高成長を遂げているアジア新興国への投資に特化した、先駆的な運用管理会社「アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッド」。同社においてCEO兼ファンドマネージャーを務めるトーマス・ハガー氏へのインタビュー。第4回目のテーマは「投資対象としてのイラク、イラン」。聞き手は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)の幾田朋彦氏である。
原油価格の下落などに苦しむイラクだが・・・
幾田 イラクに投資するなんて非常に珍しいですね。イラクへの投資を始めた背景と、イラクの市場や投資環境についてお話しいただけますか?
トーマス イラクに投資することを考え始めたのは、アジアフロンティアファンドを設定した2012年の3月に遡ります。ちょうどその頃、以前働いていたレパート・キャピタルがカンボジアで主催する会議に出席しました。
会議の出席者のなかに、その当時から非常にアジアのフロンティア市場に精通している投資家がいて、これからイラクへの投資を検討すべきだと話していたんです。アジアフロンティアファンドを設定し、ちょうど投資対象国を増やしたいと考えていたので、これを機にイラクへの投資を検討するようになりました。同時に、非常に有能なイラク人のファンド・マネージャーにロンドンで出会いました。彼を我が社に迎え、イラクへの投資を始めました。
イラクはイスラム国の攻撃によって、非常に困難な状況にあります。さらに、原油価格の下落が、原油に頼るイラクの経済に大きな打撃を与えています。世帯収入の60%は石油関連の収益から得られていると言われるほど、石油産業に依存していますので、その影響は計り知れません。
また、昨年の財政赤字はGDPの15%と予想されていましたが、実際は5%でした。イスラム国の攻撃により破壊されたインフラ設備を再建する必要があるにもかかわらず、インフラへの公共投資を大幅に削減したのが原因です。
産業を発展させる基盤が整っているイラン
幾田 イランについてもお話しいただけますか?
トーマス イランも約8千万人を超える人口をかかえ、教育水準も比較的高いです。イランとイラクの大きな違いは、イスラム国の攻撃を受けたイラクと違って、イランにはインフラ設備があるという点です。ですから、石油、自動車、セメントといった産業を発展させる基盤があります。そして、中国をはじめとする近隣諸国に輸出することで、生産を拡大することも期待できます。
イランには2つの株式市場があり、300以上の企業が上場しています。株式市場も整備されており、割安株も多く見られます。株価収益率の平均は5倍程度で、株の配当金は総じて高い傾向にあり、多くの株式の配当利回りは10%を超えています。
アジア・フロンティア・キャピタル・リミテッド
CEO兼ファンドマネージャー
公開・非公開株式のポートフォリオ・マネージャーとして、プライベートバンク業界にて27年の経験を有し、1993年よりアジアおよびアフリカのフロンティア市場に投資。 現職に就任前は、レパード・キャピタルのマネージング・パートナー、CFOならびにCOOとして従事。また、香港のLGTバンクでは、マネージング・ディレクター、ポートフォリオ運用部門長。チューリッヒと香港のジュリアス・ベア銀行でも、運用部のシニア・マネージャーとして勤務。 バングラディッシュでは、最大手の証券会社のひとつの創設者であり株主でもある。 ファイナンシャル・インベストメント・アナリスト(CFIA)、インベストメント・アドバイザー(スイス)、ヨーロピアン・フェデレーション・オブ・ファイナンシャル・アナリスト協会(EFFAS)のファイナンシャル・アナリスト。
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連載「アジア・フロンティア市場」に特化した投資運用会社のCEO兼ファンドマネージャーに聞く
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス)
ダイレクター
2006年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券(入社当時は三菱UFJ証券)にてリテール営業、株式、仕組債、商品戦略等の幅広い業務に従事。2011年から2012年にはニューヨークのモルガン・スタンレー・ウェルスマネジメント(当時はモルガン・スタンレー・スミス・バーニー)でマネージド・アカウントをはじめとする米国の富裕層ビジネスの現場で経験を積む。2014年、現職であるNippon Wealth Limitedの商品およびビジネスデベロップメントの責任者として就任。国際基督教大学卒。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/
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