安定供給のためには電気の流れを調整する必要がある
電気の流れを大まかに追えば、発電所、変電所、需要者、という順になります。それらの間は、高圧や低圧の配電線で縦横に結ばれています。配電線だけを見ていると、電気は縦横無尽にその中を駆け巡っているように思えてしまいますが、実際にはそんなことはありません。
本連載の第6回でも説明したように、電気は電圧の高い場所から低い場所に流れているのです。河川の流れに置き換えれば、発電所は山、変電所はダム、需要者は河川の流れからさらに枝分かれした水路の利用者とでも言えましょうか。太陽光発電システムで発電した電気を電力会社に買い取ってもらうということは、需要者が自らつくり出した水を河川の流れに逆行していったん川上に向かって流し、別の需要者に使ってもらうということです。そうした本来の流れに逆らう流れを、「逆潮流」と呼びます。
いまの時代、一つの系統の配電線には、再生可能エネルギーを活用した発電システムがほかにも接続済みかもしれません。発電所は電力会社のものとは限りませんから、電気の流れは複雑です。一方で、その配電線から多くの需要者が電気の供給を受けています。高圧から低圧に向かって電気が流れるという大原則の下、その配電線を利用するどの需要者も安定供給を受けられるように、電力会社は電圧を操作し電気の流れをコントロールする必要があるのです。
しかも、配電線につながる再生可能エネルギー活用の発電所は、太陽光や風力といったものを活用しているだけに、発電量が天候や時間帯などに左右され不安定です。ここではそれも織り込んで、安定供給に向けた平準化を考える必要があります。
電圧を引き上げて遠くに送るために必要な設備とは?
例えば、ある太陽光発電システムが、近くを走る低圧配電線に接続しようとしたときを考えてみましょう。この低圧配電線からの電気をだれが使用しているかを確認したところ、電気の需要量が現状以上に増える見込みがなかったとします。すると、発電しても電気は余ってしまいます。そこで、電圧を引き上げて遠くに送ろうとしますが、それには、太陽光発電システムで発電した電気をいったん昇圧したうえで、高圧配電線につながなければなりません。変電設備が必要になってくるのです。
再生可能エネルギーを活用した発電設備が増えていくと、変電設備を追加するなど電力系統に、何らかの手を加える必要が電力会社に生じる可能性が高まります。電力系統とは、発電所から需要者までに至る電力ネットワークのことを指します。そこに何らかの手を加える工事費を、その原因を生み出した発電設備の設置者に求めてくるのです。それが、ここでいう「連系費」(接続工事負担金)にあたります。
しかもこの費用は、最終的にいくらになるか、分かりにくい性質のものです。なぜなら、ある電力系統で必要になった変電設備の費用を、系統への接続を最初に申請してきた者にだけ求めるのは不公平なため、その設備の恩恵を、同じように受けるほかの系統接続申請者にも求めようとするからです。
系統接続の最初の申請者は、立て替え払いのように必要額をいったんすべて負担しますが、ほかにも申請者が続けば、最初の申請者が負担した過分な費用は戻ってきます。したがって、「連系費」として最終的にどの程度の費用を負担することになるのか、接続連系までに、どのくらいの期間を要するのかは、最初の段階では見通しがつかないのです。接続しようとする電力系統の状況によって異なるということは、ご理解ください。