ロシア中銀が利下げ継続を決定した主な理由であるインフレ率の低下傾向、景気回復の鈍さ、そして先進国、特に米国の利下げ期待は、他の新興国にも同様の影響を及ぼすと見られます。主な新興国の政策金利の水準を3ヵ月前と比較すると、政策金利を維持している主な国はメキシコ、ブラジル、ペルーなどで、他の多くの新興国は利下げを実施しています。
ロシア中銀:年内2度目の利下げ、政策金利を約1年ぶり低水準となる7.25%
ロシア中央銀行は2019年7月26日、市場予想通り、主要政策金利を7.50%から7.25%に引き下げることを決めました。実施は29日からとしています。今回のロシア中銀の利下げは19年6月に続き、今年2度目となります。
利下げの理由としてロシア中銀は、インフレ率が低下傾向であること、景気回復が鈍いことなどをあげています(図表1参照)。なお、今後の方針についてロシア中銀は声明で、次回以降の政策会合の1つで追加利下げを行い、20年上半期に中立的な金融政策へと移行する可能性があると述べています。
どこに注目すべきか:ロシア中銀、インフレ率、貿易戦争、利下げ
ロシア中銀が利下げ継続を決定した主な理由である、インフレ率の低下傾向、景気回復の鈍さ、そして先進国特に米国の利下げ期待(7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが見込まれている)は、他の新興国にも同様の影響を及ぼすと見られます。主な新興国の政策金利の水準を3ヵ月前と比較すると、政策金利を維持している主な国はメキシコ、ブラジル、ペルーなどで、他の多くの新興国は利下げを実施しています(図表2参照)。
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消費者物価指数(CPI)は足元、前年同月比で4.7%と低下傾向です。ロシア中銀は声明で今後の利下げを示唆しつつ、インフレ率は20年前半に、ロシア中銀のインフレ目標である4.0%に低下すると見込んでおり、利下げによるインフレ率の上昇に対する懸念は低いようです。
ロシア中銀が、恐らく、懸念するのはGDP(国内総生産)成長率で、1-3月期のGDP成長率は前年同期比0.5%と回復が鈍く、8月前半に公表予定の4-6月期GDPも1%以下の成長が市場予想となっています。軟調な設備投資や、貿易戦争の影響による外需の不振などが景気の下押し要因とロシア中銀は指摘しています。個人消費も力強さに欠ける動きが続いており、景気下支えが求められています。
ロシアだけでなく、インフレ懸念の後退などを背景に、主な新興国で政策金利の引き下げが見られます。高金利政策を続けていた南アフリカやインドネシアは7月に利下げに転じました。金利水準が低い韓国は7月に、チリも6月に利下げを実施しています。
メキシコや、ブラジルなど据え置きを続ける新興国もありますが、インフレ率が3%台にまで低下したブラジルは7月末(日本時間8月)利下げに転じると見込まれています。
メキシコはインフレ率がようやく4%前後と、インフレ目標の上限(3%±1%)にまで低下してきました。目先様子見を続けるも、年後半にインフレ率並びにペソの落ち着きが確認されれば、利下げに転ずると見ています。
米中貿易摩擦の影響が新興国の景気回復の下押し要因と懸念されるものの、利下げによる景気の下支えで相殺され、来年に4%台後半の成長が見込まれます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ロシア中銀に見る、新興国利下げ期待の理由』を参照)。
(2019年7月31日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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