーマンスは思わしくないかもしれません。流動性の低い市場ですし、短期間のボラティリティは高くなる傾向があります。

 

 

しかしながら、3年から10年といった長期で見ると、フロンティア市場への投資は他市場を上回る成果が得られると思います。株価のバリュエーションも非常に魅力的です。株価収益率をみると、イランが5倍、パキスタンは8倍、ベトナムは11倍、バングラデシュは15倍と、インドネシアやフィリピンといったアジアのエマージング市場より、かなり割安です。

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッドおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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